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ぬぉぉぉ、何だこのトンネルは! あの「氷川丸」の非公開エリアへ潜入、実はこんなにスゴい船だった(2/3 ページ)

ワレ 氷川丸 ノ ドン底 ニ 潜入 セリ。モトヨリ 生還 ヲ 期セズ。【写真170枚超】

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今回は普段非公開の「その先」も見学

 このように普段から史料価値の高い見学コースを用意している氷川丸ですが、実は公開されているエリアは一部だけなのです。

 今回の未公開エリア見学会では、船員が使用していたエリアや船底部分にある機関室など、普段は公開していない「さらに先」へ立ち入ることができました。いつもは「進入禁止」の札とチェーンで閉ざされている、照明もなく薄暗い通路の先です。

土日限定公開の屋外デッキ後部から未公開エリアに入る
現在未公開のN1デッキからさらに上層に上がり
N2デッキで煙突基部を間近で見る

 さて、船員が使用していたエリアの多くは船首に集まっています。「フォアキャッスルデッキ」という船首部分で一段高くなっているところ、日本語では「船首楼甲板」と呼びます。2018年現在は、船の修繕に使うペンキや角材、円材(マストに使う材料)を収納する倉庫として使っていますが、その一部に甲板長私室と船員用浴場が保存されています(船員用浴室は、“残っていた”というべきかもしれません)。

 船は士官の指示によって水夫が実作業を行います。水夫の中で甲板に配置するメンバーの最上階級が甲板長となります(軍艦でいうところの先任下士官ですね)。甲板長は、若手の下級士官よりスキルも経験もあって、実質的な権力も船長や一等航海長に勝るとも劣らない、船の中ではけっこう威張っていられる立場です。それゆえに、階級は水夫ながらも個室を与えられていたのです。

普段は進入禁止になっている屋外デッキ前部の船倉ハッチ脇を通ってフォアキャッスルデッキに渡る
甲板長室
海水浴槽と清水浴槽が分かれていた船員用浴室

 今度は船の底へ降りていきましょう。氷川丸は巨大な機関室も一番底まで公開しています。主機関には当時では珍しい、燃費が高いディーゼルエンジンを2基搭載していました。当時主流だった蒸気タービンと比べると省スペースだったのですが、それでも4層分の甲板をぶち抜く巨大な空間が必要なスケールです。その一番下の最下甲板(氷川丸でいうところのホールドデッキ)、エンジンの巨大なクランクケースの底部が並ぶ一画に、公衆電話のような電話室がありました。あまりの騒音で通話などできるわけもなく、専用の防音ボックスを作ってようやく各部との連絡が取れたそうです。

 そこから先が、普段は進入禁止となっているエリア。今回はその先を乗り越えて進みます。小さなハッチがあって少し階段を降りると、びっくり仰天の世界が広がっていました。

機関室底部。左右に1基ずつディーゼルエンジンが据えてある
ここから先は未公開の進入禁止エリア
小さなハッチを抜けると
長いシャフトトンネルがあった

 「ぬおおお、何だこのトンネルはー!」

 いきなり細長いトンネルが現れます。トンネルの中を船尾へ向かって太い鋼鉄の円柱が伸びています。これは氷川丸のスクリューシャフト。巨大船のスクリューシャフトを見られる機会はそうそうありません。もっとも、氷川丸のスクリューシャフトは係留保存の改装工事で途中から切断され、一緒にスクリューも取り外されています。しかし、スクリューシャフトを収めていたトンネルはずどどーーーんと船の最後尾まで続いているわけです。「船の奥の奥まで来てしまったぞ……」。何か世界の果てというか、来ちゃいけないヤバイところに辿り着いてしまったような気がして、思わずニヤけてフヒヒと声が出てしまいます。

スクリューシャフトは途中まで残してあり
後は船尾まで長ーいトンネルだけが残っている
白い穴あき円盤の先が浸水防止のグランドパッキンを介してスクリューにつながっていた
人が入れる区画としてはここは最深部最後尾

 氷川丸の奥の奥まで足を踏み入れた未公開エリアは、本当に「別世界」。次回の開催は今のところ未定ですが、参加者アンケートで「このツアーが有料だった場合、いくらならば参加しますか」という設問があったりしました。将来、オプションの特別見学コースとして登場するかもしれません。今後の展開も楽しみに待ちましょう。

長浜和也

 IT記者は仮の姿で本業は船長(自称)。小型帆船を三浦半島の先っちょに係留する“一人旅”セイラー。伊豆諸島を旅するため、学連経験やクルー修行をすっとばして、いきなり1級船舶免許を取得してヨットに乗りはじめて早20年。かつて船で使うデジタルガジェットを紹介する不定期連載も。

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