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今回の「マリオ」では長年の研究成果が結実している――宮本茂氏編Nintendo roundtable

青沼氏に引き続き行われた任天堂のラウンドテーブルにおいて、「スーパーマリオギャラクシー」について宮本茂氏がその魅力を説く。デモンストレーションも行われたのだが、その腕前は……?

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「スーパーマリオギャラクシー」でもコアゲーマーと初心者との壁は低い

「スーパーマリオギャラクシー」ではメインのゲームデザインを担当している宮本氏

 現地時間の7月12日、北米サンタモニカで開催している「E3 Media and Business Summit」(以下、E3)に合わせ、任天堂がラウンドテーブルを開催。ニンテンドーDS用ソフト「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」プロデューサーの青沼英二氏に引き続き、Wii用ソフト「スーパーマリオギャラクシー」について宮本茂氏が登場した。

 宮本氏は、先日の「任天堂メディアブリーフィング」において、かねてから“ヘルスパック”として話題にしていたWiiの次期注目タイトル「Wii Fit」を披露した。最近はこの「Wii Fit」と「スーパーマリオギャラクシー」に多くの時間を費やしてきた宮本氏は、作り手として何に興味を持つかが重要と語る。

 「ここ3年間、健康のこともあり、毎日体重を量っているのですが、こうして毎日続けていくことが楽しさにつながることを知りました」と、毎日続けたものを眺めるだけでも楽しいという発見が、「Wii Fit」につながったと説明する。

 「Wii Fit」は誰でも楽しめるというものを目指したのならば、「スーパーマリオギャラクシー」はよりゲームらしさを追求したもの。しかし、初めてゲームを触る人にも楽しさが伝わることは共通している。求めるユーザー層は異なりながらも、誰でも楽しんで遊べるという点では同じなのだと宮本氏。青沼氏も語っていた従来のユーザー層とは異なる販売動向を示している「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」と、同様の現象が起きることを期待している。

 さて、「スーパーマリオギャラクシー」にも、そうしたコアなゲーマーと初心者の両方を満足させるアシストモードなどが実装されている。アシストモードは2人で協力して敵を倒すモードだが、トラップを回避したり、移動すべき足場を作ったりと、パズル的要素が加わっている。

 「スーパーマリオギャラクシー」は昨年のE3で発表されたWii用アクションゲームで、北米では11月12日に発売が決定している(日本は2007年中)。プレーヤーはWiiリモコンを使用して主人公であるマリオを動かし、さまざまな惑星を冒険する。この惑星は球体で表現され、360度マリオを動かすことができる。“重力”を利用し移動し、壁をも自由に駆け回ることができるシステムになっている。

 この重力システムについて宮本氏は、「NINTENDO64の『スーパーマリオ64』の頃から研究しているもので、それがやっと結実しました。当時から3Dゲームでは問題となるカメラ(視点)の問題もクリアし、『スーパーマリオギャラクシー』では意識せずに遊ぶことができます」と自信をのぞかせる。

 3D空間を自由に走り回ってほしいという思いから作られたのが「スーパーマリオ64」で、それに重力システムが加わり操作をシンプルにしたのが本作となる。宮本氏は本作を「スーパーマリオ64」の正当進化という位置づけをしている。3D空間を滑走するものにありがちな“3D酔い”も改善できたと宮本氏。開発中に出てきたさまざまなアイデアを選別している現在は、クッパ大王登場シーンを作っているところで、そこにどれだけのアイディアを活かせるかというところらしい。

 さて、この重力システムは「マリオ」シリーズの持つ、自分だけの技や攻略法の発見を後押し、思わぬ発見をプレーヤーにもたらしてくれるそうだ。開発中にも、思わぬところに移動できたり、技を見つけており、ユーザーがどれだけ新しい技を見つけてくれるかを期待していると宮本氏。

何度も失敗し、スタッフに「ここ、どうするんだっけ?」とたずねて笑いを誘う

 ここで実際に「スーパーマリオギャラクシー」の実演に移る。本作ではスターピースを集めると新しい星が生まれるのだが、6つのステージに40くらいの星が当初は存在するのだが、スターピース次第では120ほどの星が誕生することになるそうだ。ちなみに宮本氏がデモプレイを試みてくれたのだが、いろいろ失敗することも多く、会場から笑いが起きるほほえましい場面も見られた。

 ラウンドテーブルでは、取材に訪れたメディアからの質問を受け付けていたのだが、最後にその様子を紹介する。宮本氏も終始にこやかで、会場となった眼前に広がるサンタモニカの海のような穏やかだった。カンファレンスで手応えを得たからに他ならない。

―― 「Wii Fit」で使用する「Wii バランスボード」を他で使用する可能性は?

宮本氏 単純に思いつくのはスノーボードです。「Wii Fit」にもスキーをするミニゲームが入っています。きっと早い段階で、サードパーティーさんからもいろいろなアイデアが出てくると思います。

―― 「Wii バランスボード」について、サードパーティーにも情報をシェアしてるのでしょうか?

宮本氏 昨日発表したところなので、現在はいろいろなメーカーさんから問い合わせが殺到している状態です。バランスボードはトレーニング関係にも興味を持ってもらっているようですし、大学の医療機関と協力して作っているということで、サードパーティ以外にも医学的なものなどにも応用されると思います。

―― 「Wii バランスボード」や「Zapper」以外にも周辺機器が発売されることは?

宮本氏 Wiiを設計したとき、いろいろな周辺機器をつけたいとは思いましたけど、その機器を買わないとゲームをできないといことは避けたかった。「Zapper」のようなアタッチメントくらいがいいとは思います。なによりも、ゲームデザイン次第ですね。いろいろ考えられますね。ギターヒーローのギターとか(笑)。

―― 「Wii バランスボード」のアイデアはどこから来ましたか? また世界市場向けてサイズはどうしますか?

宮本氏 ウチの家族がスポーツジムに通ったり、僕自身もすごく健康について興味があって。お父さんの体重を家族で眺めるだけでもコミュニケーションができる。リビングに居て、健康チャンネルを見ながら遊ぶという使い方ができたら面白いじゃないですか。でも、計っただけでは駄目なので、いろいろなゲーム的な要素も盛り込んでみたら初めて、これはいける! となりました。サイズは日本でモニタリングして、次にアメリカンなサイズも必要かとは思っています。いろんなところからサンプルを採っている段階です。レジーさん(※)とか(笑)。ただし、他のテリトリとのコミュニケーションを考えれば、できれば世界中同じサイズで展開したいと考えていますが。

※前日の「任天堂メディアブリーフィング」において、米国任天堂社長のレジー・フィザメイ氏のBMI値を宮本氏は計測していた。

―― 「Wii Fit」や「スーパーマリオギャラクシー」とで大変かと思いますが、どれに一番比重が置かれていたんですか?

宮本氏 どれということはありません。新しいものを積み上げていく作業が好きなんで。時間がかかる作品もあるし、短いものもありますが、いろんなものに関われることが楽しく感じています。

―― 「スーパーマリオギャラクシー」と「Wii Fit」、どちらが奥さんに評判がいいですか?

宮本氏 制作中のゲームを社外に持ち出すことはしないので、残念ながら妻はやっていません。でも、まもなくできますね。現在妻は、「ドクターマリオ」で記録を更新しています。

―― 「スーパーマリオギャラクシー」にはいつから関わっているのですか?

宮本氏 「ドンキーコングジャングルビート」からずっと関わってますね。

―― 「スーパーマリオギャラクシー」における宮本さんの役割を教えてください。また、どれだけ宮本さんの考えが入っているのですか?

宮本氏 「スーパーマリオ64」ではメインでディレクションをしていましたが、今回もメインのゲームデザインは僕がやっています。「スーパーマリオギャラクシー」は東京で作っているのですが、僕の京都の机とテレビ電話で常につながっていて、ネットワークでプログラムも飛んでくる……。便利な世の中になりましたね(笑)。

―― 「スーパーマリオサンシャイン」はすごく難しかったが、「スーパーマリオギャラクシー」の難易度はどうでしょうか?

終始、にこやかにラウンドテーブルは行われた。宮本氏も楽しんでいるのが分かった

宮本氏 実はスタッフと一番議論したのがそこです。「サンシャイン」が難しかったいうのはスタッフも理解していました。お便りもいただいており、非常に慎重に対応しました。実は、「スーパーマリオギャラクシー」は半年前まではもっと簡単だったんです。それを僕がほどよい難易度に設定し直しました。あくまでも行きすぎない難易度で。「スーパーマリオギャラクシー」では、いろんなユーザーを吸収していきたいという思いからです。

―― 「スーパーマリオギャラクシー」にはどんなボスが出てくるのでしょう? あとルイージでプレイできるのですか?

宮本氏 面白いボスが出て来ますが詳しくはナイショです。もちろん、ルイージについても……ナイショです(笑)。


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