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携帯版ドラクエ&FF移植秘話がCEDECで聴けた
2004年9月7日

 現在開催中の「CEDEC2004」のプログラムにドラクエとFFの名前が! やはり大人気で,大きな講義室が満席となったのは,「携帯電話にドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーを移植することについて」のタイトルがついた,スクウェア・エニックス モバイル事業部部長・洞正浩氏のセッション。

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 洞氏は,まず携帯電話の市場について見解。「現在の携帯ユーザーは8000万人といわれており,われわれは“最大のコンテンツターミナル”だと思っている」とした上で,「しかし問題も多い」と続けた。

 洞氏は携帯電話でコンテンツを展開するのに,ユーザーが利用してくれるかどうかなどの「アプリの壁」,高い印象で敬遠されがちな「パケット代の壁」,魅力的なコンテンツが少ない「コンテンツの壁」があると解説。「ということは,既存のユーザーを奪い合っているのではないか,という結論になった。それならばキラーコンテンツを投入する必要があると考え,ドラクエとFFを携帯電話市場に投入することとなった」と説明する。

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 ただ,今まで何故,ドラクエやFFが携帯電話参入しなかったかというと,「ドラクエやFFは,スクウェア・エニックスだけでなく,日本ゲーム業界全体の財産でもなる。適当なものを出してしまっては,先人たちが築いたドラクエ・FFのブランドイメージを壊してしまう」(洞氏)と,慎重だったからにほかならない。今回,FOMAで両タイトルが登場することとなったのは,クオリティ・容量など十分なハードスペックを備えていたからだという。

 それでも,移植は難航を極めたようだ。ファミコン版のテイストを再現する“オリジナルのままの部分”を残しつつ,携帯電話向けのカスタマイズとして,オートセーブ機能の追加や音質調整,キー配置の変更などが施されたという。

 難易度もポイントで,最近のユーザーが楽しめるように,ドラクエなどは堀井雄二氏らと何度も調整したとのこと。ドラクエは「I」で「III」(のクオリティ)を目指したが,FFはFCの移植を優先したので,両タイトルのクオリティがまちまちで慌てた……という,合併直後ならではのウラ話も聴けた。

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 洞氏の話は技術方面に。フレームレートがようやく向上したものの,当然,限られた容量をオーバーしてしまう。ヒープ容量の確保なども問題となり,かなりの手間がかかったという。「このとき大切なのは,限りのあるメモリ容量を,いかにユーザーメリットのあることに使えるか,ということ」という,洞氏のひと言に,受講者たちは頷き,メモを走らせていたのが印象的だった。ほかにも,機種ごとに違うチップなど問題は山積みだったという。

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 さらに,グラフィック面も多数問題が。もともと家庭用だった両タイトルは横長画面だが,携帯電話は縦長画面。そのためメニューまわりのレイアウト変更が図られたほか,企画面でも,コマンドの配置やカーソルのレスポンスなどなど,次から次へと携帯電話でゲームコンテンツを作る上での問題が提示され,今回の移植がいかに大変だったかが伝わってくる。

 その都度スタッフは,魔法エフェクトの色違いによる流用,マップの切り出しなど,さまざまなアイディアで,諸問題を乗り切ってきたという。それでも次々スタッフたちが倒れていって完成したのが,携帯電話版ドラクエ&FFなのだ。

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 そんな辛い想いをしても,洞氏は「スクウェアに入社するきっかけとなった「FF」のコンテンツを生み出すことに情熱を燃やしているようだ。ここで洞氏がスクリーンに映し出したのが“ポリモーフィック・コンテンツ”。

 覚えているだろうか? これはスクウェア・エニックスの決算説明会で,同社代表取締役社長・和田洋一氏が何度も説明している事業展開だ。小説や映画をゲーム化するのではなく,初めにオリジナルの世界観を構築して,制約なくそれをゲームや小説,アニメなどへ,それぞれのメリットを活かした形で発展させるというものだ。

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 洞氏は,「FF」の“ポリモーフィック・コンテンツ”展開として,先日ベータが開始された900i専用コンテンツ「BEFORE CRISIS FINAL FANTASY VII」や,ヴェネチア国際映画祭で高く評価されたDVD映像作品「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」などを紹介。その幅広い展開とクオリティに脱帽。今回の携帯電話も含めて,今後もドラクエともどもFFが,日本のゲーム市場をひっぱっていくことを痛感させた。


[原 毅彦,SOFTBANK GAMES]

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