構想6年。「ショパンコンクール」から始まった物語:「トラスティベル 〜ショパンの夢〜」インタビュー(2/2 ページ)
「命」をテーマとした物語、そしてショパンの楽曲をモチーフとした章立て、スタニスラフ・ブーニン氏の演奏。「トラスティベル 〜ショパンの夢〜」はどのようにしてできあがったのだろうか。
誰にでも簡単で、かつ奥深く、最後まで飽きないでプレイできるシステムを目指した
―― バトルモードは、ある意味“ガチャ押し”でのプレイでも十分楽しめますね。それに加えて「タイムシェアード リアルタイムバトル」の残り時間0秒付近で、“最後に必殺技をたたき込む快感”がありました。
野口 最初にユーザーがプレイできたのは「東京ゲームショウ2006」でしたが、何の予備知識もない人が触ってもプレイできて、しかも気持ちよく遊べるということもテーマとしてありましたので、そこはうまくいったと思います。これに加えてモンスターが変化したり、必殺技がどんどん増えていったりと、奥深く遊べる要素も作れました。
―― うまく戦うコツはあるのでしょうか(笑)
初芝 次に来るキャラクターが誰かを考えて戦うことですね。いま動かしているキャラは“反射で動かす”ような感じで、「次のキャラクターではどう戦おうか」と考えながらいまのキャラクターを動かしているというサイクルに入るといいですね。いまのキャラクターでどう戦おうかと考えているようだとダメです(笑)。次はこの敵に攻撃されるから防御頑張らなきゃ、と考えながら、いまの敵をやっつけている感じでしょうか。ちなみに敵をダウンさせると、起き上がる時間分だけ行動時間が消費されますので、「Next」と表示されている敵をダウンさせるとずいぶんと楽になりますよ。ダウン系の必殺技をあらかじめセットしておいて戦うといいかもしれません。
―― わたしは防御がまだうまく使いこなせていません……。
初芝 防御はあえて難しく設定しています。その代わりうまくいったときにはすごく効果が高い。ただしこのシステムは諸刃の剣で、ゲームバランスの調整が難しくなるんです。なぜかというと、これを使えばうまい人はレベルが低いままプレイして、おそらくクリアできてしまうんですね。でも、それを許可した方がおもしろいかなと。熟練者はもしかしたら、それほどレベルが上がらなくても最後まで行けるかもしれません。
「反撃」はもっと難しいですね。防御はなれてくると使いこなせるようになるんですが、反撃というシステムが入ったとたんに、いままでできていた防御もできなくなるんです。実はこれもねらって入れています(笑)。
―― 確かにパニックになりました(笑)
初芝 いままでは防御しか出てこないと思ってプレイしていた人が、「もしかしたら反撃が出るかも」と考えると、防御に集中できなくなって失敗してしまうんですね。
―― 今回のゲームシステムの特徴として「パーティクラス」がありますね。
初芝 RPGですから、キャラクターのレベルが上がれば、ヘタな人でも強い敵を倒せるようになります。これを残しつつ、上級者がどんどん先に進めるようにしたくて、このシステムを取り入れました。レベルが低くてもパーティクラスが上がれば「ハーモニーチェイン」で敵を倒せます。これに加えて、一番最初からハーモニーチェインが使えたとしても、体験版をいきなりプレイする人には分からないんじゃないかと思ったんです。「あ、このゲームは難しい」と感じさせないよう、段階的にバトルがおもしろく、難しくなるようにしました。
RPGは30〜40時間プレイすることになりますが、バトルというのはその中でもかなりのウェイトを占めます。1つのシステムだと飽きてしまうんですね。自分でも過去のゲームをプレイしたときにそういった印象を受けたこともありますので、新鮮な感じを常に持ち続ける形でバトルができるよう、“そろそろ慣れてきたかな?”というころにシステムが変化するように心がけました。
―― 今回チュートリアルがフルボイスであるなど、こちらも充実していますね。
初芝 かなり重要視しました。開発している側はゲームに慣れてしまうので、初めてプレイした人が何が分からないのかが、分からなくなってしまうんです。ですので、そのあたりはきっちりヒアリングをして、どのようなチュートリアルがよいのか会議して、声優さんにもボイスを録音していただき、システムの一部として組み込みました。
これまで作ったゲームすべてがそうなんですが、毎回チュートリアルが問題になるんです。普段はゲームを作るのに精一杯で、チュートリアルにまで手が回らないんですが、今回はある程度時間があったということもありましたし、そこには力を入れておこうと。
たとえいま聞いて難しかったとしても、あとで思い出して分かってくれればいい
―― 今回の作品は「命」をテーマとしていますが、なぜこの題材を選ばれたのでしょうか。
初芝 最近では現実の世界でも、いろいろな事件が起きていますよね。こうしたシーンの中でゲームが悪者にされることも多いと思いますが、ゲームはインタラクティブな媒体ですので、いい面もあると思うんです。ゲームをプレイしたことによって、その人のその後の人生にプラスになることが少しでもあればと思って、命の大切さをメインにシナリオを書いたんです。
不治の病だから魔法が使えるというのは一見悲しい設定ではありますが、リスクとリターンですよね。何かを得ようとしたら何かを失うということは常にあることです。その極端な例をファンタジーにして表現したということです。現実の世界でも似たようなことはあるはずですし。逆に、いまはあまりよくない状態でも、それによって何か得るものがあるんだ、と考えてもらえればと思います。
―― ポルカのお母さんがポルカに向かって語りかける言葉は、小学生や中学生にはちょっと難しいかなと思いましたが……。
初芝 そうですね。中学生くらいまでは全く意味がわからないかもしれません(笑)。でも、聞いたときは難しくても、大人になれば分かる……というのはあると思うんです。小さくても雰囲気は分かると思いますし。わたしも子供のころ、何も分かってはいませんでしたが「ガンダムの世界はかっこいいな」と思ったり(笑)。いま思うとすごく複雑な人間関係が描かれているんですけど。そういった部分は感じてもらえると思います。
野口 多分中学生以上は何となく分かる、小学生だと低学年は難しいかもしれないけど、高学年は微妙に分かるかな、という感じでしょうか……。話自体がショパンをテーマにしていますし、家族で一緒にプレイしても楽しめる内容ですので、小学生の子がプレイして、お父さんやお母さんに「これはどういうことなの?」と聞いて、「これはね……」というように、会話が弾むようになればうれしいですね。
―― 町や村の名前やキャラクターの名前など、音楽関係の用語で統一されていますが、何か法則はあるんでしょうか。
初芝 最初は法則立てて名前を付けようかと思ったんですが、結論としてやめました。ただ「チューバ」は大きな人ですし、「ビオラ」は弓使い、「サルサ」は元気で「マーチ」がきっちりとしているなど、多少は関連があるかもしれませんね。「リタルダントとは港町っぽいなあ」とか、「アレグレットは主人公っぽいね」などとのように、響きで選んでいます。
―― 好きなキャラクターを挙げるとすると誰ですか。
野口 わたしはビオラですね。彼女はヒロインではなく、バイプレーヤー的な女性キャラです。目立つようで目立たない、勝ち気なようで、実は内面的には繊細です。そういう性格が好きなんです。あとはバトルでの使い勝手がいいですね。必殺技の「ヒールアロー」がありがたいですし、それに遠くからの攻撃は強力です。
初芝 わたしは敵側のキャラクターなんですが、ワルツがいい感じを出しているかなと。狂気じみているんですが、子どもの悪ふざけの延長、というような感じが気に入っています。きっと彼には、小さなころに何かあったんですよ。
―― では最後に、読者へメッセージをお願いします。
初芝 ポルカ役の平野綾さん、ブーニンさん、音楽担当の桜庭統さん、ナレーションの森本レオさんなど、すばらしいスタッフが集まって最高のものを作り上げようと頑張って制作しました。是非最後まで楽しんで遊んでください。
野口 いい作品、ゲームというのは、作ろうと思ってもなかなか作れるものではありません。一流のキャストが集まっただけでもダメですし、スタッフのバランスみたいなものによっても、作品が変わってきます。この部分は良いけれど、こっちの方はダメ、ということは往々にしてあるんです。いい作品ができあがるのは“偶然のたまもの”というところも少なからずあるかもしれません。「トラスティベル」は本当にいい作品としてできあがっていますので、ぜひプレイして感想を聞かせてください。
トラスティベル 〜ショパンの夢〜 | |
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発売日 | 発売中 |
価格(税込) | 7329円 |
CERO | A区分(全年齢対象) |
ジャンル | 新感覚クロニクルRPG |
その他の仕様 | Xbox LIVE対応 |
※画面は開発中のものです
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