■ 高橋哲哉監督 P.5
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--キャラクターデザインに前回と同じく田中久仁彦氏を起用していますが,3Dのモデリング化まではどのように進められたんですか?
高橋 まず,性格設定やら俳優に例えたイメージを氏に伝えて,それを起こしてもらいます。そこからの3D化の作業は,とにかく田中久仁彦氏のデザインに忠実に起こすことが基本コンセプト。一番大変だったのは表情で,氏の描く目の大きいキャラクターは,光の当て方や微妙なバランスのひとつで顔が崩れてしまうんですね。目の小さいリアルな顔であればノウハウもあるし,表情をつけるのも簡単なんですが……。
--メカニカルデザインも,前回と同じ石垣純哉さんですね。
高橋 石垣氏に関しては前々からお願いしてたんですが,今回は,新しいデザイナーにもうひとり麦谷氏という方にも参加してもらいました。ヴェクター全般のデザインをお願いしているんです。デザイナーを2人にした理由は,生産ラインが連邦政府と,主人公の所属するヴェクターという組織のふたつがあるからです。実はKOS-MOSの元デザインは麦谷氏が手がけ,田中氏がクリーンアップしています。
--作曲も前回と同じ光田氏。そして演奏を,あのロンドンフィルハーモニー管弦楽団にお願いしているそうですが。
高橋 光田氏は最初,スケジュールが難しかったんですが,何とか参加してもらえることになりました。演奏は,どうせやるなら最高峰の1つにお願いしようということで。高いレベルに刺激されて,いい意味で引っ張られたい思惑もありました。
--各界からさまざまな優秀なスタッフが参加していますが,制作中に何か思い出深かったエピソードはありますか?
高橋 やはり,このモノリスソフトを起ち上げたときですね。将来の展望を含め,今のスタッフといろいろな話をしたときが,1番思い出深いです。人間,時間が経つと大切なことも忘れるものなので,たまに思い出して初心に返るようにしています。結局,ゲームや映像作品は,自分1人の力じゃ作れないので。
--現在,業界でXboxやゲームボーイアドバンスといったハードが話題に呼んでいますが,クリエイターとしての感想を聞かせてください。
高橋 開発陣の中では,「ゲームキューブが作りやすそう」とか「Xboxは基本がPCなので,PC系の制作ツールがそのまま使えるからやりやすい」という話は出ますが,個人的にはハードにこだわっていないですね。制作時には「ユーザーに一番触れてもらえそうなハードがいいかな」と,それくらいにしか考えていません。
--これからRPGというジャンルは,どういった形になっていくでしょうか?
高橋 業界としては,オンラインに流れる方向性がひとつあると思うんですが,僕自身は映像面において,ハードの進化に合わせた作品を作っていきたいですね。今後,技術が発達すれば,映画やテレビとの境界線がますます曖昧になる。いわゆるゲーム的な表現が許されなくなる中で,割り切って遊んでもらう方法はあえて選ばずに,一切の妥協をせずに演出を突き詰めていきたい。ただ,自分のやり方だと3人称が多く,どうしてもシナリオに複数の視点がからむので,インタラクティブ性を持たせるのが難しい。その辺りをどう解消するかが,今後の課題でしょうね。
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