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野外4つのスクリーンで映画を同時上映 日本初の“映画フェス”「夜空と交差する森の映画祭」へ行ってきた(3/3 ページ)

埼玉の景勝地・長瀞にスクリーンをいくつも設けて、映画三昧の一夜を明かす。フェス形式としては日本初の野外映画祭は、特別な鑑賞体験をもたらすか。

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目指すは「体験できる映画祭」

 代表の佐藤さんは映画フェスの今後について、時期などはまだまだ検討中だが、次回また開催することを早くも心に決めていた。そこには今の社会の需要が“体験”にあるという確信があるからだった。

「以前に結婚式でもらった引出物が、“体験”を選べるカタログだったんです。溶接・バンジージャンプ・フェルト作り・そば打ち……いろんなプランから気になる体験ができるというもので。欲しい情報がネットですぐ2、3秒で手に入る情報過多な社会で今、その時その場所に行かなきゃ手に入らない体験にみんなの意識が向いていると思います。あらゆるフェスやイベントが増えているのも同じことです」(佐藤さん)

代表・佐藤大輔さん(26歳)

 そこで目指しているのが「体験できる映画祭」だ。イメージとしてはディズニーランドで、アトラクションに乗る前から美術セットでエンターテイメントが始まっているように、上映前後にも映画の世界を五感で体験できるようにすること。

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「森林を舞台にした『ハンガー・ゲーム』を見終わった後も、観客たちは森のなか……といったように、今回の森の映画祭ではできるかぎり映画と現実がゆるやかにつなげるよう、上映作品とタイムテーブルを設計しました。今後の展望は、例えばホラー映画だけを流すステージをつくって、そこへ行くまでの道に十字架やコウモリがあったり、映画に出てきた食べ物をフードコートで食べれたりと、上映前後にも映画が続いているような体験を提供したいです」(佐藤さん)

岩畳が不気味さを演出するのを狙って、THE ROCK STAGEでは「Living with the Dead」(監督:富樫渉)というゾンビ映画も流していた

 初の映画フェスは、終了まで残り約30分というところで中止となった。午前4時ごろから降り始めた小雨と悪天候の予報を受けて、開催側が参加者の安全を考えて早めの閉場を決断したためだ。

 何十人ものスタッフたちがペンライトの誘導灯をつくり、会場外の屋内スペースへお客さんを避難させる。10分ほどで移動も完了、電車の始発を待つ人たちへブランケットや使い捨てカイロも配られていた。5時ごろ雨が本格的になってきたことも含め、開催側の判断と対応は素晴らしかった。「スタッフさんは足元悪いところを照らしてくれることがよくあって、最初から最後まで対応はよかったです」(38歳/男性)など、お客さんからの評価は総じて高かった。

誘導先の屋内スペース

 映画祭ではもっと早い時間に雨が降っても、この屋内スペースで映画を観られるよう用意をしていたそうだ。「もちろん野外で見られるのが一番ですが、こういうイベントをするなら何よりも人命を優先すべきだと思います」と、佐藤さん。こうした参加客への気配りは、きっと「体験できる映画祭」としてさらなるパワーアップを次の開催にもたらすことだろう。

黒木貴啓

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