大阪で目撃情報相次ぐ「霊感タクシー」正体は―― 利用者からは「大阪を感じる」と意外に好評
※記事閲覧中に心霊現象が発生した場合、当社では一切の責任を負いかねます。
いまだ続く猛暑によってアツアツな大阪の街にて、心臓が凍りつくほど恐ろしくもユニークなタクシーが話題となっているようです。その名も「霊感タクシー」。さまざまなメディアに取り上げられ、ここ数日で一気に有名になりました(参考記事1)(参考記事2)。
はたして、その実態は? ねとらぼ記者は霊感タクシーの運営元である株式会社未来都(みらいと)へアポを取り、取材を行うこととしました。
まさに移動おばけ屋敷
朝10時大阪市内某所にて、未来都専務取締役の笹井さん、そして幽霊タクシーと待ち合わせ。注目の幽霊タクシーは一見どこにでもあるふつうの車両と思わせつつ、その運転席には「某テレビ画面から出てくる人」にそっくりな何者かが。ギャー!
「霊感タクシーメインの乗務員を務めております、松家(まつか)と申します」外に出てきた謎の人物から、意外にもハキハキとした声で自己紹介いただきました。
「おばけ運転乗務員」こと松家さん、そして同席していた笹井さんに案内され、車内へ入るとそこはまさに動くおばけ屋敷でした。不穏なBGMが流れるその場所には毒々しいゴム大蛇に綿っぽいクモの巣、よくわからないお札に切り落とされた指などが設置されており、怪しさ満点! 和風すだれマットの座り心地も高ポイントでした。
松家さんは超幽霊風ロングヘアーでありながら安全運転に余念なし。笹井さんによればタクシー歴9年のベテランであり、実績も豊富とのことです。
というわけで、目的地へ送ってもらいながらいろいろなことをインタビューしてみました。
「冷感」から「霊感」へ
―― 「霊感タクシー」実施の経緯について教えてください。
笹井さん(以下、笹井):当社では昨年の夏より「めっちゃええやんタクシープロジェクト」というものを立ち上げ、ユニークな企画を通して新たな形のタクシーサービスの提案を行っています。第1弾は「めっちゃ冷感タクシー」といって、全国的に見ても暑い地域にあたる大阪という場所で「タクシーならば暑さに悩まされることなく移動できる」ということを実感していただくため、特殊素材マットや扇風機、風鈴などの設備を取りつけた車両を3台限定で用意しました。霊感タクシーはこれまでの企画の好評を受けた第4弾で、「大阪のユーモアを前面に出した、これまでとは違うものをやろう」ということで決定しました。
※この他も未来都では同プロジェクトの一環として、関西空港および伊丹空港と限定エリアを定額で運行する「空港定額タクシー」や、あったかグッズを用意する「めっちゃあったかタクシー」などの企画を実施しています
松家さん(以下、松家):昔からホラーが大好きで、「リング」や「呪怨」などの映像作品をよく観たり、おばけ屋敷に行ったりしていました。「こういう取り組みで行く」という専務の企画を聞いて「これはいけるんじゃないか」と、いろいろなアイデアを提案しました。
笹井:他の会社でも「心霊タクシー」として各地の肝試しスポットを回るサービスが提供されています。私たちは「より多くのお客さまに手軽に感じていただければ」と考え、車内をおばけ屋敷にすることによって日常のちょっとした移動の最中でもヒヤっとした体験を提供できればと考えています。
生きているのか疑われることも
―― このサービスのこだわりについて教えてください。
笹井:企画を進めるにあたって松家とホラー作品を数本鑑賞したり、複数のおばけ屋敷を巡るなどして研究しました。そのおかげもあって、松家の方もすっかりなりきっていて、指の動かし方や雰囲気など全ておばけのように演技しています。「服装だけじゃなくて本当にこわいぞ!」と。そういったこだわりもあって、お客さまからご好評をいただけているのかなと。写真を撮る際も一言もしゃべらなかったりして、本当に生きているのかと言われたこともあるそうです。
松家:「人間ですか?」と言われてしまうくらい、不気味さを演じています(笑)。ただ、本当に怖がられるお客さまもいますので、そういうときは明るく「こういう企画をやらさしてもらってます」と接したり、いけそうだと判断したら怖くしたりと、臨機応変な対応を行っていますね。
笹井:BGMに関してもこだわって選びました。いかにも「昔のおばけ屋敷」的な音楽も検討したのですが、ずっと聞いているお客さまが不快に感じないかといったことも考え、長く聞いても耳障りにならず、ちょうどよい不気味さを感じさせるBGMを使用しています。車内装飾も安全面に配慮しておりまして、後ろの生首もヘビもやわらかい素材のものを使用しています。万一ご利用いただいたお客さまにケガがあってはいけませんので。
女子高生の悲鳴が!
―― 反響はどうでしたか?
笹井:私たちも実際に運行してみるまでは、お客さまに受け入れてもらえるのか正直不安でしたし、社内で議論もいたしました。ですが、いざ運行してみたところ、多くの方に喜んでいただくことができました。実際ご乗車されたお客さまからは「最初はびっくりしたけどなかなかおもしろい」といった感想をいただいたりしました。地方や海外から来られた方からも「大阪にしかない」「大阪を感じるね」などの声もありました。
松家:中国版Twitterである「微博(Weibo)」でもこのタクシーが話題になりました(参考記事)。
―― 印象に残った反応や感想は?
笹井:お客さまをお送りして清算のために停車していると、周りに人だかりがブワーッと(笑)。「なんやなんや」みたいな感じで、みんな写真を撮られたりして。
松家:東京などから来たお客さまからは「すごい企画だよね」とよく言われます。降りた後で「記念撮影いいですか?」とおっしゃるお客さまも何人かいて、Twitterとかにも写真を投稿してくれたり。
笹井:後ろに置いていた生首を見たのか、この車が通り過ぎた後に、女子高生の「キャー! なにあれ」って悲鳴が聞こえてきたことがありました。避けられたりすることもありましたね。「近寄ったらアカンのちゃうか」みたいな。いろいろな反応がありました。
―― 確かに、深夜に出くわしたりすると怖いですね(笑)。
笹井:心斎橋などに行くとビックリされる方も多かったですね。新聞やニュースサイトに取り上げられてからは「新聞で見たよ〜」と言ってくださる方もいらっしゃったのですが、スタートした直後はそういった情報が流れていませんでしたから、「あのタクシー何やろ?」と疑問に思われたり、怖がられたりする方もいました。「生首乗ってる〜!」といったように。
大阪の風土とマッチ?
―― 通報されたりなどはしませんでしたか?
松家:一切ないんですよ、今のところ! 意外にも受け入れられているのかなと。
笹井:松家がお客さまに合わせて対応しているからでもありますし、ユニークなことをやっても受け入れてもらえる大阪という風土にたまたまマッチしたのかもしれません。「ああ、大阪やからな」と(笑)。
―― そうしたお話を聞く限り、大成功といってもよいのでは?
笹井:そうですね。昨今タクシー業界を取り巻く環境が大きく変化していて、「このままでは(タクシーの)存続すら危うい」と私たちは考えているんです。こうした企画を通してさまざまなタクシーの魅力をお客さまに発信していくことで、今まで以上に多くのお客さまにご利用いただけるサービスにしていきたいと思います。
―― 次回の企画や、今後についてお聞かせください。
笹井:すでに第5弾についても考えています。まだ固まってはいませんが、より多くのお客さまに寄り添っていけるようなサービスを企画しているところです。未来都では創業当時からタクシー事業をサービス業とみなしており、ご乗車いただくお客さまに「その方だけの空間」を提供するものと考えています。例えば、仕事帰りのお客さまが未来都のタクシーにご乗車いただいたことでリラックスして「家族に優しく接することができた」と喜んでいただけるような、そんな「お客さまの心と生活を明るく照らす」サービスを今後も目指していきます。
「霊感タクシー」はお客さんのことをしっかり考えて怖がらせていた!
今回霊感タクシーを体験した感想は、「快適で楽しい!」。運転もスムーズかつ安全で、極端に車酔いしやすい自分でも大丈夫でした。加えて、一見ユニークさばかりが目立つこのサービスに対し、かなりのこだわりや業界の将来を活性化しようという目標が込められていたことを知り、タクシーそのものの見方も変わったような気がしました。
「霊感タクシー」は8月31日まで、大阪府内1台限定で運行しています。
(エンジン)
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全てのドライバーが穏やかな心でハンドルを握れますように。
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