ショパンがいまわの際に見た夢とは?――実在した音楽家をモチーフにした異色のRPG:「トラスティベル 〜ショパンの夢〜」レビュー(2/2 ページ)
ロマン派を代表する音楽家で、特にピアノ曲で数多くの傑作を遺したショパン。39歳という若さでこの世を去った天才作曲家は、その命が絶えるとき、いったいどんな夢を見ていたのか。バンダイナムコゲームスが放つ新作RPG「トラスティベル」は、その着想の奇抜さとXbox 360ならではの美しいグラフィックに舌を巻く。
さまざまなアイデアが盛り込まれたバトルシーンが新鮮
ゲーム自体は至ってオーソドックスな作りで、モンスターを倒して経験値を稼ぎ、それに応じてキャラクターのレベルがアップしていくところや、武器、防具、アクセサリーなどを装備してキャラクターの性能を高めるなど、古典的なファンタジーRPGと変わりない。
反面、バトルシーンには独自性が強く感じられる。この「トラスティベル」では、ターン制RPGとアクションRPGを掛け合わせたような「タイムシェアード リアルタイムバトルシステム」というものを採用している。基本はターン制で、敵・味方とも速さを表す「Spd値」の高い順にターンが回ってくるが、移動や攻撃はアクションゲームと同じようにプレイヤーが操作する。1回のターンに付き、行動できる時間は5秒と決まっていて、それが過ぎると次のキャラクターに順番が回る。Aボタンが通常攻撃、Yボタンが必殺技になっているが、いわゆるMP値のような概念がないので、行動時間内であれば何度でも必殺技を出せるというのも大きな特徴だ。
また、RPGでよく見られる「火・水・風」といった属性がない代わりに、“光”と“闇”という要素があり、これが敵・味方の双方に影響を及ぼすという点も一風変わっている。例えば、同じモンスターでも明るい場所と暗い場所では姿形が変わり、攻撃力や耐久力も違ってくる。味方キャラクターの場合は、立ち位置の明暗によって必殺技が変化する。おもしろいのは、地形による影だけでなく、キャラクターに光が当たってできる影に入った場合も“闇”の状態になること。アイテムなどを使うことで、自分の周囲を明るく(暗く)することもできる。敵の特性を考慮しながら光と闇の効果をうまく使うと、戦闘が有利に進められるというしくみがおもしろい。
さらに、個々のキャラクターのレベルとは別に、パーティ全体の能力を示す「パーティクラス」の存在も特徴的だ。パーティクラスは経験値に依存せず、特定のボスを倒すことでアップする。そして、パーティクラスが上がると戦闘時のルールがどんどん変化していく。例えば、Lv.3になると必殺技の装備可能数が2つから4つに増え、Lv.4になれば敵の攻撃をいなして反転攻勢に出る「反撃」が使えるようになる。また、Lv.4以上では異なる必殺技をつなげて繰り出す「ハーモニーチェイン」も使用可能になる。序盤は単調に思えるバトルも、パーティクラスが上がるほどできることが増えて、爽快感も増幅されていく。なかなかおもしろいアイデアだ。
意表をついた物語は興味深いが、最後は若干駆け足気味
そのほかの目新しい要素としては、「エネミーフォト」と「スコアピース」があげられる。「エネミーフォト」は、ビートが持っているカメラでモンスターの写真を撮り、それを道具屋などで売却できるというもの。よく撮れている写真には高い評価が付き、高値で買い取ってくれる。「スコアピース」は、4小節の短い楽譜で、フィールド上の宝箱などで見つかることがある。これを集めて特定のNPCに話しかけると、セッションを行うことができる。といっても、音楽ゲームのように自分で演奏するわけではなく、相手が持っているスコアピースに調和すると思われるスコアピースを手持ちの中から選ぶだけだ。そして、セッションによってきれいなハーモニーができると、相手からレアアイテムをもらえることもある。
また、フィールド移動、バトル、イベントシーンがほぼシームレスにつながり、ローディングで待たされる場面がほとんどないのは実に快適。画面上に「Now Loading」と表示されることは滅多になく、あってもほんの数秒で完了するのはすごい。
物語については、一言でいえばシンプル。伏線をいくつも張りめぐらせたものではないし、昨今の海外ドラマによく見られるような複雑系でもない。ただ、前半はゆったりと、これといった盛り上がりもなく淡々と進むのに、後半に入ると途端に駆け足になってしまい、なぜそうなったのか、そうしなければいけないのかという部分が若干説明不足に感じた。
ただ、ゲームの難易度はかなり低めなので、RPGをあまりプレイしない人でも気軽に楽しめるはず。セーブポイントも多めに設置されているため、毎日少しずつ進めることができる。ストレスのないロードや操作の分かりやすさも含めて、遊びやすさという点ではXbox 360のRPGでナンバーワンの出来だろう。ラストシーンを見る限り、続編というのはちょっと難しいように思うが、次回作でも奇抜な着想と豊かなアイデアをふんだんに盛り込んだ新感覚のRPGを見せてほしい。
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