ドイツはアニメイベント大国? 大型アニメコンベンション「AnimagiC(アニマジック)」に行ってきた
ドイツで3日間にわたって開催される大型アニメコンベンションをリポート。ドイツってアニメ関連のイベントがかなり多いんです。
ドイツ西部、旧西ドイツ時代の首都ボンで7月31日から8月2日の3日間、大型アニメコンベンション「AnimagiC(アニマジック)」が開催された。近隣諸国やドイツ各地からアニメ・漫画ファンが集まるイベントで、今年も1万5000枚のチケットが完売。その模様をお伝えする。
会場はボン中央駅から徒歩20分ほどのところにあるコンサート施設「ベートーベン・ホール」。メインのコンサートホール以外にも会議室や通路など館内すべてを使用し、企業ブースや制作者によるパネル、アニメ作品の上映ルーム、物販ブースが展開する。
アニマジックはアニメ専門誌「AnimaniA」(アニマニア)が主催する商業イベント。ファンが主体となって開催するアニメコンベンションとは異なり、企業ブースや最新作などを紹介する企業パネルが充実しているのが特徴。制作関係者と直接交流する機会があるためか、よりコアなファンに支持されているという。
同イベントでは、主催が雑誌編集を通して築いてきた日本サイドとのつながりを活用し、招待ゲストにも力を入れている。今年は、アニメ「スペース☆ダンディ」や「カウボーイビバップ」の渡辺信一郎監督、漫画「るろうに剣心」の作者・和月伸宏さんなどが招待されファンとの交流を楽しんだ。アニメ「Fate/stay night」の主題歌を歌う歌手の綾野ましろさんなども招待され歌声を披露し、イベントを盛り上げた。
ドイツで人気のマンガは?
アニマニア編集長でアニマジックの主催者でもあるトーマス・ヴェブラーさんによると、同イベントの参加希望者は供給が需要に追いつかない状態だという。施設の収容人数の都合でこれ以上規模を拡大できないのだそうだ。
マンガファンは増加傾向にあると話してくれたのは、ドイツ語翻訳マンガ最大手の出版社カールゼンの漫画部門のカイ=シュテフェン・シュヴァルツ編集長。ファンの数はフランスと比較すると少ないかもしれないが、増えるスピードはドイツのほうが優っているという。カールゼンでは最近、読者の成長にあわせて青年漫画の開拓にも力を入れている。現在ドイツで最も人気があるのは「進撃の巨人」(出版:カールゼン)と「東京喰種トーキョーグール」(出版:KAZÉ)。
アニメ「Fate/stay night」などを販売するpeppermint animeのブースで関係者に聞いたところ、ドイツには日本と同様にものを大事にする文化があるという。DVDのブックレットなど、こだわりをもって制作すると応えてくれるファンがいる。今後もさまざまなアニメを販売したいと語ってくれた。
ハンブルクでマンガ教室Manga Hamburgを運営するフィリップ・ペアバンドさんは、これ以上ファンが増えるかどうかは分からないが、イベントは増えるのではと予想する。ファンは交流の機会をもっと求めており、交流の場としてのイベントの需要はまだまだ拡大の余地がありそうだという。
ドイツは欧州のアニメイベント大国
欧州ではフランスの首都パリで開催される大型日本紹介イベント「Japan Expo(ジャパン・エキスポ)」がよく知られているが、ドイツのイベントは首都ベルリンだけに終わらない。文化、経済の中心はドイツ全土に分散化していて、イベントも各地で開催されている。
参加人数が1万人(のべ)を超える大型アニメコンベンションだけでも、8月開催のアニマジックのほか、以前紹介したコンニチ(9月開催、関連記事)があり、5月ごろには日本人が最も多く住むデュッセルドルフで開催されるDokomi(ドコミ)がある。
主要な各都市でも、中規模のアニメコンベンション(参加者1万人未満)が開催されている。4月にミュンヘンで開催されるAniMUC(アニムック)を筆頭に、6月はハンブルクのChiisaiCon(チイサイコン)やフランクフルトのCosday2(コスデイ)、10月にはベルリンのMMCが開催されるほか、コンニチの以前の開催地であるマンハイム近郊のルトヴィクスハーフェンでも5月にHanami(ハナミ)という数千人規模の中堅アニメコンベンションがある。
ドイツ東部でもファン同士の交流は活発だ。ドレスデンのDeDeCo(デデコ)は2月の開催。地元カメラマンと協力し複数の撮影ブースを用意するなど、コスプレイヤー向けの企画が充実しているのが特徴。近年では周辺の町ツヴィッカウで新たなイベントがスタートするなど、まだまだこの勢いは止みそうにない。
さらに、このようなアニメ・マンガファン向けに特化したアニメコンベンション以外にも、日本紹介イベントの「日本デー」(デュッセルドルフ)やコスプレイヤーが集まるフランクフルトやライプツィヒのブックフェアなど、とにかくイベントが多い。
アニメコンベンション自体はどこの国でも実施されているが、1万人を超える規模のイベントが国内数カ所で、しかも首都以外で開催される国は欧州でもドイツくらいだろう。
ドイツではコンニチや先に取り上げたアニメ・マラソン(関連記事)など、オフ会タイプのイベントが好まれる傾向がある。同じ趣味の友達と会う場としてのアニメコンベンションが求められているのだ。加えて人口が分散化していることから、こうした「大きなオフ会」が各地で行われている。ドイツでイベントが活発に開催されているのにはそうした背景があるのだろう。
仕事や旅行でドイツに来る際は、イベントが開催されてないか一度調べてみてはいかがだろうか。アニメ・マンガ文化を通した国際交流の機会は意外と多い。
アニマジックのコスプレイヤー
最後に、アニメファンのイベントといえばやはりコスプレ。アニマジックでは館内やホール前の芝生エリアにとどまらず、近くを流れるライン川沿いもコスプレを楽しむファンたちでにぎわっていた。
(写真撮影:ニコラス)
著者紹介
Kataho:ドイツ、フランクフルト在住のアニメ・ボカロ好き。日本文化を通じたドイツと日本の交流に興味があり、ドイツ各地の日本イベントに参加(Twitter:@sakaikataho)
関連記事
海外オタク見聞録:日本のKAWAIIに熱狂的なファン! ドイツのロリータファッション事情
海外にもファンがいるロリータファッション。ドイツのロリータファッションのファンや元カワイイ大使に話を聞きました。「年齢は関係ない」――アニメファンを「卒業」しないドイツの大人たちに会ってきた
ドイツ最古のアニメファンクラブが主催するイベント「アニメマラソン」。そこは30代や40代の「大人」なアニメファンが集まる落ち着いたイベントだった。巨大なオフ会? ドイツ最大のアニメ・漫画ファンイベント「Connichi」に行ってきた
ライブやグッズの販売、そしてアニメ・漫画ファンの友達に会える場所――2万5000人が集うドイツの「Connichi」を取材してきました。海外オタク見聞録:サウジアラビア人が描いた日本風マンガも! アラブのマンガ事情
戒律が厳しいイメージのあるアラブの国々。規制もありますが、そうした中でマンガやアニメを楽しんでいるファンも。海外オタク見聞録:クウェートのオタク事情は? うわさの“コミケの石油王”とアキバの休日してきた
「湾岸諸国で一番濃いオタク」国家・クウェートからコミケにやってきて石油王と騒がれたアクバルさんにインタビューしました。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.