あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 起業編:大日本技研に聞く(5/5 ページ)
ガレージキットメーカー「大日本技研」をご存知だろうか。そのユニークな製品の発想方法とは? 「Fate/Zero」のアノ銃や「PSYCHO-PASS サイコパス」の銃も制作している。
「Fate/Zero」作画参考用の銃制作依頼
田中氏 「Fate/Zero」の衛宮切嗣(えみやきりつぐ)の愛銃、「トンプソン・コンテンダー」制作は「レイジングブル・マキシカスタム」を制作したときの流れで、ニトロプラスさんから資料用の銃がほしいとの発注を受けたところからはじまっています。
―― え!? アニメ版の銃を作ったというパターンではないんですか?
田中氏 違うんですよ。そもそも「Fate/Zero」はアニメ化もされた前作のPCゲーム「Fate/stay night」よりも以前の出来事を描いたスピンオフ作品なのですが、「トンプソン・コンテンダー」の発注を受けた際にはまだ小説版しかなく、アニメ制作の予定があることもはっきりとは知らされていなかったんです。そこで小説に使用されたイラスト用の3Dデータをもらって作業しはじめたのですが、何かがおかしい。バレル13インチということだったので、それを基準に造形しようとしたらハンドガンのはずなのにサブマシンガンのようなサイズになるんです。確認してもらったところ、スケールを間違えていたということで、結局、CADソフトで3Dデータを作り直しました。
だから、ディティールは技研オリジナルです。最終的に無可動の外観用、中折れ式のギミック確認用、サンプル製品と3種類を納品して、それらがアニメ版制作時に作画の参考になっています。ですから、ほかのキットのようにアニメのキャラクターが持っている銃を再現した銃なのではなく、アニメのキャラクターが持っている銃そのものだといっても良いと思います。いちおう技研の「トンプソン・コンテンダー」ホームページには「作画参考モデル」と明記していますが、このことを知ってか知らずかコスプレイヤーさんをはじめ好評いただいていて、現在もコンスタントに売れている人気製品です(版権契約は、2012年で終了予定)。
アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の銃も制作中
田中氏 アニメといえば、いまアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」に登場する「ドミネーター」の制作依頼をいただいていて、作業真っ最中なんです。まだ細かなことはいえないのですが、ギミック満載のガジェットなので、それをなるだけ再現できるようにと考えています。
―― なるほど。アマチュアがちょっと材料を買って作ってみたというところからスタートしてプロになり、「大日本技研」として法人化。版権元から制作依頼が来るまでになった、という経緯が良く分かりました。
田中氏 私の場合、IT起業の社長さんのように「起業したかった」とか「経営者になりたかった」とか、そういったことはありませんでした。フィギュアだとそれなりに実力があれば玩具メーカーから「このキャラクターを作ってもらえないか」とオファーがあったりします。しかし、銃をメインにしているとそういったことはありませんから、こちらからアプローチしつつ、版権取得のために法人化しなければならなかったというわけです。今、技研の認知度もある程度は上がって、アニメ作画参考用モデルのお話をいただけるようになったというのは本当にありがたいことだと思っています。
オリジナル製品も世界から注目
―― 大日本技研としては今後、どのような展開を考えているのでしょうか。会社の規模を大きくしたいと考えてらっしゃるのでしょうか?
田中氏 今はイベントなどで助っ人を呼ぶ以外はほぼすべて1人でやっていますが、商売の規模はこのぐらいがちょうど良いと思っています。あまり大きくなってしまうと、模型が作りたくてはじめたはずが打ち合わせや事務処理などで時間が奪われ、造形の時間がなくなってしまいます。管理職になりたいと思ったことは、いちどもないですし。
それにあまりに売れ行きが良いと大手企業の参入を招き、技研など軽く吹き飛ばされかねません。会社や製品の知名度が上がるのはうれしいし、認知されるのは良いのですが、某アジアの国で「雷鎚(いかづち)」の粗悪なコピー品を作られたのを知ったときは、どれも心血注ぎ込んだ作品ですので非常な怒りを感じました。ただ後で、そういった国では「自分の作品をいったいどこで見たんだろう?」という疑問は感じました。アメリカのSFドラマ「バトルスター・ギャラクティカ」制作チームから要請があって、プロップ(小道具)として提供したことはあるのですが……。最近はインターネットのおかげか、アメリカをはじめ各国から問い合わせがあります。輸送料金がかさんで双方の利益がなくなってしまうので、あまり小規模な取引だとお断りしますが、フィンランドのショップと取引したこともありますよ。
―― 日本だけでなく世界で知られるのは喜ばしいことですが、偽物は腹立たしいですよね。でも、「偽物が作られるようになったら『本物』だ」なんていわれかたもしますから、技研のオリジナル製品の完成度がそこまでの域に達しているということの証明になるのかもしれません。
後編では、田中氏も毎回参加しているという「ワンダーフェスティバル」参加の意義や当日版権と通年の版権の違いなど、実際にちょっとキャラクタービジネスに興味が出てきて「自分もやってみたい!」と思っている人向けの情報も聞いたのでお楽しみに。
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