「全方向警報灯」製造工場へ潜入! プラレールの踏切が「59年の歴史で初」の進化を遂げた理由(1/2 ページ)
見てきましたホンモノの「全方向踏切警報灯」。【写真65枚】
皆さん、「全方向踏切警報灯」をご存じでしょうか。「プラレール59年の歴史で初の進化を取り入れた」というプラレールの新商品が2018年8月2日に発売されました。
「トミカと遊ぼう!くるぞわたるぞ!カンカン踏切セット」(6980円、税別)は、プラレール用のレールと駅、ミニカー「トミカ」用の道路、そしてそれらが交差する「踏切」をセットにしたレイアウトパーツの新商品。車両通過時に遮断機が自動的に下りる仕掛けを中心に、踏切前のトミカや駅に停車するプラレールの発車を自由にコントロールできるメカを搭載しています。「間もなく電車が“6両編成”でまいります」「大きなレイアウトで遊んでいただき、誠にありがとうございます」といったように、つないだプラレールの編成数や走行時間を測定してアナウンスが変化する「かしこいアナウンス機能」も備えます。
これだけでも面白そうですね。しかしそれだけではありません。実はこの商品は、59年のプラレールの歴史で初めて「踏切警報灯」を進化させたのです。分かりますでしょうか、踏切の警報灯が最新式の「全方向警報灯」に変わりました。
全方向警報灯は、360度どの方向からでも警報灯の光を視認できる最新式の踏切警報灯。視認性が特に良いことからその安全性が評価され、2004年に実用化。以降かなりの早さで全国に広がっており、順次置き換えられているそうです。
プラレールは想像力を育み、「鉄道や社会そのもの」を学べる玩具。だから時代に合わせてICカード自動改札機やホームドアなども積極的に導入しています。当然「踏切警報灯」もリアルでなければなりません。このことからプラレールもついに「全方向型」の採用に踏み切ったのでした。
……でも全方向型だといわれても。「知らんかった」「そもそもホンモノはどんなんだっけ」「そういえば気にして見たことなかった」人は多いでしょう。ということで見てきました、ホンモノを。
ホンモノの「全方向警報灯」製造工場へ潜入
やってきました、神奈川県座間市にある東邦電機工業の相模工場。東邦電機工業さんは1944年(昭和19年)に設立。鉄道用信号・踏切設備、通信・保安用機器の開発、製造を行う鉄道設備の老舗です。
東邦電機工業の全方向警報灯は「全方向踏切警報灯(LED III形)」(2018年現在)といいます。遠方からも、横からも、横断直前にも、全ての方向から「丸い発光」を視認できるのが大きな特長です。
ホンモノは、鉄道設備は得てしてそうですが……間近に見ると想像以上に大きい。本体サイズは360(幅)×360(奥行き)×274(高さ)ミリ、重量は約4.6キロ(本体のみ、突起部は含まず)。人の顔くらいあります。従来の警報灯に近い「電流値低減タイプ」のため、従来型からの交換が簡単なのもポイントだそうです。仕様は鉄道会社によって変わりますが、定格電圧はDC24V、消費電流は700±200mA(定格電圧時)。マイナス20度(セ氏、以下同)から60度の周辺温度下で使えます。
なぜ、どの方向からでも「光が丸く」見えるのでしょう。レンズは円柱型。ボディーには、下から見ると羽(背板)が3枚、120度の間隔で装着されています。そして内部にも3枚、同じく120度の角度で矢羽のように基板が収まっています。基板には直径170ミリ、あるいは250ミリ(オーバーハング形)の半円となるようにLEDを両面に並べます。
そして、それぞれの基板に並んだLEDを組み合わせて1つの丸を表現します。こうすることでどの方向から見ても「丸」に見えます。「当社の全方向警報灯は、視認性と信頼性とともに、とにかくきれいな丸の表現力が自慢。見通し距離は100メートル。どの方向からでもよく見えます。また、仮にLEDが1つ故障したとしても丸が大きく崩れないような工夫も取り入れています」(塩沢さん)とのことです。
ちなみに、設置場所や鉄道会社の求める構成、基準に沿うように幾つかの仕様があります。雪が降る地域には三角帽子の「防雪フード」オプションや円柱レンズに融雪ヒーターを備えた「融雪形」、さらにはオーバーハング(吊り下げ)型の「全方向踏切警報灯(LED-OH形)」(発光直径:250ミリ)などもラインアップします。そして、黄色と黒の主ポール「踏切警報機柱」を中心に、バッテン印の「踏切警標」、列車の進行方向を示す「列車進行方向指示器」、警報音を鳴らす「踏切警報音発生器用スピーカー」、非常ボタン「踏切支障報知装置の操作器」などとともに踏切付近に設置します。
相模工場社屋の屋上では実際の環境を模した屋外実動テストも行っています。強烈な日差し、雨風、雪にさらしさらして十数年。「鉄道設備は信頼性と安全性が命。10年以上テストしているものもありますが、全て正しく動作しています」(渡邉さん)。おぉぉ新品もいいですが、この経年劣化具合もまたいいですね。
製造後の検査ラインも新品の警報灯だらけで超壮観です。全方向警報灯は月に約200台を製造しているそうです。ていねいに作られ、厳しい動作試験を経て出荷されたこの子たちが全国各地のどこかの踏切で十数年活躍するのです。どこかで会えたらいいですね。そして、踏切があったらぜひ全方向警報灯を探して、たっぷりと愛でてあげてくださいね。
「……1ついただけませんか?」
「あはは、ダメですよ」
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