「トランスフォーマー」を創る男たち―― 日本生まれの変形ロボットは、なぜ世界130カ国で愛される一大コンテンツとなったのか(2/3 ページ)

» 2018年12月17日 10時00分 公開
[しげるねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

多様な玩具シリーズを展開するトランスフォーマー

―― 現状、新製品が発売されているものに限ると、トランスフォーマーにはどのようなシリーズがあるんでしょうか?

岡部:新作映画「バンブルビー」はもちろん、歴代映画を題材にしたスタジオシリーズ、子ども向けで簡単に変形できるターボチェンジ、変形前後の完成度を追求したコレクター向けのマスターピース、それの映画版であるマスターピースムービーシリーズ。あと、昔のアニメのキャラを題材にしたジェネレーションズというラインがありまして、「シージ」や「レジェンズ」もこれに含みます。


トランスフォーマーシージ インタビュー 現在展開されている玩具シリーズ(公式サイトより)

―― 大ざっぱに分けると、実写映画の商品と昔のアニメを題材にした商品とに分かれてるんですね。

蓮井:そうなります。

―― 「テレビでやってるアニメ」は現状ないわけですよね。

岡部:そうですね。ただ来年は35周年を迎えますので、トランスフォーマーの基本コンセプトであり、最大の特徴である「ロボットが身の周りにあるありとあらゆる物体に自由自在に変形し、潜んでいるという唯一無二のコンセプトと、ロボットからビークルに完全変形する面白さを伝えたいと思ってます。

―― 新規ユーザーの取り込みに力を入れたいということでしょうか。

岡部:新規ユーザーの取り込みということに関しては、映画商材がメインだと考えています。あとは先日発売になったG-SHOCKみたいなコラボ商品ですね。最近の流れとしては、まず映画でトランスフォーマーを見てもらって、「トランスフォーマーってどういうものなんだろう」と興味が出た人にはジェネレーションズとかに進んでもらう……という形です。とにかく昔のアニメはシリーズもたくさんあって、今から全部見るのは大変だと思うので。


トランスフォーマーシージ インタビュー G-SHOCKとコラボした「G-SHOCK × TRANSFORMERS マスターオプティマスプライム」(商品ページより)

―― 確かに、最初の「戦え! 超ロボット生命体 トランスフォーマー」だけでも60話以上ありますもんね……。

岡部:最近は子どもたちに調査すると、“コンボイ”ではなく“オプティマスプライム”の方が通りがいいんですよ(笑)。映画のユーザーで一番多いのは20代前後の人だけど、G1(※)のアニメは30後半あたりからがボリュームゾーンなので、G1を通らずに映画のファンになっている人がたくさんいます。

※初期シリーズの総称。具体的には、1990年代に展開された「トランスフォーマーG-2」より前の作品群を指す


トランスフォーマーシージ インタビュートランスフォーマーシージ インタビュー 「トランスフォーマー シージ」のオプティマスプライム



蓮井:トランスフォーマーを売っている全ての国でアニメを放送しているわけではないんです。だから最近だとどうしても映画の影響が強くなりますよね。やっぱりアンケートをとってみるとオートボット側が人気になるのはどこの国も同じで、キャラの知名度にしてもバンブルビーとかオプティマスはみんな知ってるけど、スタースクリームとかだとちょっと怪しくなってくる。自分はディセプティコン大好きなんですけどね……(笑)。

―― 悪役のがかっこいいと思うんですけどねえ! 個人的にあまり整理がついてない点なんですが、旧アニメのリニューアル系のシリーズ(「トランスフォーマーレジェンズ」や「パワー・オブ・ザ・プライム」など)ってどういう差があるんですか?

岡部:「トランスフォーマーレジェンズ」は2014年から2018年までの4年間展開していたシリーズで、G1やビーストウォーズを中心とする歴代アニメの人気キャラクターを中心に、オールスター的にラインアップしたシリーズです。その上でシリーズ独自のパラレルワールド的なストーリー設定があり、各商品内にはコミックが封入されていました。



トランスフォーマーシージ インタビュー

岡部:2018年5月から発売された「パワー・オブ・ザ・プライム」シリーズや、2019年から発売する新シリーズ「トランスフォーマーシージ」は、G1を中心とした過去キャラクターをさまざまなテーマのもと、グローバルでラインアップしていく「ジェネレーション」という大きなくくりに分類されるシリーズです。特に「パワー・オブ・ザ・プライム」は合体がテーマになっていて、さらにオプティマスプライムなどのリーダークラス(大型)フィギュアが、1商品で複数の形態のロボットになれることなども特徴でした。「トランスフォーマーシージ」については、のちほどじっくりとご紹介しますね。




ウェポナイズとアーマーアップが新シリーズ「シージ」の魅力! ところでウェポナイズって何……

―― 「ジェネレーションズ」カテゴリーの新シリーズ「シージ」を作るにあたって、新しくコンセプトを立てたとおっしゃっていましたが。

蓮井:このシリーズをどういうシリーズにしようかと考えたときに、「アーマーアップ」「ウェポナイズ」を主題にしようということになったんです。まずそこを決めてから、じゃあその要素をどうやって表現しようか突き詰めて、よりハードな内容のシリーズをやろうと考えました。変形後のキャラの身長もアニメに忠実にそろえて、並べることを考えてデザインテイストも統一しています。

―― ウェポナイズとアーマーアップってなんですか……?

蓮井:今回は大半のキャラに、全身に武器や装備を取り付けられるハードポイントを設けているんです。どれにも共通して、肩、下腕、背中、足の側面、足裏に5ミリのジョイントを設けました。それに対して、より小さなトランスフォーマーであるマイクロマスターが組み合わさって武器になったり、単体でバトルマスターが変形して武器になって、各キャラクターに持たせられたりするんです。


トランスフォーマーシージ インタビュー 各部に設けられたジョイントに、自由にパーツを装着して楽しむことができる(写真はサイドスワイプ)

蓮井:あと、コグというキャラは全身手持ち武器の塊で、バラバラに分解して他のキャラクターに持たせることができます。だから武装やアーマーを後から取り付けることによってキャラクターを広げていけるし、カスタマイズでの遊びを楽しめる作りです。武器の追加装備を「ウェポナイズ」、装甲や装備の追加を「アーマーアップ」と呼んでいるわけです。


トランスフォーマーシージ インタビュー 全身が武器やアーマーの塊でできている「コグ」(写真右)

―― おお〜、なるほど、武器や装備を追加で盛れるわけですか。

蓮井:ジョイントの大きさは共通なので、どれをどのキャラクターに取り付けてもいいです。足の裏のジョイントなんかは昔の勇者シリーズにあったものを意識していて、そのへんは自分の趣味が爆発してますね(笑)。

 これまでのシリーズは合体が主眼だったり、ヘッドオンしてミニフィギュアがコックピットに乗ったりとか、なにかしらテーマがあったんです。だから普通にやってたら今回はマイクロマスターが基地になるシリーズとかになっちゃうんだけど、それではインパクトが弱い。だから根本に立ち返って、子どもが好きな三大要素を考えたら「合体」「フィギュア遊び」あとは「装着・変身・カスタマイズ」なんじゃないかなということになって、このシリーズの方向性が決まりました。

―― 一度プリミティブなところまで立ち戻ってコンセプトを詰めたわけですね。しかし、今回デザインがコミックのトランスフォーマーっぽいですね。ウェザリング(汚し塗装)もされてるし。

蓮井:武器と装甲を足し算するというコンセプトの商品なので、それなら激戦区でのハードな戦いをイメージできるものにしようということになりました。ですからキャラクターのデザインとしてはIDWパブリッシングの『レッカーズ(Transformers: Last Stand of the Wreckers)』やマーベルの『ジェネレーション2(Transformers: Generation 2)』など、ハードな内容の海外コミックのテイストも取り入れています。このあたりのコミックには生き死にがかかっている戦いが描かれているので、そういった要素を玩具に落とし込む時にも方向性としてしっくりくるのかなと。汚し塗装もハードな戦いの表現として入れています。


トランスフォーマーシージ インタビュートランスフォーマーシージ インタビュー 激しい戦いをイメージさせるウェザリング

―― しかし、そうなるとコグみたいなパワーアップ用のアイテムは複数買う必要があるかも……。

蓮井:どういう遊びをしたいかで、何を集めるかが変わってくるシリーズなんですよ。「キャラクターを全部集めたい」でもいいし、「とにかくサイドスワイプを強化したい」でもいいし。コグだけ3体くらい買っても面白いですよ。コグをコグでパワーアップすることもできます。正直、たくさん買っていただけたらうれしい、というのもちょっと含んでますね(笑)。

―― あと不思議だったのが、「シージ」の関節の作りなんです。軸が一本で動く、単純な構造の関節が多用されているように見えるんですが。

蓮井:今回はトランスフォーマーの全身にいろんな武器をたくさんつけるのが前提なので、それに耐えうる腰や腕の関節が必要でした。だから「シージ」はボールジョイントみたいな重さに弱い構造の関節は極力避けて、しっかりした渋みがあるものにしようと。たくさん武器を付けてもちゃんとポーズをつけて立たせられるようにしたかったんです。


トランスフォーマーシージ インタビュー 股関節などは比較的シンプルな構造

―― やっぱり意図的なものだったんですね。

蓮井:それに加えて、今回は全部のキャラが腰をひねることができます。

―― えっ!!! 素晴らしい!!

蓮井:足も横向きに倒す軸が入ってて、股関節を開いてもちゃんと接地するようにしてます。これも全キャラクターがそうなってますね。

―― え〜! うれしい〜! すごいじゃないですか!


トランスフォーマーシージ インタビュー 腰の「ひねり」と足の接地にこだわり

蓮井:せっかく武器を装備したんだから、ちゃんとポージングさせたいじゃないですか。そうじゃないとこのシリーズの意味がないというか、そこが「シージ」の意図なので。だから関節はすごく重要視してます。武装させるというだけじゃなくて、キャラクターとしてよりかっこよく武器を構えられないとダメだと思ったんで。そこも含めた上で、激しい戦いを再現できるというのが「シージ」の大きなポイントです。

―― なるほど。基礎的なコンセプトが各製品の設計までちゃんと行き届いているんですね……感動的だ……! あ、ということは今回のウルトラマグナスがアーマーを装着する形で変形するのはコンセプトに沿ってるんですね。


トランスフォーマーシージ インタビュートランスフォーマーシージ インタビュー ウルトラマグナスのアーマーは着脱が可能

トランスフォーマーシージ インタビュー トレーラー部分がアーマーに変形する


蓮井:そうですね。アーマーアップというコンセプトに沿って、まずトレーラーのキャブが白いコンボイみたいなロボットに変形して、さらに後ろのトレーラー部分がアーマーとしてくっつく形になりました。この形式は初代のマグナス以来なんで、快挙ですね。しかも今回、キャブになる白いコンボイは通常のコンボイと全く違う設計です。彼はおもちゃとしては最初にアーマーアップしたキャラなので、このシリーズにうってつけだったんですよ。だからちゃんとアーマーを着込んで、白いコンボイがマグナスになる形に行き着いたんです。

―― すごい……めちゃくちゃよく考えられてますね……。

蓮井:シージのキャラはすでにリメークされたものも多いので、仕切り直して再度やろうとしたときにどこにどういう魅力を持たせるかはかなり考えました。例えば「サイドスワイプが外装を取り付けることでスーパーサイドスワイプになる」という遊びは今までやったことがない要素なので、前にサイドスワイプを買った人でも違う価値を感じて新しく遊べると思うんです。関節の作りからキャラクターの選定から、このウェポナイズとアーマーアップという軸に沿って全てが絡み合っているんですよ。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  4. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  5. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」