3分に及ぶ「出産シーン」 「HUGっと!プリキュア」が子どもたちに伝えたかった“母の強さ”と”父の責任”サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)

» 2018年08月23日 18時00分 公開
[kasumiねとらぼ]
前のページへ 1|2       

テーマから逃げない、「HUGっと!プリキュア」

 そもそも子ども向けアニメで、「出産」と真面目に向き合い、あいまいにすることなく、真正面から「出産により新しい命が生まれること」を描くのが、「HUGっと!プリキュア」のすごいところでもあります。

 「HUGっと!プリキュア」は、いつでもテーマを真正面から描きます。

 例えば、今回「生まれてくる命の尊さ」を表現したいのであれば、「子犬が産まれる」などにすることもできたはずですし、いじめ問題にしろ、「男の子だってお姫さまになれる」「人のこころを縛るな」などの多様性を示唆するセリフにしろ、決してあいまいな表現ではなく、真正面からの言及をしています。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 多様性が描かれるサブキャラクター、アンリ君

 「子育て」「命の誕生」「多様性」「女性の社会進出」といった難しいテーマを扱う本作品において、比喩的な表現では子どもたちに伝わりにくい、という判断をされているのか、もともとそういった表現を得意とする佐藤順一監督の意向なのかもしれませんが、少なくとも「直接的で強めのメッセージを子どもたちに届けよう」という意図を感じます。

 そして「あいまいな表現で逃げない」のは子どもに対しての信頼の証なのです。

 また、そのような直接的なメッセージから「家族の会話」へとつながっていくことを期待しているのではないかと僕は思っています。


カッコイイ大人を描く、「HUGっと!プリキュア」

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 小さいころのさあやと、母・れいらさん(YouTubeから)

 「HUGっと!プリキュア」では、例年のプリキュアシリーズにも増して、たくさんの「カッコイイ大人」が描写されています(第27話の女医さんもカッコよかったですよね)。

 プリキュアの両親たちもカッコよく描かれます。

 イジメを受けていたはなちゃんのために転校を決意し、はなちゃんにただ共感するはなの母・すみれさん。

 ホームセンターの店長で、育児から家事までこなし、はなちゃんに的確なアドバイスをするはなの父・森太郎さん。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 娘・はなに寄り添う、母・すみれさん

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 体格も性格も頼もしい、父・森太郎

 さあやの母・れいらは女優としての高みを目指し続け、さあやの目標となりました。

 それを支えるのは、専業主夫である夫・修司さん。「専業主夫」をかっこよく描くことにより、職業の多様性をも表現しています。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 さあやの母・れいらは、大女優(YouTubeから)

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 子育てと女優の両立には、社会の手助けがありました(YouTubeから)

 ほまれの両親は離婚していますが、お母さんは建築現場で明るく働いています。

 それを支えるのは、ほまれのおばあちゃんとおじいちゃん。離婚していても、決してマイナスな表現をすることなく、周りが支えることの大切さを描いています。

 縛られた家父長制から、多様性を認める家族へとなりつつある、愛崎家。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 兄・正人と妹・えみる

 アンドロイドであるルールーははなの家族に受け入れられました。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 野乃家に受け入れられ家族となったルールー

 多様な家族形態があり、それぞれの家庭が生き生きと描写されています。

 どんな家族形態においても「子どもたちに、大人のカッコイイ姿を見せる」という強いメッセージを感じます。

 もちろん、家族だけではなく、ブラック会社を辞め見事に新しい会社を興した元クライアス社の3人、26話でさあやの母・れいらと一緒に子育てをした撮影所の人々、タコ焼き屋の店主からデザイナーまで、みんな「カッコイイ大人」なのです。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 さあやは、両親と撮影所のみんなに育てられました

 「なんでもできる、なんでもなれる、輝く未来を抱きしめて」

 口でいうのは簡単ですが、それを実行するのには相当な困難が伴います。

 子どもたち無限の未来のためにも、ただ口で言うだけではなく、われわれ大人が「カッコいい姿」を子どもたちに見せていくことが大切なことじゃないのかな、と思います。

 現実では大学医学部の入試において女子の点数が不正に下げられていたことが報道された昨今。そんな時代に「なんでもできる、なんでもなれる、輝く未来を抱きしめて」を謳(うた)うプリキュアが放送されているのは、ある種の皮肉でもあり、また逆説的に未来への希望になっているのではないでしょうか。

(少なくとも、今の子どもたちが「なんでもできる、なんでもなれる未来」を作っていくことが、僕たち大人に課せられた使命なのだと、僕は思います)

 「子育てがテーマのプリキュア」を表現するためには、「そのプリキュアを育てた親を描く」
 「お仕事がテーマのプリキュア」を描くために「カッコよく仕事をしている大人を描く」

 「HUGっと!プリキュア」はいつでも「言葉」ではなく「行動」で示しているのです。

 (自戒を込めて)自分も子どもたちに恥ずかしくない生き方をしていきたいな、と思います。


はなの初恋の相手はジョージ・クライ?

 カッコイイ大人がたくさん出てくる「HUGっと!プリキュア」。もちろんカッコイイ大人を描くためには、アンチテーゼとしてのクライアス社の悪い大人たちの描写にも力を入れています。

 その最たるものが、プリキュアの敵組織、クライアス社の社長「ジョージ・クライ」です。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 クライアス社社長のジョージ・クライ(YouTubeから)

 『月刊アニメージュ』2018年9月号(徳間書店)のインタビュー記事では、座古監督によりジョージ・クライが「はなの初恋の相手」であることが明らかになりました。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 著者所有の『アニメージュ』2018年9月号(徳間書店)85ページ

はなにとって、ジョージは初恋の相手なんです。
 ――『アニメージュ』2018年9月号(徳間書店)85ページから引用


 「初恋の相手が、敵組織のボス」というのも少女漫画的な展開ではありますが、同インタビュー記事内で佐藤順一監督に「まあ、人でなしですよね(苦笑)」(84ページ)と言及される「ジョージ・クライ」。

 そんな「人でなし」にプリキュアがどう立ち向かっていくのか、今後の最大の焦点になっていくものと思われます。

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 ジョージ・クライと野乃はな

ジョージ・クライという大人にどう立ち向かうのか?

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 ナイトプールでもジョージ・クライとの戦いを思い出し、恐怖するはなちゃん

 「HUGっと!プリキュア」もこれから後半戦へと突入、物語も大きく動いていきます。そこでもやはり「大人」がキーワードになっていくのではないでしょうか。

 「ジョージ・クライ」という大人にプリキュアがどう立ち向かっていくのか? ハリハム・ハリーという大人の男性を巡るほまれ、ビシンの戦いはどうなっていくのか?

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 ハリーと因縁のある敵ビシン

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 ほまれとハリーはどうなる……?

 ドクター・トラウムと、その娘(?)アンドロイドのルールーの関係はどうなっていくのか?

プリキュア HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア クライアス社 キュアマシェリ キュアアムール 出産 アンドロイドであるルールーを作ったのは敵の幹部、ドクタートラウムなのか?

 「HUGっと!プリキュア」は「子育て」をテーマにしているからこそ、丁寧に「大人」を描いています。今後の展開は、そんな「大人」の動向に注目してみると面白いのではないでしょうか。

 毎週のように驚かされる展開の続く「HUGっと!プリキュア」。

 この先も、本当に楽しみです。

(しかし……はなちゃんの初恋がジョージ・クライだった、ってのは結構……複雑な心境だったりする……)


「HUGっと!プリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/05/news034.jpg 天皇皇后両陛下と愛子さま、“仲むつまじいショット” 女性皇族「ティアラ」にも注目…… 80万いいね
  2. /nl/articles/2501/05/news006.jpg 目からウロコな“ビニール袋のたたみ方”が100万再生 超便利な“裏技”に「こっちの方が絶対いい」
  3. /nl/articles/2501/05/news023.jpg 「目がバグる」 どこからどう見ても“平面”にしか見えない千葉のビルが話題 投稿者にその後を聞いた
  4. /nl/articles/2501/05/news002.jpg “100歳おばあちゃん”の朝食作りに密着したら……驚きの姿と「最高の朝食」に大反響 2024年ねとらぼで読まれた【レシピ記事トップ5】を紹介
  5. /nl/articles/2501/04/news056.jpg 「WEST.」、メンバー結婚発表から“YouTube登録者2万人減” 目標の100万人を突破したばかりだった
  6. /nl/articles/2501/04/news025.jpg サバの腹に「アニサキス発見ライト」を当てたら……? 衝撃の結果に「ゾワっとした」「泣きそう」と悲鳴 その後の展開を聞いた
  7. /nl/articles/2501/05/news001.jpg 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は……斜め上のキュートな活用術に大反響 2024年に読まれた面白記事トップ5
  8. /nl/articles/2501/05/news033.jpg 「昔はモテた」と話す母→全然信じていない息子だったが…… 当時の“異彩を放つ姿”に驚き「わぁ!」「とても魅力的」【海外】
  9. /nl/articles/2501/04/news037.jpg 白髪でやる気がわかなくなった女性、“白髪手術“したら…… “二度見必至な若返り”に「ビックリ」「凄い変わり様」
  10. /nl/articles/2501/03/news005.jpg 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」→こだわり満載の完成品に「すごすぎて意味わからない」と大反響 2024年に読まれたハンドメイド記事トップ5
先週の総合アクセスTOP10
  1. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  2. 大谷翔平、妻・真美子さん妊娠公表→エコー写真に“まさかの勘違い” 「デコピン妊娠?」「どう見てもデコピンで草」
  3. 「すごい漢字!」 YouTuberゆたぼん、運転免許証公開 「本名の漢字」に衝撃の声続々
  4. 「麻央さんにそっくり……」 市川團十郎の11歳息子・勸玄の成長ぶりに驚きの声 「大きくなってる!」「すでに貫禄がある」
  5. チェジュ航空社長、日本語で謝罪 犠牲者は170人以上との報道 公式サイトは通常のオレンジからブラックに
  6. 「スマホ入荷しました」 ハードオフ店舗がお知らせ→まさかの正体に大横転 「草しか生えない」
  7. 母「昔は数十人もの男性の誘いを断った」→娘は信じられなかったが…… 当時の“想像を超える姿”が2800万再生「これは驚いた」【海外】
  8. 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
  9. 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
  10. 「デコピンを抱き寄せたのはもしかして」 妻・真美子さん第1子妊娠発表で大谷翔平の発言と行動に再注目 「“もう帰る?”は気遣っていたのかも」
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」