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インタビュー

一歩先を行く「アフォーダンスデザイン」を意識したのがXbox 360プロジェクト「Xbox 360」(2/5 ページ)

12月10日に発売される次世代機Xbox 360。このデザインに日本人がかかわっていることは、ご存じの方も多いと思う。その当事者であるハーズ実験デザイン研究所の村田智明氏に、Xbox 360のデザインコンセプトなどについて話を聞いた。

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 またそのとき、ジム・スチュアート氏からジョナサン・ヘイズ氏に担当者が変わりました。そこからはヘイズ氏がXbox 360のコンセプトを作っていくことになるんですが、日本のマーケットを意識するのは間違いないが、日本だけに目を向けてしまうと今度はアメリカでうまくいかない。その間の“微妙な線”をねらおう、ということになり、“有機的”か“構造的”かという軸を作り、あるスタディモデルを作って、そのモデルよりもちょっと有機的なものであったり、構造的なものであったりというように、デザインの幅を持たせたモデルを複数作る、という動きになりました(関連記事参照)。

 その時点で、ワールドワイドモデルに対応できるのは我々とAstro Studiosである、ということで2社に絞られました。そして、そこでまた新たなスペックが示されました。「えっ? この前のじゃなかったの?」と思ったんですが。最初に示されたのはダミーだったんですよ(笑)。最初のデザインは、サーベイのための仮スペックだったということで、その大きさでは技術的にも不可能、と言われまして。新たなスペックでもう一度デザインすることになりました。

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 その段階でも8案くらいデザイン案を提示しました。もちろん3Dムービーも作りました。でも、提出した中からの採用はありませんでした。なぜ採用されなかったのかを聞いたんですが、実はそのスペックも本当のスペックとは違う、ということで……。びっくりしました(笑)。

 要するに、最初のデザインではワールドワイドモデルに対応できる事務所を決めるのが目的で、その次には有機的なものがいいのか、構造的なものがいいのかを決めるための指針、位置関係を明らかにするためのものだったわけです。このため「透明な中に何かが入っているもの」や「有機的な形」、「構造的なもの」を混ぜてください、といったオーダーがありました。そして、できあがったものから、どの方向性がふさわしいかを決めたのが第2段階でした。縦置きでも横置きでも空気の流れを十分に取れるもの、といった条件が示されたのもそのときですね。イメージ、デザイン的な問題と、熱対流の問題を両方クリアしなければならなかったのが、その時点でのデザインでした。しかしそこから採用はなかった。

 そこで、ヘイズ氏に会って話を聞いたんですが、だいたい方向性は出ている、と言う。有機的でありながらシンプルなモデルで、あまりごちゃごちゃしていない方がいい。なおかつ、空気を取り入れるために“反った”形の方向で行こう、と。また女性的なイメージを取り入れて、新しいユーザーターゲットを獲得しよう、というところまでデザインが固まりました。

 そこから、さあデザインを始めよう、という時点で出たスペックが、現在のXbox 360のものでした。「えっ。いまからが始まり?」と思いましたが(笑)。たどり着くのがあまりにも長かったですね。コンペをスタートしてから1年近くが経過していたと思います。

 ただ、その時点ではHDDの位置が違いました。背中に付いていたり、中央に付いていたり。このため、技術的にも検証しながら、デザインを進めていく形になりました。当初は、Astro Studiosも我々も“コンペティター“という意識で、どちらかが残るんだ、と思って仕事をしていました。マイクロソフトからもそう聞いていましたし。なのでお互い必死だったと思いますね。競争させられて。

 ただ途中から、向こうのモデルを見せられたり、我々が作ったモデルを向こうに見せたりするようになったんです。なぜかというと、同じスペックを元にデザインしているので、どうしても似てしまうんですよ。基盤の位置は一緒ですし。そこでヘイズ氏が、お互いのモデルを見せ合いながら、デザインを取り入れていく方向に向けていったんだと思います。我々が作ったモダンな日本的デザインをAstro Studiosに渡すと、今度は向こうがニュアンスをつけた形で帰ってくる。

 Xbox 360のへりは「R」(ラウンド)になってますけど、わたしがデザインしたのは、Rを描きながらも、もう少しエッジが立っていたんです。また、いまの電源ボタンにあるような“くぼみ”を作ったのはAstro Studiosなんですが、HDDドライブのようなクロムメッキ色のおへそみたいな形が配置されていました。そこでわたしが「リングオブライト」の形式を取った、現在の4分割のLEDが配置された電源ボタンのくぼみを作ったわけです。

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おなじみのXbox 360筐体

 このように、お互いがデザインを付加しながら作り上げたのが、Xbox 360です。フロントのレイアウトは、ほとんどが我々の担当です。先ほど述べたように、へりをRにしたのはAstro Studios。HDDのデザインもそうですね。我々が提出したのは、HDDが“おなか”にあるモデルでした。横にしたときに下に来る位置ですね。“シシャモ”と呼んでいたんですけど。子持ちシシャモのようだったので(笑)。ただし中央に配置すると、本体幅を狭くしなければならなかったので、技術的な無理がありました。

 Xbox 360のカラーリングですが、フォルクスワーゲンのカラーリングを担当している事務所がアメリカにありまして、そこから色のバリエーションを提出してもらい、新宿のホテルで検討会を行いました。提出されたものにはどぎついメタリック色が使われているものや、ダークメタリック系のものなど、さまざまなバリエーションがあったんですが、いまの日本では、ちょっとこの色はないだろう、と。白がはやっていますから。

 最終的に、「チルホワイト」と呼ばれる本体色を含めて、わたしがカラーアソートしました。電源のリングオブライトの部分も、光沢とつや消しに分けました。ベースの色はアメリカから何パターンか示されていましたが、それをコーディネーションしました。

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