女流棋士の”表情”が変わる瞬間。里見香奈 VS 室田伊緒 将棋イベント初心者が見た「将棋界のふしぎ」体験レポート(1/4 ページ)
将棋イベント「女流棋士の知と美」に行ってきました。
2018年7月9日、新宿の紀伊国屋ホールにて「ローソンプレゼンツ 将棋対局〜女流棋士の知と美〜」が開催されました。和装した女流棋士の対局やトークショー、サイン会に写真撮影会まである、てんこ盛りイベントです。
対局者は、女流屈指の実績を持ち東京のイベントに参加するのは珍しい里見香奈女流四冠と、それに引けを取らないファンの多さでメディア出演も多い室田伊緒女流二段。解説は藤井猛九段、聞き手が山口恵梨子女流二段と、将棋好きにはうれしい人気棋士が集まりました。
編集長「辰井さん(筆者)、将棋イベントに行きませんか?」
将棋大好きのねとらぼアンサー・杉本編集長がそう言ったのはイベントの1カ月ほど前。そんな筆者は「ちょっと将棋を知ってる」ぐらいのレベル。もともと将棋が好きだった時期はあったものの、ここ数年は離れており、最近のブームに乗っかってまた少し興味を持ち直した形です。
そんな、明らかな「ライト層」である筆者にとって、今回はじめて行く将棋イベントというのはなんだかハードルが高いもの。果たして何が待っているのか、期待7割、落ち着かないような気持ち3割で入場しました。
物販が独特のラインアップ
ロビーに入ってみると、入り口付近でまず目につくのが物販ブース。本日の出演者のサイン色紙、加藤一二三九段ら人気棋士のクリアファイル。同じく佐藤天彦名人らによる「サインをプリントした色紙風のハンドタオル」(はじめて見た)、3×4マスの盤で遊ぶミニ将棋「おでかけニャーしょうぎ」などが並んでいます。
素人的発見ポイント
「色紙風のタオル」が売っている
見ているだけで楽しいな、と思いながら歩いていると、いきなり驚かされる光景に出くわします。
今日の出演者が……もういた!?
なんとほんの数メートル先に、既に今日の出演者陣の姿が。棋士たちを見られるのはイベントが始まってからのステージ上だと思っていたので、やや面食らう筆者。以前から好きだった藤井猛九段やテレビで見た女流棋士たちが、すぐそこで色紙や扇子にサインをしながら、ファンたちとゆっくり会話してコミュニケーションを取っています。
AKB48などのアイドルの握手会では「10秒1000円」が相場です。サイン会だって、そう長く話せるわけではありません。しかしこのイベントでは、ファン1人あたり数分ほどの時間を取って、比較的長く話をしている光景が見られました。
素人的発見ポイント
いきなり棋士がいる
将棋棋士のサインは、スポーツ選手よりも価値がある?
将棋棋士のサインは色紙1枚で3000〜4000円。正直「ちょっと高いかな?」と思いました。ただ、将棋棋士の色紙には「揮毫」(きごう)と呼ばれる言葉の部分と、棋士本人の名前がそれぞれ入っており、筆を使ってじっくりと書かれるもの。
よくあるスポーツ選手やアイドルのように、マジックを使ってものの数秒で書き上げていくようなものとは違い、ゆっくりサインをする人だと2分かけて書くこともあるとか。その分、書いている間にファンと話ができるというわけです。
今回は、書いてもらいたい字を1人につき4種類の言葉から選べるようでした。「心眼(藤井九段)」や「大志(里見女流四冠)」などの二字熟語から、「一期一会(室田女流二段)」のような四字熟語、さらには「盤上に描く夢(山口女流二段)」なる言葉も。
素人的発見ポイント
サインの言葉はかっこいい&選べる
扇子に書くと価値が4倍になる?
さらに気になったのは、色紙に書いたサイン(揮毫)は3000〜4000円ですが、扇子に書いたサインは1万2000〜1万6000円と、価格が4倍も違うということ。
実は将棋界では、扇子にサインを筆で書いてもらうことは特別なことなのだそうです。扇子は対局のときにいつも傍らにあるもの。それに言葉を入れてもらうということは、野球少年で言うところの、グローブにサインを入れてもらったようなことだと言います。
開演! ただよう「式典」のような上品さ
ロビーでいろいろ見終わったら座席につき、いよいよ開演です。何かオープニング音楽のようなものがけたたましく鳴るわけではなく、意外なほどスッとはじまります。
司会は自らも将棋ファンの戸塚貴久子アナウンサーで、まずは総合プロデューサーの遠山雄亮六段、北尾まどか女流二段が登場し、趣旨説明を行います。
開会にあたって、主催者である紀伊國屋書店のえらい人(代表取締役会長兼社長の高井昌史さん)がごあいさつ。ここまで、イベントというよりは、「式典」のような雰囲気を感じます。
続いて今日の主役である棋士たちが登場。オマケに、ローソンとコラボしている漫画『3月のライオン』のキャラクター「王様ニャー」まで出てきました。彼のせいで、壇上へ一気にカオス感が漂います。
対局中以外は写真撮影ぜんぶOK!
その状態で「フォトセッション」の時間が開始。カメラやスマホを持ったファンたちが、とっておきの一枚を求めて前に出て、パシャパシャとシャッターを押します。そんな中、こういったイベントに慣れていないという里見さんの表情はまだちょっとかため。
席上対局中以外は写真撮影ぜんぶOK。最近はこういった大盤振る舞いのイベントが増えているそうで、SNSでの話題性を狙ってか、「『#知と美』を付けてください」というアナウンスもされていました。
素人的発見ポイント
写真は自由に撮りまくれる(イベントごとにルールあり)
トークショー開始。「一つもハズさない男・藤井九段」が躍動
続いてはいよいよトークショー開始。対局者の里見女流四冠と室田女流二段、解説・聞き手の藤井九段と山口女流二段が集まってトークを繰り広げました。
女流棋士のイベントなので、主役は彼女たち……のはずですが、とにかくキレキレだったのが藤井九段です。将棋マンガ「3月のライオン」とローソンのコラボキャンペーンで生まれた「川本家のミルクティー白玉寒天」を試食する際のこと。
戸塚アナ:まず、藤井先生から召し上がっていただこうと思って。
藤井九段:じゃあスイーツ王子(※)から。
※後から聞いたところ、繊細な食レポで知られる関西の糸谷哲郎八段のあだ名とのこと。
藤井九段:おいしいです。味にね、厚みがありますよ。切れない攻めって感じですね。
山口女流二段:攻め駒は何枚ぐらいなんですか?
藤井九段:飛車角金銀桂香くらい。
さらに今をときめく藤井聡太七段が棋士になりたてホヤホヤの時期に、初顔合わせを行ったときのこと。
藤井九段:僕は藤井っていう棋士が誕生したので、ちょっと悔しいなって気持ちがあったんで、会っても、無視してようと思った(会場爆笑)。ただね、会ったらかわいいから、こっちから握手しちゃって。
山口女流二段:どちらかというと、これ藤井聡太先生のほうが目、合わせてないですね(笑)。
藤井九段:そのとき僕ちょっとナマイキなこと言っちゃってね……「じゃあ、頑張れよ」とか言って(会場爆笑)。まさか、あんだけ勝つと思わないからね。「せいぜい頑張れよ」なんて言っちゃったんですよね。
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