「ピクミン」も作っています――任天堂ラウンドテーブルで語られたこと
「面白いものができたと思えたら発表します」――宮本氏が面白いと思えたから発売される「Wii Music」をはじめ、3つのタイトルを紹介する任天堂のラウンドテーブルがロサンゼルスで行われた。
北米ロサンゼルスで開催中の「The 2008 E3 Media & Business Summit」において現地時間の7月16日、任天堂の開発者によるラウンドテーブルが催された。ラウンドテーブルでは、先に行われた任天堂のメディアブリーフィングで発表のあった「Animal Crossing:City Folk」(邦題:「どうぶつの森Wii(仮)」)と「Wii Sports Resort」、そして「Wii Music」について紹介。登壇したのは、任天堂専務取締役の宮本茂氏と情報開発本部の江口勝也氏。江口氏がまず「Animal Crossing:City Folk」と「Wii Sports Resort」について、そして宮本氏からは「Wii Music」について語られ、質疑応答となった。
ニンテンドーDS版からのデータ引継ぎも可能な「Animal Crossing City Folk」
冒頭、江口氏から「どうぶつの森」シリーズ最新作となるWii用ソフト「Animal Crossing:City Folk」について、Wii対応となることで前作ニンテンドーDS用「おいでよ どうぶつの森」に比べて格段にボリュームがアップし、ゲームキューブ用「どうぶつの森+」のハロウィンなどのいくつかのイベントが復活すると紹介した。イースターやカーニバルなどが新規に追加され、アイテムも増量。WiiConnect24を使用して配信された新アイテムを、追加することもできるようになるとのこと。デザイン機能も強化され、シャツであれば前後、両腕とデザインをそれぞれ変えることができるようになる。
また、村のほかに、プレイヤーたちの共有の場としての“街”が新たに加わる。ここには、劇場やオークション会場のほか、おなじみのカトリーヌの美容院やグレースの高級ブティックが設置されるらしい。WiiConnect24を通じてプレイヤーが街に来るとWiiフレンドへデータとして送信され、そこでどういう行動を取ったのかが分かる仕組みになると江口氏。
メディアブリーフィングでも紹介された「Wii Speak」にも言及し、センサーバーの上に置くだけで、遠くの友達と一緒に遊んでいる感覚になれるし、同じ部屋にいる誰もが会話できると、従来の遊びと違うアプローチができることに触れた。コミュニケーションの強化でいえば、記念写真として撮影したものを、SDカードに記録する機能も追加されるとのこと。
江口氏は、Wi-Fiに接続できないユーザーのために、ニンテンドーDSにWiiのデータを入れて、友人の家のWiiに持って行けるようになると説明。アイテムの追加配信なども、DSステーションなどからニンテンドーDSへデータをダウンロードして、家のWiiに持ってくることができるようになると対応策を考慮している。ただし、ニンテンドーDS版にあったように、いっしょに遊んでいて誰か1人でも電源を落とすと、全員が村から追い出されるといった問題については解消できていないと答えた。
「Wii MotionPlus」を活用するために生まれた「Wii Sports Resort」
スナップを利かせて投げたフリスビーを犬がキャッチする「Disc Dog」、水上オートバイのハンドルに見立ててWiiリモコンとヌンチャクを水平に構えて操作する「Power Cruising」、Wiiリモコンを刀に見立ててケサ斬りをする「Swordplay」と、メディアブリーフィングでデモンストレーションした「Wii Sports Resort」の収録ゲームのうち3つを改めて紹介。開発段階だが、最終的には10個以上は競技が収録される予定だ。
なお、「Wii Sports Resort」に同梱される「Wii MotionPlus」について(単体でも発売される)質問が及んだ江口氏は、加速度センサーだけでなく、より高確度で角度の変化を読み取れるところが特徴と説明。メディアから、「Wii MotionPlus」が加わることで、ゲームの難易度が上がるのではないかという危惧が寄せられたが、そこは開発側としても認識しているとのこと。「あくまでも広い世代でいっしょに遊んでもらうために、できることは挑戦しつつ、ただ入口は入りやすく、遊ぶうちに深く」を心がけているのだそうだ。
「Wii Music」はおもちゃみたいなソフト――でも、ビデオゲームより面白いおもちゃ
このゲームには特に目的もなければ、スコアや評価もない。ゲームソフトというよりは、楽器を奏でられるおもちゃのようなソフトになのでは? そんな質問に宮本氏は、笑顔でうなずき、「それでいて、ビデオゲームよりおもしろい」と自信をのぞかせた。
Wiiリモコンを指揮棒代わりに登場した宮本氏が「Wii Music」をE3で紹介して2年。ようやく「音楽の楽しさ」を提供するソフトが発売されることになった。50曲ほどの収録曲と、60種類の楽器を完ぺきに弾きこなすことはまず無理がある。宮本氏は楽譜をパーフェクトに演奏することの面白さを肯定しつつ、誰でも楽器を奏でる気分になれることを重要視した。それは、ジャズ奏者が例え楽譜を間違えても、コードさえ押さえつじつまを合わせ、最後には音楽にしてしまうようなアドリブ感であり、そこをWiiがサポートできるという確固とした信念にほかならない。
「Wii Music」は、演奏する楽曲を選択すると、基本6人の編成が組まれ、それぞれの役割を担うことになる。プレイヤーが選んだパートのメロディラインだけが消え、演奏しながらどの編成がいいかを組み替えることも可能だ。宮本氏はこの組み合わせを考えるだけで夜更かしすることもあるほどはまるとのこと。アレンジやテンポを調整しながら、最終的に演奏したものは、ミュージックビデオを作成でき、そのデータをWiiConnect24で交換することもできる。なお、追加配信などは現時点では考えていないようだ。
開発途中に、メンバーの子供たちを集めてモニターテストをしたことがあるのだが、ずっと話さずに遊んでいたと紹介。「小学校の音楽の授業は、半分これをやればいいんじゃないか」と、やればやるほど楽しめるソフトであることをアピールした。ただし、ドラムは、「Wii Fit」で使用するバランスWiiボードをフットペダル代わりとするのだが、本格的なためすぐにとはいかないものの、レッスンモードを忠実にこなせば、数週間でドラムがたたけるようになるという。実際に「Wii Music」でミュージシャンが増えることを願ってやまないと宮本氏は締めくくった。
最後に江口氏は、「どこかに向けたゲームではなく、ジャンルにこだわらずに作っていきたい」と発言。宮本氏は、自分が面白いと思えるものになったら発表するとことわりを入れながらも、「ピクミン」も開発してはいると語った。
全体的にゆったりとした中でのラウンドテーブルは、開発者がメディア向けとはいえ、少数の人間と対して、直接目を見て語ることができる貴重な場である。意外な質問も飛び出し、思わず苦笑する場面もあったりと、実に和気あいあいとしたものだった。実際、メディアブリーフィングで発表されたタイトルは、すでに発表されていたものばかりだったが、任天堂がじっくりと――それこそ“面白いと思えるもの”になるまで突き詰めた自信のあるものばかりだろう。新たな驚きと楽しさと、そして笑顔を見る日まで、発売を待つこととしよう。
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