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インタビュー

一歩先を行く「アフォーダンスデザイン」を意識したのがXbox 360プロジェクト「Xbox 360」(3/5 ページ)

12月10日に発売される次世代機Xbox 360。このデザインに日本人がかかわっていることは、ご存じの方も多いと思う。その当事者であるハーズ実験デザイン研究所の村田智明氏に、Xbox 360のデザインコンセプトなどについて話を聞いた。

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――Xbox 360のデザインでこだわった点はありますか?

村田 ヘイズ氏はもともと彫刻家でして、そういう意味では彼もデザイナーですから、今回の場合はわたしとAstro Studios、ヘイズ氏と、デザイナーが3人いると思っていただいていいんじゃないでしょうか。中でもヘイズ氏がプロデューサーだったわけですが、彼が言うには、今回のデザインは、合気道などでよく「ふーっ」と息を吐いて呼吸を整えますよね、そのときの“気を吐く”イメージなんだと。そのときの状態が、一番力がみなぎっている瞬間なんだと。それを表しているんです。

 日本だとこのようなデザインにはならないと思うんです。形状がシャープであったり、残り平面のバランスを考えてボタンを配置すると思います。Xbox 360は日本的なイメージもありますし、アメリカの有機的なイメージもあって、ほどよくミックスしてできあがっていると思いますね。

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 ヘイズ氏は、自宅でスタディモデルを並べて、毎日見たそうです。会社から帰ってきて見たり、翌日朝起きてから見たり。そこで、見飽きたものから外していったんですね。そのなかで、残ったのが最終デザインになりました。そのときに決まったのは、先ほど述べたエッジの乗っているモデルだったそうです。

 ただし、モデルの仕上がりが悪かったんです。フェイスプレートと本体の継ぎ目のすき間が、少し開いている状態だったんですね。J・アラード氏と打ち合わせをしたときに、「このすき間は量産品でも存在するのか」という質問を受けて、技術担当者が「開くかもしれません」と言ってしまったんですよ。「それ、言うなー!」という気分だったんですが(笑)。いまからの日程ではすき間の問題を克服できない、となって、Rが付いた形に落ち着きました。

 もしそのまま完成形になっていたら、Xbox 360のデザインは我々がほとんど担当したことになったわけですが……。こう言うと変ですけど、実はRが取り入れられた現在の形の方が好きなんですよ。デザイナーは完ぺきではない、と自分でも思うんですが、確かに最初は、他人の感覚に対して拒否反応が起きます。しかし、やりとりを重ねることで、お互いに高めあう部分もあるな、と。エッジラインが入っているものより、Rがあるほうが見ていて飽きないんですね。

 Astro Studiosと我々がコラボレーションしてからは、Astro Studiosが作った図面をこちらで手直しして、それをヘイズ氏が向こうに持って行って、「こちらの方がバランス取れてるだろう?」と我々の図面を見せる、といったこともあるわけです。そう言われたら、ふつうは腹を立てるでしょうね。でも向こうは違って(図面を見て)非常にきれいだと、一緒にやりたいと言ったそうです。ヘイズ氏からは、アメリカに行って一緒にデザインを仕上げないか、とも言われたんですが、スケジュールの都合が付かなくてそれは実現しませんでした。でも一緒にやろう、となったことは非常によかったですね。エッジラインからRに変わっても納得しましたね。お互いが気持ちよく仕事できた、という感じです。

 E3 2005で開催された「E3 2005 Xbox Briefing」の時、Astro Studiosの担当者であったラブレディ氏と初めて会ったんですが、ヘイズ氏を含めた担当者8人で、ビバリーヒルズで飲み明かしました。

 Xbox 360は有機的なデザインでありながら、非常にシンプルにまとまっています。日本の人って、新しいデザインには抵抗を感じますけど、目が慣れてくると愛着を感じるんですよ。ゲーム機のスパンは長いので、そこそこ行くんじゃないかと考えています。世界的にもこの形で行けるなと。ヘイズ氏の「飽きないデザイン」という戦略はすごいと思いますね。どちらかというと見た目のかっこよさを追求しがちですが、長く見ていて見続けられるか、というところにヘイズ氏の視点があります。その方が一歩先を行っていますね。

 そう言う意味で、コラボレーションでしか生まれなかったのが、Xbox 360のデザインです。ヘイズ氏がいて、わたしがいて、ラブレディ氏がいて、だれが欠けても生まれかかったでしょう。

 広告関連を担当するデザイン事務所が、Xbox 360のパッケージや広告などのデザインを考えているときに、何か“アイコン”が必要だと思って生まれたのが、円が重なり合うリングオブライトのイメージだそうです。J・アラード氏からは、コントローラーなどに使われている「X」をイメージしたアイコンを使うよりも、リングオブライトを元にパッケージやアドバタイジングを行うほうが、センスよくまとまっている。その成功の元は電源ボタンのリングオブライトにある。自分が実現したかった、一貫性のあるイメージアイコンができた、と言われました。リングオブライトは正解だった、と。

 E3 2005 Xbox Briefingで、会場の天井にリングオブライトが浮かび上がったときは、わたしも感動しましたね。CMでも、わたしの好きな「JUMPING JACK FLASH」にあわせてリングオブライトが使われているので、非常にうれしいです。

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Xbox 360のパッケージにも使われている「リングオブライト」
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電源ボタンをイメージに使用した広告ポスター

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