オードムーゲを食べたい → 食べてみた:食べるな(2/2 ページ)
「オードムーゲあります!」のアレです。
オードムーゲ、小林製薬だった
パッケージを見ると、どうやら六陽製薬という兵庫の会社が作っているらしい。話を聞こうと電話してみると、昨年3月に小林製薬の子会社になったそうで「一度小林製薬さんを通した方がいいかも」ということに。
一週間後、僕は小林製薬の東京オフィスに来ていた。小林製薬に事情を話したところ、ちょうど2月からパッケージや販路が変わるそうで、快く取材に応じてもらえることになった。
意外な名前の由来、「すずらん水」は間違い!?
「日本で最初に発売されたのは、約60年前の1953年。まだ戦争が終わって間もないころに、やけどや切り傷、擦り傷などに効く塗り薬として“ムーゲ”という名前で発売されました」(ブランドマネージャー・旭さん)
60年前! オードムーゲ、実はめちゃくちゃ歴史の長い商品だった。荒廃した戦後の日本で、それでも女性たちには美しくあってほしいという思いから、六陽製薬が発売したそうだ。
最初に発売された「ムーゲ」は、今よりもっと粘りのある軟膏(なんこう)タイプだった。今のようなサラッとしたタイプは、のちに商品バリエーションの1つとして追加されたもの。その際、「ムーゲ」の水タイプということで「オード(水)ムーゲ」という名前になったのだそうだ。ところで、そもそもの「ムーゲ」ってどういう意味なんですか?
「ものごとに差し障りがないという意味の『融通無碍(ゆうずうむげ)』という言葉があるんですが、その『無碍』から取ったそうです」
えええええ! ムーゲ、なんと日本語だった。誰だ「すずらん水」とか言ってたやつは! すいません私です。
「私も担当になるまではそっちが語源だと思っていました(笑)。フランス語ですずらんのことをmuge(ミュゲ)って言うんですよね」
名前を変えるのは「ガマンしました」
もう1つ気になるのはあの「オードムーゲあります!」ののぼりだ。確かにインパクトはあるものの、さすがにもうちょっと商品について説明があった方がいいんじゃないか。
「私たちも不安だったんですが、あれだけデカデカと名前が出ていると『なんだか分からないが良さそうだ』と思ってくれる人がけっこう多い。あの緑色がインパクトがある、という声も多かったですね」
うーむ、言われてみれば僕もこのパターンだ。でも、小林製薬と言ったら「のどぬ~るスプレー」や「熱さまシート」みたいな分かりやすい商品名がウリだ。「オードムーゲ」の名前を変えるつもりはなかった?
「そこは……ガマンしました(笑)。ただ、パッケージがシンプルすぎてどんな商品か分かりにくいという声もあったので、大事なアイコンは残しつつも、最低限スキンケア商品であることは分かるようにちょっとだけリニューアルしています」
パッケージ以外で変わるのは販売経路だ。今までは薬局、薬店のみの取り扱いだったが今後は小林製薬の販路を生かして、大手ドラッグストアなどでも販売していく。小林製薬の調査では、まだ全国的な認知度は2割くらい(それも「名前だけ知っている」レベル)。今後は小林製薬の強みを生かしつつ、もっともっと認知度を高めていきたいそうだ。
オードムーゲは「食べないでください」
ところで最後にこれだけは聞いておきたいんですけど、ええと、あの、オードムーゲ、食べても大丈夫ですか?(っていうかもうなめちゃったんですけど……)
「え、た、食べるんですか? オードムーゲを!?」
当然の反応である。電話越しに担当者の困惑がありありと伝わってくる。でもどうしても食べたいんです! 食い下がってはみたが、やっぱり小林製薬としては「食べないでください」というのが公式回答とのことだった。みなさんはくれぐれもなめたり食べたりしないように。
ちなみに成分自体は、のどぬ~るスプレーや一般的な内服薬などに配合されているものが中心なので、少しなめるくらいなら体に害はないそう。またアルコールも入っているので、お酒がダメな人は注意が必要とのことだった(※だからなめちゃダメだってば)。
見かけるたびに「一体なんだろう」と不思議に思っていた「オードムーゲ」。健康食品じゃなかったのも意外だったが、60年もの歴史があったことにもビックリした。
販路が小林製薬に変わったことで、もしかしたら今後、みなさんの街でも「オードムーゲあります!」ののぼりを見かけることがあるかもしれない。もし今後、身近に「オードムーゲってなんだろう?」と不思議がっているがいたら、やさしく「食べ物じゃないんだよ」と教えてあげてほしい。
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