「NINTENDO GAMECUBE」の開発の原点はロクヨンの反省にあったという。
それは高性能ゆえの最適化という苦労であり,「ロクヨンは開発が難しい」が定説となってしまったことだ。
ロクヨンに限ったことではない。次世代機の抱える大きな問題がゲームの重厚長大化であり,その開発に多大の労力とコストがかかるために,ゲーム市場が崩壊しかねない! とも言われている。
特に次世代機ではグラフィックの処理能力が飛躍的に向上し,その能力を引き出すことで,より緻密で美しいゲームグラフィックを実現できるとわれわれは期待してしまう。ところが,ハード性能の向上は,ピーク時の性能で語られることが常だった。
現実のソフト開発においてはピーク時の性能を引き出すことは困難であり,そのことがゲームという作品を生み出す上で大きな障害となってきたのだ。特殊なチューニングをしなければ引き出せない機能は,開発者にとって大きな負担となっている。
ここで,任天堂がGAMECUBEの開発において重視したのは「ピーク性能より持続性能重視」である。つまり,カタログスペックとしての性能より,さまざまな付加条件のもとでゲームソフトが安定したパフォーマンスを発揮できることを優先するという考え方だ。
具体的には,メモリへのリクエストから命令が実行されるまでの処理をいかに短くするかといった性能が重要となる。
そのため,GAMECUBEでは,メインメモリやグラフィックLSI用混載メモリに,遅延の少ない1T-RAM技術を採用,マイクロプロセッサにも大容量の2次キャッシュを搭載するなど,ゲームプログラムで安定して使える性能を実現している。
また,開発環境も重視し,ソフト開発者ができるだけ容易にゲームソフトを開発できるよう,ツールやデータコンバータなどを供給していくという。
取締役情報技術本部長でクリエイターとしても世界的に著名な宮本茂氏は,GAMECUBEのデモ用に実際のゲームプログラムに近いサンプルを用意し,その開発の容易さを訴えた。
「これまで,われわれソフト開発者は何度もハード開発者に騙されてきた」(宮本氏)
新しいハードウェアが開発されるたびに,そのスペックにソフト開発者たちは驚き,想像力を掻き立てられるが,現実には最高性能時の数十分の1しか実効速度が出ないのが常だったからだ。しかし,GAMECUBEに関しては「やっと正直なハード屋さんに出会った思い」だという。
果たして,そうしたハードの設計思想がどの程度実際のソフト開発に生かされるのか。そして開発環境がどの程度整えられるかは今後の準備にもよるだろう。
しかし,GAMECUBEが純粋にゲームのためのマシンであり,なによりも楽しいゲームソフトを作るために設計されたマシンであることは確かだろう。それだけでもゲームファンにとっては嬉しいかぎりだ。
[SOFTBANK GAMES]
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