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とうとう表紙に! 役立たずのお調子者脱獄王「ゴールデンカムイ」白石は結構すごい、はずあのキャラに花束を

アシリパさんにだけは迷惑かけるんじゃないぞ

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 マンガ「ゴールデンカムイ」で1巻からの常連にもかかわらず今まで表紙になっていなかった白石由竹がついに表紙になった! 作者の野田サトルさんも「白石がいつ表紙になるか」注目してほしいと言っていたのが、ついにやってきました。

やったー白石だ! かっこよ……くはないな(9巻表紙)

白石が出ると大体話がおかしくなる「ゴールデンカムイ」

 「ゴールデンカムイ」の物語の軸になるのは、血なまぐさいハードアクション。日露戦争後の北海道。囚人に彫られた、金塊の地図ではないかといわれる入れ墨を巡って、人々が殺し合い、人皮を剥ぎ、争奪戦を繰り広げます。

 アイヌ少女アシリパさん(リは小文字)が加わることで、地の利を生かした狩猟方法や、独特なアイヌ料理を紹介するグルメ漫画としての側面も完備。

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 入れ墨を巡る人たちは変人ぞろい。自分が最高の方法で死にたい殺人鬼や、人の皮を使った衣装作りが大好きな剥製(はくせい)師など、ビックリ人間大集合。

 そこに加えて白石が絡むと、一気に話がおかしな方向へ。移動や戦闘の際、主人公の元軍人・杉元&アシリパさんの邪魔をする。金・酒・オンナ・ギャンブル大好き。一応は杉元の命を救ったこともあるけれど、それを忘れるくらいのトラブルメーカー。物語を回す役目として、作者が「『サザエさん』でいうところのカツオ」というのに納得。

 この作品での愛され度合いは恐らく、トップレベル。ヒンナなアイヌ料理を再現したコラボレストラン「ゴールデンカムイ軒」でも度々ネタにされ、白石スタンプが作られるほど。

一日だけ開催された「ゴールデンカムイ軒」の地図。この顔である

スーパー脱獄囚・白石の超絶能力

 出てくるキャラはみんな、チート気味。特に「不死身」の杉元、不敗の柔道王・牛山、百発百中のスナイパー尾形、一刀必殺の土方あたりは、人間離れしている上に倫理のネジ数本抜けている。

 一方で白石も、桁外れの能力者です。通称脱獄王。入れられた監獄は全て脱獄している、という妖怪。身体中にあらゆる脱獄道具を隠し持っています。カミソリの刃を油紙に包んで、歯に馬の毛で結んで飲み込んでおく。肛門の中に隠しておく。

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銃やナイフは持っていない……というのがかえってくせ者(3巻P171)

 彼の身ぐるみをはぐと、本当にアメしかもってません。一応は食べる用。こんなおちゃらけている風ですが、彼の身体のどこに何があるか、わかったもんじゃない。針金やクギも、どこかに隠しています。

 彼の特異能力の一つが、身体の関節を外せること。頭さえ入れば、どんな穴でも入ってぬけだせる。百戦錬磨の杉元も、さすがにこれには驚きました。どんなにがんばって鉄格子を曲げても、こんな幅じゃ普通は抜け出せない。監獄にいた時も、あらゆる穴(トイレなど)を通って脱獄しています。この能力、諜報活動などに使ったら相当ヤバイ。

さすがに杉元もおびえる気持ち悪さ。軟体人間・白石(3巻12ページ)

 クマですらも柔道技で投げ飛ばす怪人・牛山に完全に関節を決められた時、白石は骨を外してにゅるりと逃げだしちゃう。攻撃力は皆無な白石ですが、近距離戦での脱出能力は極めて高いです。

昭和の脱獄王、白鳥由栄

 現実の日本の、1930年代。「昭和の脱獄王」と呼ばれたのが、白鳥由栄。関節を自由に外せる特殊体質と、気の遠くなる努力を重ねられる人物でした。

 秋田刑務所では、天窓のブリキ片でのこぎりを作り、それを絨毯のヒモでくくりつけて隠し、1日のうち看守が交代する10分だけ削っていった末に脱獄。青森では鍵穴に指を押し当てて穴を写し、針金一本を鍵穴に何度も差し込んで合鍵を作成し、脱獄。網走監獄では味噌汁で手錠と鉄格子を錆びさせ、ちょっとずつゆすって3カ月かけて外し、逃げたという。なお博物館 網走監獄では、ふんどし一丁で脱獄する彼の人形が飾られています。

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 吉村昭の小説「破獄」では彼をモデルにしたと思われる人物(名前は違います)の脱獄物語が描かれており、その超人っぷりを見ることができます。

こんな方法でカギ作ろうと普通は思わない(9巻71ページ)

 白石は白鳥の脱獄方法とは大分違う術で逃げていますが、負けず劣らずの珍妙っぷり&努力っぷり。粘土を看守のカギに押し当て、便せんに使う和紙とご飯粒と亜麻仁油を混ぜて合鍵を作成。執念です。

 なにより、「一度も失敗していない」「脱獄のためなら手段を厭わない」のが、怖い。加えて彼の身体能力は、ずばぬけて高い。走るスピードは速く、自由にあちこちを飛び回り、穴だって掘ってしまう。

パルクールみたいに飛び回る彼、人間離れした動きで町を走り回ります(2巻175ページ)

 彼の逃走シーンは「トムとジェリー」のごとく冗談っぽいですが、冷静に考えるとこの動きができる人間はかなり危険(ちなみに白鳥由栄は、一日120キロメートル走ることができたそうな)。戦場を走り抜けたおっかねー人たちですらも、彼の身体能力と知恵には一目置いており、気を張っています。監獄での「あんたが当直の時に脱獄しちゃうよ?」という、冗談みたいな白石の決めゼリフ。100%脱獄してきた彼だからこそのスゴみがある。

スーパー役立たず白石

 運動神経も知恵も人並み外れているのに、本当に役に立たないのが白石。だまっておとなしくする、ということができない。

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 例えば、アシリパさんと杉元がキツネを捕まえるためのワナを作った時。そのワナにかかっていたのは白石でした。なんなの、邪魔したいの。

アシリパさんもさすがに真顔(4巻150ページ)

 また、アシリパさんから借りたお金を競馬で全部スッたり、お酒を買ってしまったりと、あまりにも行動がクズ。ほんとよく殺されなかったもんです。アシリパさんに謝れ。

 大切な爆薬を台無しにしてしまう、ころんだはずみでアシリパさんの貴重な弓を折ってしまう、獲ったタヌキを逃してしまうなど、足手まといっぷりは近年まれに見るレベル。彼は脱獄の神様に魅入られていると同時に、厄神にたたられているんじゃないでしょうか。取りあえずアシリパさんにマジで謝れ。

 そこが彼の憎めない面であり、彼の不気味な部分です。

ネズミ男・白石

 このずうずうしさとだらしなさ、「ゲゲゲの鬼太郎」のネズミ男にも似ています。

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 なんだかんだいっても犯罪者。彼は今まで脱獄の際、自分のためなら人を見捨てるような行動を取ってきた。今までも杉元とともに行動しながら、別で動いている土方歳三に内通していました。どっちに対してもペコペコくっついてまわる調子のいい男。

 現時点では杉元にも土方にもとてもかなう感じではないので、どちらかの怒りを勝った瞬間殺されるでしょう。でもここまで「役立たず」なのに殺されていないということは、ちょっとやそっとじゃやられなさそう。「信頼」の逆で、「信頼されていないし気にもされていない」から、ひょうひょうと動けている。これってひょっとして演出なのかな?

 この後彼は、超重要な潜入ミッションのキモになっていきます。「ほんとうに残念なことだが…やはりこの男に頼るしか無い」「この役立たずが最重要人物になるとは……」心底信頼されていない。

どこまでまかせていいんだこいつ……(5巻186ページ)

 白石は今のところ、まだまだちゃらんぽらん。だからこそ、食えない人間。

 ……いや、やっぱりただのバカかも。洋画だとこういう人間がしれっと生き延びるものですが、果たして。

(C)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社

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