レビュー

黒電話っぽいけどダイヤルがない……? レトロかわいい「磁石式電話機」にファンタジー脳が刺激される司書メイドの同人誌レビューノート

こんな面白い電話機があったとは。

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 表紙には、昭和のドラマに出てきそうな黒電話……でもダイヤルがない!? 今回紹介する同人誌に掲載されているのは全て磁石式電話機。一部の鉄道機関ではまだ現役で使用されているといいますが、こんな電話機、見た事ないです!

今回紹介する同人誌

「磁石式電話機(C88版)」 B5 50ページ 表紙・本文カラー


黒いダイヤル式電話かと思ったら、ん? ダイヤルがない? これらは全て磁石式電話機なんです

磁石の力でベルを鳴らす「磁石式電話機」

 ページを開くと、まずは磁石式電話機の説明があってほっとしました。磁石式電話機は有線の電話機。本体横に付いているハンドルを回すことで、磁石を利用した発電機を回転させて電気を起こし、ベルを鳴らすのだとか。はあー……こういった電話機があるものなんですねえ。古い映画とかで、壁についている箱に口を寄せてしゃべるのを見たことがありますが、こういう黒電話っぽいタイプも使われていたのですね。

 あらためて写真を見てみたら、確かにどれも小さなハンドルが付いています。これをぐるぐる回すのですね。……なんだか、胸躍る仕様ではありませんか? 電話という身近な機械を、人力でつなげるというひと手間が、なんだか生産的というか、「わざわざやってる感」がたまらないというか……。ページを眺めているだけでワクワクします!

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クラシカルな雰囲気そのままですね。送受話器の口元がちょっとおしゃれ

レトロかわいい、木箱入り携帯電話!

 そのワクワク感がますます高まるのが、携帯電話です。木箱ですよ、木箱に電話が入っています。私は携帯電話機(電12116-A)に一目ぼれしました。年季が入って飴色になった蓋を開ければ、黒い受話器が内蔵されており、電池ボックスも黒で統一されています。革のベルトもいい味を出していますね。

 ただし、現代の携帯電話と違い、利用はあくまで有線です。なので、線の近くまで行って、端子のある現場で線をつないで利用したとか。くーっ! 今となっては、「えっ、そんなことするの?」という工程がたまりません。この木箱を肩から提げた旅人は、野原の真ん中から、大切な人に電話をかける……みたいなファンタジーもありえるのでしょうか? あ、野原の真ん中に電話線が通っていれば、の話ですけど。

 いやいや、そんなファンタジー脳を刺激されるくらい、木箱×電話×あえて有線、のコラボレーションにぞくぞくします。おまけに「磁石式」という名前もレトロチックですばらしいし、ハンドルをぐるぐる回すという特有のアクションまで付いています。恐ろしくかわいいアイテムを発見してしまいました……!

木箱携帯電話! ちょっとこれ、いまでも担いで出掛けたくなりませんか?

15種の磁石式電話機が一堂に。充実のコレクションパンフレット

 掲載されているのは、いずれも作者さんが所蔵しているコレクションの一部。2015年3月に開催された「コミックマーケットスペシャル」では、実物を持ち込んで展示、実演を行われたのだそうです。その時のパンフレットとして作成されたものということで、一台一台の全体の見た目、受話器のアップや内部の状態などが、カラーで掲載されており、それぞれどう違うかが比較しやすいです。

 ひとつひとつ見ていくと、私は、携帯式電話機のケースの留め金に目がいきます。木箱は引っ掛けて留める形ですが、革のケースになると差し込む形に。木箱よりは軽量化が進んで、留め金も少し軽めのものになったのかしら、と想像したり。さらに進むと、革にファスナーになります。うーっ、この少しずつですが便利に進化して、カスタマイズされている感じがたまりませんねえ。

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ファスナー仕様で、見た目も近代っぽく。オフィス用品っぽい灰色の送受話器が収納されている様は、機能美すら感じる風格に

 前述の展示の際には「今も使っていますよ」と、作者さんに声をかける方もいらしたそうです。骨董品屋さんで珍重されるほどの過去の遺物ではなく、でも今は目にすることもない……そんな、時代の狭間の日用品だからこそ、情報が残りにくいものです。それを、こんなにたくさんの実物をそろえて、資料化されたこの本に拍手を送りたいです。

サークル情報

サークル名:東京アニメーション出版

参加予定イベント:コミックマーケットC91

今週のシャッツキステ


ノアちゃん、電話ごっこしましょうか? 糸電話はこうして線を引っ張って……あっ! 2人とも聞いてるだけだと、いつまでたってもなんにも聞こえないですよー。……はて、糸電話ってこういうのでしたっけ?

著者紹介


司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

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