ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
ニュース

第20回:プレイヤー同士でいざ勝負! 対戦プレイはなぜ面白いのか?なぜ、人はゲームにハマルのか?(4/4 ページ)

「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の20回目は、相手と戦うことで初めて起きる“ゲームを続けたくなる”仕組みについて。

PC用表示 関連情報
advertisement
前のページへ |       

 対戦格闘ゲームでは誰か1人のプレイヤーが大差をつけられても、一発逆転が狙える強力な必殺技を導入することで試合終盤まで勝敗の行方が左右しやすくした例が古くからよくあります。しかし、実はこのようなクロスゲームを生み出すシステムは対戦格闘ゲームの専売特許かといえばさにあらず。実は対戦格闘ブームが起きるよりもずっと前に、すでに同様のアイデアは登場していたのです。

 この偉大な発明を搭載した歴史に残る作品とは、1987年にナムコが発売したアーケードゲームの「ファイナルラップ」。本作は大型筐体を使用したレースゲームで、筐体同士を通信ケーブルでつなぐことによって最大8人まで同時に対戦できるようにした当時としては画期的な作品でしたが、ハード面でのアイデアもさることながらソフトのプログラミング面でもさらに素晴らしい工夫が施されています。

 本作では、なんと車のスピードが走行中の順位によって変化するというまさに驚天動地のシステムを搭載し、順位が下位のプレイヤーほど車の最高速度が速くなるようにプログラムされていたのです。つまり、このシステムによって多少実力差があるプレイヤー同士が対戦しても、レース終盤まで順位が入れ替わりやすいスリリングな対戦が楽しめるのです。この「強制デッドヒートシステム」(※筆者が勝手に命名)の効能がいかに優れているかは、以下のムービーを見ればきっとご理解いただけることでしょう。

 なお、「強制デッドヒートシステム」は「ファイナルラップ」の続編タイトル以外にもナムコ製レースゲームでの導入例がいくつもありますので、もし興味のある方はぜひ調べてみましょう!

ムービー:「ファイナルラップ」
※ファミリーコンピュータ版を使用。
(C)1987 1988 NAMCO LTD. ALL RIGHTS RESERVED

 上記とは別のアイデアで、レース中に順位を入れ替わりやすくしてゲームを面白くしているのが任天堂の定番シリーズである「マリオカート」です。本シリーズではマリオ、ドンキーコング、ピーチ姫、ヨッシーなどの各キャラクター、あるいは乗り込む車ごとにそれぞれ性能がまったく異なります。しかし、例えば最高速度が最も速いタイプのドンキーコングのようなキャラクターを毎回選べば必ず有利になるかというと、けっしてそうではありません。では、キャラクターの種類によって極端に優劣がつかないようにしている最大の要因はいったい何なのでしょうか?

 そのヒミツを解く鍵は、「?」マークが目印のアイテムボックスから登場するアイテムに隠されています。実は本シリーズでは、そのときの順位によってどのアイテム出現するのか、あるいはどのくらいの確率で出てくるのかが変化するようになっているのです。トップ集団で走っているときはバナナやこうらなどの一度投げたらすぐなくなってしまうシンプルなアイテムばかりが出る一方、下位にいる場合は一定時間相手や障害物を吹き飛ばすキラーやスーパースター、あるいは何度でも急加速ができるパワフルダッシュキノコなどの超がつくほど強力なアイテムが出やすくなります。つまり、アイテムの出現パターンを順位によって変えることで「強制デッドヒートシステム」が発動するという仕組みになっているのです。

 以下のムービーは、2008年に発売された「マリオカートWii」で同じコースをずっと上位で走ったときと下位で走った場合とを比較したものです。プレイヤーのカートの順位によって、登場するアイテムの種類がまったく変わることに注目して(ちょっと長いですが……)ご覧ください。

ムービー:「マリオカートWii」
(C)2008 Nintendo

 以上、対戦ゲームにまつわるお話はいかがでしたでしょうか? ゲームバランスの調整はもちろん、プレイヤーを夢中で遊ばせるためにいろいろな工夫がされていたことがお分かりいただけたのではないかと思います。

 繰り返しになりますが、メーカーではなくお店側の工夫で編み出された「通信対戦筐体」のアイデアが対戦格闘ブームを支えたことも、ビデオゲーム史上におけるエポックメイキングな出来事でした。筆者も初めは恐る恐る100円玉を投入していましたが、何度か遊んでいるうちに抵抗がなくなり、気がつけば繰り返し対戦していた人と友達になっていたりして楽しい時間を過ごすごとができたのは今でもいい思い出です。

 現在ではアーケードや家庭用などのプラットフォームを問わず、プレイデータを保存する機能が普及したことで段位や連勝数などの全国ランキングなどがリアルタイムで集計されるのが当たり前になりました。これはソーシャルゲームにおいても同様で、勝ち続けることで特殊な称号がもらえたり、期間限定で順位を競うイベントを開催するなど、対戦ゲームにハマってしまうノウハウは今なお脈々と受け継がれているのです。

 それでは、今回はここまで。また次回お会いしましょう!

今回登場したソフトはココで遊べます!

  • 「ストリートファイターII」:Wiiバーチャルコンソール(※スーパーファミコン版)、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」ほか
  • 「ストリートファイターII'」:PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」、PS用ソフト「カプコンジェネレーション・第5集〜格闘家たち〜ほか」
  • 「ベースボール」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「サッカー」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「サムライスピリッツ」:Wiiバーチャルコンソール、PS3およびPSPゲームアーカイブス「サムライスピリッツ剣客指南パック」
  • 「バーチャファイター4 エボリューション」:PS2用ソフト
  • 「鉄拳3」:PS用ソフト、PS2用ソフト「鉄拳5」
  • 「ぷよぷよ」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「マリオカートWii」:Wii用ソフト

著者プロフィール

鴫原 盛之 Morihiro Shigihara

 1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。

Twitterは「@m_shigihara」です。

著者近況

 筆者は普段から仕事も兼ねてあちこちのゲームセンターを見て回るのですが、今では対戦格闘ブーム当時のようにビデオゲームのコーナーがにぎわっているところをほとんど見かけません。家庭用ゲームでも普通にネットワーク対戦ができるようになった現在では、面識のない人同士が対戦できるメリットはもはやゲームセンターの専売特許ではありませんので、こうなるのもある意味必然なのかもしれません。バーチャルではなく、リアルでプレイヤー同士が直接出会える貴重な場であることをうまく利用したオペレーションの工夫をしないと今後もますます厳しくなりそうですね……。


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る