生は常に死をもたらす
"否命"。彼の物語は,その名が語ってくれる。
─────つむぎ出される命と,それを否定する死なのだ。
神の乱のはるか前,否命の物語は,陰と陽との調和に関するよく知られた教えだった。
うつし世が生まれるよりも前に,精霊たちの世界があった。そのときにもすべての神は存在していたが,すべては混沌の中にあった
─────すべては自分の居場所と使命を求めていた。
多くのものが自分の目的を見つけてからも,否命はさまよっていた。
しかし,そんなどん底の中で,彼は奇跡的な考えに至った。彼は他の神を創ろうと考えたのだ。
おそらくは彼の創り出したものが,彼に目的を与えてくれるだろう,と。
ただちに否命は精霊の世界を創り始め,虚無に実態と形態を与えた。
その作業の中で,彼の形も変わっていった。彼の身体は緑色に変わって長くなり始め,彼の神は秋の色を帯び,その背中に葉が茂り始めたのだ。
彼の創り出したものは命を得て,彼も自分の目的を見つけた。
否命の子供は最初の花の神となった。
時が過ぎ,花の神は年を経てより賢くなっていった。ある日,その花がたずねた。
「私の目的は何なの?」
否命は答えた。「お前の目的は,わが子たること」
しかし,花は満足しなかった。時がたつにつれ,彼女は否命から離れようとしたが,否命はそれを拒んだ。
わが子なくしては,自分の目的も無くなってしまうように感じたのだ。否命は少しづつ辛辣で身勝手になり,見捨てられることの思いに身を削られていった。
そして,花はある日,否命に別れを告げた。否命は怒り悲しんだが,花の決心は変わらなかった。そのとき,否命の中の何かが二つに割れた。彼のもう1つの姿は花を飲み込み,その命を絶った。
それは,神が初めて死んだときだった
否命はそのときになって初めて,自分が二つの形を取っていることに気が付いた。その一方は生であり,その一方は死で,そのどちらももう一方が無ければ無意味だった。
そのときから,はるかな時の間に,否命は数え切れないほどの命を生み出し,それがもう1つの自分自身に殺されるのをただ眺めている。
・「マジック:ザ・ギャザリング 神河物語」特集INDEX
・SOFTBANK GAMES TOP INDEX
|