「ポリゴンを追い出さないで」―― ポケモンショック当時の「ポリゴン」ファンの思い描く漫画に涙
ポケモンに罪はない。
「ポケットモンスター」シリーズにはこれまで807種類のポケモンが登場しており、ファンなら誰にでも、お気に入りの1匹がいるもの。Twitterでは「大好きな『ポリゴン』の思い出」を描く漫画が大きな反響を呼んでいます。アニメ版のポリゴン登場回で起きた、「ポケモンショック」事件(後述)による悲しみをつづった内容は、多くの人の心を打ちました。
時はポケモンブームが盛り上がりを見せた1997年。作者の津田沼篤(@assamu_tikutiku)さんにとって、ポリゴンは初めて好きになったポケモンでした。小学生だった当時、いつも一緒だったソフビ人形のポリゴンは、サトシにとってのピカチュウのような存在。その思いは20年以上経っても変わらず、今でもポリゴンが一番好きだそうです。
だから、アニメ版で第38話「でんのうせんしポリゴン」(1997年12月16日放送)が予告されたとき、津田沼さんは狂おしいほどに喜びました。放送当日はポリゴンの人形と一緒にテレビの前で待機し、番組開始と同時に録画をオン。うれしさと楽しさとワクワクの詰まった、とても幸せな30分間を過ごせたといいます。
ところがその翌日、津田沼さんは各所の大々的な報道に心を痛めることになりました。前日のポケモンを見ていた何百人もの視聴者が、体調不良を訴えて病院に搬送されたというのです。原因は作中で多用されていた、光が激しく明滅する演出とみられ、これが光過敏性発作を引き起こしたとされています。
この事件は後日、「ポケモンショック」「ポケモン事件」といった俗称で呼ばれ、問題視されることに。放送局のテレビ東京は、原因の究明と対策の確立ができるまで、ポケモンの放送を休止する措置をとりました。番組は1998年4月16日に再開されましたが、その後38話は再放送やネット配信において欠番扱いに。その回のメインとして印象の強かったポリゴンは何らかの配慮があってか、以降のテレビアニメ版に一切登場しなくなりました。自身には何の非もないのに、かわいそう……。
※その後、記者会見の撮影用フラッシュなど、他の映像を見ても光過敏性発作は起こりうると判明し、騒動は鎮静化。アニメ番組のテロップで「部屋を明るくして、画面から離れて見てね」などと表示されるようになったのはこのころから
津田沼さんは大人になった今でこそ「被害に遭った人がいる以上、配慮は当然」と納得しています。しかし、当時はポリゴンが悪者にされてしまったように感じ、悲しみに暮れたといいます。宝物のように思っていた録画は周囲から危ないと止められて見られず、ポリゴンが再開後のアニメに出ることもなく、ポリゴンの活躍にワクワクした思い出は幻となってしまいました。
「このままゲームの中でもポリゴンがいないことにされちゃったらどうしよう」「お願いします、ポリゴンを追い出さないでください」――。悲痛に願っていた津田沼さんに、幸福が訪れました。1999年11月21日に発売された「ポケットモンスター金・銀」で、再びポリゴンと会えたのです。
しかも「ポリゴン2」という新たな仲間までいることを知り、津田沼さんは大歓喜。「『なんだその程度のことで』と思うかもしれないが、1人の子どもの心はこのとき確かに救われたのだ」と、任天堂と開発元のゲームフリークに感謝を述べています。
そして漫画は、ポリゴンへの思いをつづって締めくくられます。「あの事件を乗り越えたからこそ、今では胸を張って言える。たとえこの先何が起ころうとも、僕は君のことが大好きだ。いつもそばにいてくれてありがとう。これからもよろしくね、ポリゴン!」
ツイートには、「ポリゴン愛が伝わってほっこり」「ポケモンもポリゴンも知らないけれど目頭が熱くなった」と感動する人、「放送の翌日、番組を見ていた同級生が休んでいた」と当時を語る人、「ゲームでは優遇されていてうれしい」と喜ぶ同好の士などから、さまざまな反応がありました。当時を知らない若い人からの反響も散見されます。
「事件の原因となった悪者はポリゴンでなく、特に明滅の演出が激しかったピカチュウでは」といった声も多数ありました。津田沼さんはこれに対して「この事件に悪者はいない」と反論。「起こった問題を画面内のキャラクターの責任として糾弾するのは違う」と述べています。
作品提供:津田沼篤(@assamu_tikutiku)さん
(沓澤真二)
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