北米のレーティング――ESRBについて語るってのはどうよ?:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その9)(3/3 ページ)
太りすぎて「くねくね」しにくい体型になってきた、くねくねハニィが語る「最近どうよ?」9回目ですねん。日本のCEROレーティングがかなり参考にしたと言われる北米のレーティングシステムESRBについて語ってるのでよろしこよろしこよろしこ〜。
どんなレーティングだったらいいの?
先ほどちょっと触れたけど、Mレーティングがつく(AOなんて言語道断で、ほとんど家庭用ゲーム機向けでは出されていないのよ)と、子供に売れない(つまりは子供向けリテーラーでは取り扱ってくれない)というデメリットがあるため、なるべくレーティングでEやTを取っていこうとする動きが見られたの。
たとえば、キャラクターが子供っぽくても、後ろの背景にバー(アルコールのビンなどが並んでいるとか)が描かれていれば、EではなくTになってしまうとか、ちょっとだけ汚い言葉を出しただけでTにレーティングされてしまったりすることもあるので、レーティングを下げるために、このような部分を取り除いたりと、涙ぐましい努力もあったりしたんだよね〜。ま、「E>T>M」という構図だったわけですわ。
ところが、近年のトレンドとしては、Mだと「クール」、「大人っぽい」っていう認識がユーザーに生まれて、パブリッシャーによっては、TレーティングにするならいっそのことMレーティングにしてしまえ! という動きが見られなくもないのよ。
というのも、17歳以上のユーザーたちが商品を選ぶときに、EやTのレーティングを見ると「子供っぽいので自分向きではないな」って思っちゃったら、結局はお客さんとして取り込めないわけじゃん? だってさ、自分の子供の頃を考えてみれば、自分の年齢用のおもちゃより、お兄ちゃんやお姉ちゃんが遊んでるのがなんとなくカッコよく見えたじゃん。人間背伸びするもんなんですよ(笑)。
子供のくせに「こんな子供っぽいもの遊べるか!」などとほざいたりもしたもんですわ。ってことは、お兄ちゃんお姉ちゃんはなおさら、わざわざ自分よりも年の下の子向けに作られたタイトルを遊ぶかしらん? ってことよ。規制と言うと、ネガティブな捕らえ方をしてしまいがちだけど、マーケティング戦略として逆手に取ることも可能なのだね〜。
2005年のHot Coffeeと言われるニュース。みんなも覚えているかもしれないけど、Rockstar Gamesが発売した大ヒットタイトル(今日本でもヒットしてるね)「Grand Theft Auto: San Andreas」のPC版に、インターネットでダウンロードしたプログラム(このプログラムのコードネームがHotCoffeeという名だったの)によってアンロックできる「性描写シーン」が含まれていたとして問題になったよね。このとき、ESRBはこのアンロックプログラムを認識していなかったため、事件発覚後、このタイトルのレーティングをMからAOに引き上げたのね。これを受けてパブリッシャーのRockstarは、このプログラム自体を無効にするパッチをリリースしたり、流通に出回ったものをすべて回収してその部分をすべて削除してリマスター、再出荷としたので、Mレーティングを再取得したわけですわ。
ただしこの事件、PC版のみですからね〜。PS2版にはこの要素は含まれていません(だってアンロック自体無理でしょ?)ので誤解なきよう。Rockstarはきちんと回収をしてレーティングを取り直したところも非常に迅速に行われて、大きな話題になってました。ってことで、アメリカではさらに売れに売れまくってました〜。でも、決していいことではないのでこちらも誤解なきよう。Rockstarはこの回収騒ぎで相当の痛手を負ったと言われているのよ……。ただでさえ、残虐シーンも多いゲームなので、叩かれるときは叩かれてしまうのよね〜。
ハニィのあとがき
家庭用ゲームの場合、実際はプラットフォーマー(SCE、マイクロソフト、任天堂)の承認がないと発売できないよね。そのプラットフォーマーのところで「暴力」や「性描写」はチェックされるだろうし、あまりにも道徳から外れると判断される場合は修正を余儀なくされてるはず。さらにマスター承認をプラットフォーマーから受ける場合、ESRBからレーティング審査を受けているのが条件ってことなので、このレーティングシステム、業界をあげて二重に機能してるってことですわ。すばらすぃ。
日本でも、最近でこそテレビゲームの影響とか大騒ぎするようになったけど、海外ではだいぶ前から政府を巻き込んで議論がなされているの。青少年による凶悪犯罪などが多発した際、必ず「ゲームの世界と現実世界の区別がつかなくなっている」と言われちゃう。でも、そもそもゲームって現実世界からの逃避や、現実では経験できない刺激的なことや、バカばかしさなんかを疑似体験できるから「娯楽」なんではないのかしらん? 犯罪に影響がないとは言い切れないけど、そもそも「銃」の所持が許されてること自体も問題なんでは? なーんて皮肉も言いたくなるわけですわ。
映画はある程度許されてるのになぜ? という議論がよくされるけど、ゲームは自らの操作が反映される(インタラクティブ)という意味では、自分の意思で「暴力」や「性行為」を見る、またはする、わけで、一方的に自分の意思に関わらず映像を見せられる映画とは違うっていうことらしいね。でもさ、自分の意思で選べるゲーム進行と一方的に垂れ流される映像では、「避ける」という自助努力の観点から見ると、ゲームのほうが害がないのでは? なんて思っちゃうハニィでした。
いずれにしても政府の介入を受けず、業界の「自主」規制としてこのレーティングシステムを確立したことはすばらしいよね。だから、ESRBやCEROを批判するつもりはまったくないけど、レーティングによりマーケティングが制限されるため、表現の自由を損なわせる危険性をはらんでいることを忘れちゃいけないのだ。
ゲームの歴史は映画に比べて新しいものとの認識が強く、まだ映画ほど市民権を得ていないから規制される、という人もいるの。表現の自由と相反する部分をいかに払拭していけるか、これからのゲーム業界の躍進にかかっているところではあるのよね。そのためにはますます多種多様なすばらしいゲームソフトが必要だし、いろんな対抗勢力と闘っていけるだけの実力を兼ね備えなければならないのだよ。ガンバレ! ゲーム業界!
くねくねハニィのプロフィール
1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。
小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。
1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の口調ですが、慣れてください。言ってる中身は至極マジメ。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。この度、なんだか公認してもらったそうですが、どういう経緯でそうなったかはよくわかりません。ちょこちょこと海外に出没しているようです。
最近、どうも締め切りを引き延ばす術を心得てきたようで、困ったものです。なにやらいろいろ暗躍しているようですよ?
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