■ 高橋哲哉監督 P.3
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--では肝心のゲームは,どんな内容になるのでしょうか?
高橋 ジャンルはRPGですが,ストーリーの見せ方は大きく変えました。従来のRPGはあちこちに分散されたストーリーを,ユーザーがうまくつなぎ合わせて全容を理解していくスタイルですよね。たとえば,町であの人の話を聞けば,別の町のこの人の話が聞けるといった具合に。もちろん,それはおもしろさの1つでもあるんですが,今回はフラグが立たなくて物語が進まなくなるストレスを感じさせたくなかった。だから「ゼノサーガ」では,ストーリーを見せる部分とゲームとして遊ぶ部分を完全に分けてます。極端な話,ストーリーの部分だけをビデオで抽出すれば,1本のドラマになるような作りを目指したつもりです。
--1つのイベントが長そうな感じがするんですが,ユーザーが飽きたりする心配はないですか?
高橋 そこはさじ加減が難しいところですね。長いイベントは長いので……。ただ,物語の語り部としては,本来のゲーム部分を早く跳ばして,先を見たいって思わせるようにしていきたいですね。
--今回のイベントはすべて3Dなんでしょうか?
高橋 以前は手法としてアニメーションを選択しましたが,実際は画面やマップが3Dで完成し始めたころには,「3Dでいきたかったなあ」と宗旨替えをしてたんですね。そのときは断念しましたが,いつかやりたいという思いが,今回の「ゼノサーガ」で実現したということですかね。幸いにも,3Dに強いスタッフに恵まれましたし。
--3Dということで,2Dと違う苦労はありますか?
高橋 キャラクターもフィールドもすべて3Dなので,とくに演出部分はTVアニメ的な記号論が一切使えないんですよ。実写の方法論で作らないと,妙に間の抜けた映像ができあがってしまうので,今回はすべてのイベントシーンにコンテとレイアウトシートを作成しました。
--映画制作に近い感じがしますね。
高橋 そうですね。ただ,実写ではなくあくまでCGですので,その辺のおもしろさは演出に組み込んでいきたいです。一番の大きな違いはカメラワークだと思うんですけど,実写だと物理的にどうしても置けない位置であっても,CGなら可能になる。たとえば,真下から,カメラが物体をなめて後ろに行ったりであるとか。
--カメラの視点はつねに固定なんですか?
高橋 キャラクターに合わせて自由に動くカメラと,マップに固定されていてキャラクターをフォローするカメラの2種類があります。自分で自由に視点変更ができるRPGもありますが,「ゼノサーガ」はキャラを追いかける視点と,固定視点が自動で切り替わる感じですね。マップは基本的には北が上になってます。前作のように迷わないように工夫してみました。
--実際のゲーム画面で,プレイヤー以外のキャラクターの動きも秀逸ですね。見かけると追っかけてきたり,目的に沿って歩いたり……。
高橋 今回は敵キャラクターをフィールド上に出して,戦略性を持たせるために,かなり複雑な動きを組んだんですね。近づいたら自然と寄ってくる敵,そーっとそばを通れば気がつかない敵という具合に。その副産物として,キャラクターもかなり自由な動きの表現ができるようになったんですよ。
--3Dのイベント,そして移動画面と,プログラムが大変そうですね。
高橋 技術的には問題なかったんですが,物量的には大変なことになりました。ほかの作品と比べると,「ゼノギアス」はマップを3Dにしたことでグラフィックの手間が3倍くらいになったんですが,「ゼノサーガ」はさらにその3倍くらいになってます。最初はロボットもフィールド上を歩いていたんですが,ユニットが大きくて邪魔なのと,マップが大きくなってデータ量を食い過ぎるのでやめました。
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