「トランスフォーマー」を創る男たち―― 日本生まれの変形ロボットは、なぜ世界130カ国で愛される一大コンテンツとなったのか(2/3 ページ)
多様な玩具シリーズを展開するトランスフォーマー
―― 現状、新製品が発売されているものに限ると、トランスフォーマーにはどのようなシリーズがあるんでしょうか?
岡部:新作映画「バンブルビー」はもちろん、歴代映画を題材にしたスタジオシリーズ、子ども向けで簡単に変形できるターボチェンジ、変形前後の完成度を追求したコレクター向けのマスターピース、それの映画版であるマスターピースムービーシリーズ。あと、昔のアニメのキャラを題材にしたジェネレーションズというラインがありまして、「シージ」や「レジェンズ」もこれに含みます。
―― 大ざっぱに分けると、実写映画の商品と昔のアニメを題材にした商品とに分かれてるんですね。
蓮井:そうなります。
―― 「テレビでやってるアニメ」は現状ないわけですよね。
岡部:そうですね。ただ来年は35周年を迎えますので、トランスフォーマーの基本コンセプトであり、最大の特徴である「ロボットが身の周りにあるありとあらゆる物体に自由自在に変形し、潜んでいるという唯一無二のコンセプトと、ロボットからビークルに完全変形する面白さを伝えたいと思ってます。
―― 新規ユーザーの取り込みに力を入れたいということでしょうか。
岡部:新規ユーザーの取り込みということに関しては、映画商材がメインだと考えています。あとは先日発売になったG-SHOCKみたいなコラボ商品ですね。最近の流れとしては、まず映画でトランスフォーマーを見てもらって、「トランスフォーマーってどういうものなんだろう」と興味が出た人にはジェネレーションズとかに進んでもらう……という形です。とにかく昔のアニメはシリーズもたくさんあって、今から全部見るのは大変だと思うので。
―― 確かに、最初の「戦え! 超ロボット生命体 トランスフォーマー」だけでも60話以上ありますもんね……。
岡部:最近は子どもたちに調査すると、“コンボイ”ではなく“オプティマスプライム”の方が通りがいいんですよ(笑)。映画のユーザーで一番多いのは20代前後の人だけど、G1(※)のアニメは30後半あたりからがボリュームゾーンなので、G1を通らずに映画のファンになっている人がたくさんいます。
※初期シリーズの総称。具体的には、1990年代に展開された「トランスフォーマーG-2」より前の作品群を指す
蓮井:トランスフォーマーを売っている全ての国でアニメを放送しているわけではないんです。だから最近だとどうしても映画の影響が強くなりますよね。やっぱりアンケートをとってみるとオートボット側が人気になるのはどこの国も同じで、キャラの知名度にしてもバンブルビーとかオプティマスはみんな知ってるけど、スタースクリームとかだとちょっと怪しくなってくる。自分はディセプティコン大好きなんですけどね……(笑)。
―― 悪役のがかっこいいと思うんですけどねえ! 個人的にあまり整理がついてない点なんですが、旧アニメのリニューアル系のシリーズ(「トランスフォーマーレジェンズ」や「パワー・オブ・ザ・プライム」など)ってどういう差があるんですか?
岡部:「トランスフォーマーレジェンズ」は2014年から2018年までの4年間展開していたシリーズで、G1やビーストウォーズを中心とする歴代アニメの人気キャラクターを中心に、オールスター的にラインアップしたシリーズです。その上でシリーズ独自のパラレルワールド的なストーリー設定があり、各商品内にはコミックが封入されていました。
岡部:2018年5月から発売された「パワー・オブ・ザ・プライム」シリーズや、2019年から発売する新シリーズ「トランスフォーマーシージ」は、G1を中心とした過去キャラクターをさまざまなテーマのもと、グローバルでラインアップしていく「ジェネレーション」という大きなくくりに分類されるシリーズです。特に「パワー・オブ・ザ・プライム」は合体がテーマになっていて、さらにオプティマスプライムなどのリーダークラス(大型)フィギュアが、1商品で複数の形態のロボットになれることなども特徴でした。「トランスフォーマーシージ」については、のちほどじっくりとご紹介しますね。
ウェポナイズとアーマーアップが新シリーズ「シージ」の魅力! ところでウェポナイズって何……
―― 「ジェネレーションズ」カテゴリーの新シリーズ「シージ」を作るにあたって、新しくコンセプトを立てたとおっしゃっていましたが。
蓮井:このシリーズをどういうシリーズにしようかと考えたときに、「アーマーアップ」と「ウェポナイズ」を主題にしようということになったんです。まずそこを決めてから、じゃあその要素をどうやって表現しようか突き詰めて、よりハードな内容のシリーズをやろうと考えました。変形後のキャラの身長もアニメに忠実にそろえて、並べることを考えてデザインテイストも統一しています。
―― ウェポナイズとアーマーアップってなんですか……?
蓮井:今回は大半のキャラに、全身に武器や装備を取り付けられるハードポイントを設けているんです。どれにも共通して、肩、下腕、背中、足の側面、足裏に5ミリのジョイントを設けました。それに対して、より小さなトランスフォーマーであるマイクロマスターが組み合わさって武器になったり、単体でバトルマスターが変形して武器になって、各キャラクターに持たせられたりするんです。
蓮井:あと、コグというキャラは全身手持ち武器の塊で、バラバラに分解して他のキャラクターに持たせることができます。だから武装やアーマーを後から取り付けることによってキャラクターを広げていけるし、カスタマイズでの遊びを楽しめる作りです。武器の追加装備を「ウェポナイズ」、装甲や装備の追加を「アーマーアップ」と呼んでいるわけです。
―― おお〜、なるほど、武器や装備を追加で盛れるわけですか。
蓮井:ジョイントの大きさは共通なので、どれをどのキャラクターに取り付けてもいいです。足の裏のジョイントなんかは昔の勇者シリーズにあったものを意識していて、そのへんは自分の趣味が爆発してますね(笑)。
これまでのシリーズは合体が主眼だったり、ヘッドオンしてミニフィギュアがコックピットに乗ったりとか、なにかしらテーマがあったんです。だから普通にやってたら今回はマイクロマスターが基地になるシリーズとかになっちゃうんだけど、それではインパクトが弱い。だから根本に立ち返って、子どもが好きな三大要素を考えたら「合体」「フィギュア遊び」あとは「装着・変身・カスタマイズ」なんじゃないかなということになって、このシリーズの方向性が決まりました。
―― 一度プリミティブなところまで立ち戻ってコンセプトを詰めたわけですね。しかし、今回デザインがコミックのトランスフォーマーっぽいですね。ウェザリング(汚し塗装)もされてるし。
蓮井:武器と装甲を足し算するというコンセプトの商品なので、それなら激戦区でのハードな戦いをイメージできるものにしようということになりました。ですからキャラクターのデザインとしてはIDWパブリッシングの『レッカーズ(Transformers: Last Stand of the Wreckers)』やマーベルの『ジェネレーション2(Transformers: Generation 2)』など、ハードな内容の海外コミックのテイストも取り入れています。このあたりのコミックには生き死にがかかっている戦いが描かれているので、そういった要素を玩具に落とし込む時にも方向性としてしっくりくるのかなと。汚し塗装もハードな戦いの表現として入れています。
―― しかし、そうなるとコグみたいなパワーアップ用のアイテムは複数買う必要があるかも……。
蓮井:どういう遊びをしたいかで、何を集めるかが変わってくるシリーズなんですよ。「キャラクターを全部集めたい」でもいいし、「とにかくサイドスワイプを強化したい」でもいいし。コグだけ3体くらい買っても面白いですよ。コグをコグでパワーアップすることもできます。正直、たくさん買っていただけたらうれしい、というのもちょっと含んでますね(笑)。
―― あと不思議だったのが、「シージ」の関節の作りなんです。軸が一本で動く、単純な構造の関節が多用されているように見えるんですが。
蓮井:今回はトランスフォーマーの全身にいろんな武器をたくさんつけるのが前提なので、それに耐えうる腰や腕の関節が必要でした。だから「シージ」はボールジョイントみたいな重さに弱い構造の関節は極力避けて、しっかりした渋みがあるものにしようと。たくさん武器を付けてもちゃんとポーズをつけて立たせられるようにしたかったんです。
―― やっぱり意図的なものだったんですね。
蓮井:それに加えて、今回は全部のキャラが腰をひねることができます。
―― えっ!!! 素晴らしい!!
蓮井:足も横向きに倒す軸が入ってて、股関節を開いてもちゃんと接地するようにしてます。これも全キャラクターがそうなってますね。
―― え〜! うれしい〜! すごいじゃないですか!
蓮井:せっかく武器を装備したんだから、ちゃんとポージングさせたいじゃないですか。そうじゃないとこのシリーズの意味がないというか、そこが「シージ」の意図なので。だから関節はすごく重要視してます。武装させるというだけじゃなくて、キャラクターとしてよりかっこよく武器を構えられないとダメだと思ったんで。そこも含めた上で、激しい戦いを再現できるというのが「シージ」の大きなポイントです。
―― なるほど。基礎的なコンセプトが各製品の設計までちゃんと行き届いているんですね……感動的だ……! あ、ということは今回のウルトラマグナスがアーマーを装着する形で変形するのはコンセプトに沿ってるんですね。
蓮井:そうですね。アーマーアップというコンセプトに沿って、まずトレーラーのキャブが白いコンボイみたいなロボットに変形して、さらに後ろのトレーラー部分がアーマーとしてくっつく形になりました。この形式は初代のマグナス以来なんで、快挙ですね。しかも今回、キャブになる白いコンボイは通常のコンボイと全く違う設計です。彼はおもちゃとしては最初にアーマーアップしたキャラなので、このシリーズにうってつけだったんですよ。だからちゃんとアーマーを着込んで、白いコンボイがマグナスになる形に行き着いたんです。
―― すごい……めちゃくちゃよく考えられてますね……。
蓮井:シージのキャラはすでにリメークされたものも多いので、仕切り直して再度やろうとしたときにどこにどういう魅力を持たせるかはかなり考えました。例えば「サイドスワイプが外装を取り付けることでスーパーサイドスワイプになる」という遊びは今までやったことがない要素なので、前にサイドスワイプを買った人でも違う価値を感じて新しく遊べると思うんです。関節の作りからキャラクターの選定から、このウェポナイズとアーマーアップという軸に沿って全てが絡み合っているんですよ。
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