子供から大人まで幅広い顧客層、タミヤの「ミニ四駆」:売れるのには理由がある(2/2 ページ)
タミヤの「ミニ四駆」といったらこの人、大会での実況などを務める「MCガッツ」氏に話をうかがった。子供から大人にまでファン層が広がっているという「ミニ四駆」ヒットの秘密に迫る。
男の子だけでない幅広い顧客層
―― 確かに、先日取材させていただいた公式大会「ミニ四駆 グランプリ2013東京大会」でも、男の子が友達同士で参加する以外に、ピクニック気分でイベントを楽しんでいるファミリーやミニ四駆デートというような風情(ふぜい)の若いカップル、仲間同士のグループで参加している社会人という、皆さんそれぞれの多様な参加形態でした。「ミニ四駆」の顧客層が、これだけ幅広いのはなぜなのでしょうか。特別な販売促進方法などを実施しているのでしょうか?
MCガッツ氏 それはもう、製品そのもの品質の高さと奥深さ、そして、長年にわたって開発とサービスに実直に取り組んできた成果だと思っています。
「ミニ四駆」は、2012年に30周年を迎えました。そんな長い歴史がある製品ですから、子供の頃に遊んていたというお客様が今はお父さんになってお子さんと楽しんだり、「ミニ四駆」から離れてしばらくブランクがあったけれど、職場の同僚と「ミニ四駆」の話題で盛り上がって、再びいっしょに遊びはじめたりということが、全国で同時多発的に起こっているんです。
また世代を超えてファン層が広がった大きなきっかけのひとつが、2005年に新開発の「ミニ四駆PRO」シリーズ発売と同時に、タミヤ主催の公式競技会に年齢制限のないクラスが導入されたことでした。成人して「ミニ四駆」からしばらく離れていた方たちが、それ以来じょじょに大会へ戻りはじめ、イベント動員数も「ミニ四駆」の売れ行きも着実に増え続けています。いまや都内で開催する公式競技会は、コンスタントに1000人を超える参加者が集まるビッグイベントとなっています。
ただ、いまでこそ1500人近い参加者が集まる公式大会も、2005年に初めて、年齢無制限のクラスを開催した頃は、参加者が100名にも満たない規模だったんですよ。
競合他社が存在しない理由
―― ところで、自動車の模型やミニカー、あるいはRCカーは数多くありますが、「ミニ四駆」に似た製品はこれといってないように思います。売れている製品にはつきものの、競合製品がないのはなぜなのでしょうか?
MCガッツ氏 「ミニ四駆」にも以前、模倣製品、類似製品が他社から発売されたことがあります。しかし、現在では目立った競合製品らしいものはありません。これは「ミニ四駆」だけに限ったことではありませんが、模型というものは発売してすぐに爆発的に売れるような性質の製品ではないということです。どういうことかというと、売りっぱなしではなく、製品そのもののアフターサービスはもちろん、それ以外にもコンテストや競技会を継続的に開催するなど、メーカーや販売店による地道な努力も必要とされるということです。
それで「ミニ四駆」は、模型メーカーとして古くからアフターサービスや販促イベントに力を注いでいるタミヤ独自の製品になったのだと思います。他社が一朝一夕にはマネができないことですし、マネをしようという企業があったとしても、「ちょっと儲かりそうだから」という参入の仕方では、すぐに音を上げて撤退となるんですね。もちろん、ここまで長く続けられたベースには、タミヤがこれまで培ってきた模型メーカーとしての技術力、開発力があるのはいうまでもありません。
大人になってから改めて「ミニ四駆」を手に取ったときに、子供向けの玩具では「懐かしいな」で終わってしまいます。しかし、大人になってからも熱中できるホビーとして成立しているのは、スケールモデルやRCモデルの開発で長年にわたって磨かれた技術によって、「ミニ四駆」のボディデザインや車体構造の精度などが、大人の目にも十分耐えられるクォリティになっているからなのだと思います。
ユーザーのアイディアによるパーツ開発も
―― 「ミニ四駆」がすばらしい製品なのは分かりましたし、タミヤ製品の品質に定評があるのも知っています。でも、何か今までお客様から不満の声はなかったのでしょうか?
MCガッツ氏 もちろん製品に関してでも、イベントに関してでも、細かな点ではこれまで何度も反省することはありました。それらを経験し、改良、改善を重ねたから「ミニ四駆」はここまで進化したともいえます。
グレードアップパーツの中には、期待していたほどの性能を発揮できなかったものもあります。また、我々が思いつかなかったようなパーツが、お客様のアイディアによる改造がもととなって開発され、製品化されたこともあります。
例えば、「ミニ四駆」の最も基本的なパーツのひとつであるガイドローラーは、洋服のボタンをバンパーに釘付けするという、当時の小学生のアイディアから生まれたのは有名なエピソードです。また近年のレースでは、マストアイテムともいえるマスダンパーも、ユーザーの工夫から生まれたパーツなんです。
やってみると奥が深い「ミニ四駆」
―― 最後に今後「ミニ四駆」がどうなっていくのか教えてください。かなり完成されたプロダクトだと思うのですが、似たり寄ったりの車種が増えていくのではないというところ、今後も進化していく、タミヤの底力を見せるぞ、というところを教えていただきたいのですが。
MCガッツ氏 「ミニ四駆」のキットは発売当初は600円で、30年が経過した現在でも中心となる価格帯は900円前後です。やはりこの、小学生でもお小遣いを貯めれば買える、お小遣いでグレードアップパーツを買って独自のカスタムができて自分だけの「ミニ四駆」になるという、これまで「ミニ四駆」が大事にしてきた部分はそのままに、より進化したシャーシやよりカッコイイボディ、走らせることやカスタマイズすることを誰でも手軽に楽しめる製品を開発していければと思っています。
「ミニ四駆」の改造やセッティングを通してエンジニアリングの醍醐味を、「ミニ四駆」レースを通してモータースポーツの喜びと興奮を、「ミニ四駆」イベントを通して仲間とのコミュニケーションの楽しさを、より多くの方に体験していただけたら僕らも嬉しいです。外から眺める以上に「ミニ四駆」は実際にやってみると奥が深いんです。ぜひ皆さんもやってみてください!
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