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「サマータイムの2020年実施は不可能」 立命館教授のスライド注目浴びる 「4〜5年は必要」

立命館大学情報理工学部・上原哲太郎教授が公開したスライドが話題に。

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 2020年東京五輪・パラリンピックの酷暑対策として政府・与党が導入を検討している、夏の時間を2時間繰り上げる「サマータイム」制度。これを受け8月10日、「2020年にあわせたサマータイム実施は不可能である」というスライドショーを立命館大学情報理工学部・上原哲太郎教授が「SlideShare」で公開し、Twitterで話題となっている。

「サマータイム実施は不可能である」

 スライドショーでは、サマータイムを2020年までに社会的大混乱なく実施するのは不可能と断言。理由としては、今の日本国内において「時間」を基準に動作する情報システムはあまりにも多く、これらをサマータイム仕様に時間変更しようとすると工数が膨大で、とても2020年までには間に合わないためだという。

 「時間」を基準にしているシステムは、政府や自治体の情報システム、医療・交通運輸・金融・通信放送・防衛といった重要インフラから、企業の業務・財務・人事給与システム、家庭内の家電まで大量にある。これらのうち、特に24時間動作のシステムは夏時間実施前後で誤作動する可能性が高く精査を要する上に、トラブルの理由が判明しても修正不可能の場合が多々あるとスライドでは指摘している。

「サマータイム実施は不可能である」

 もしシステムをサマータイム向けに修正するなら、国・自治体や重要インフラ企業の場合は4〜5年は必要。民間でも最低3年程度、個人家庭の場合は10年程度かけて対応機器への置き換えが必要になると上原教授は見積もる。費用でいえば重要インフラの調査と対応には少なくとも3000億円程度は必要とのこと。

 NHKは世論調査でサマータイム導入について「賛成」51%、「反対」12%と賛成が多数だと伝えていたが、上原教授は「『世論の支持がある』はそもそも誤解」だと指摘。多くの国民は、家庭機器の時間を補正する手間や買い替えの負担の可能性などをまだ理解している段階になく、実施すると必ず「こんなはずではなかった」と後悔することになると訴えている。

 また1998年時点で欧米を中心に世界で70カ国以上がサマータイムを導入しているなど「海外は出来ているではないか」という意見についても反論。多くの国は現代のように情報機器が普及する前からサマータイムに対応しており、状況が違うことを指摘。先進国で最近サマータイムに移行した国はないこともあげている。

 上原教授はTwitter(@tetsutalow)で、「こんな無駄な議論に議員さんの時間を1秒たりとも使って欲しくないし、解っている人が何故あの人やあの人を止められないのか不思議でならないし、社会インフラを担うと自負する大手マスコミが世論調査でこれを無邪気に問うのも信じ難い。まず夏時間導入で自社システムに何が起きるのか考えたらいい」と、議論の不可解さについてツイート

 今後スライドショーには、サマータイムによって電波時計やカーナビ、ETCなどが不具合を起こす例を追記すると告知している。

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