北海道の釣具屋になぜか金属バットが売られている。理由は釣ったサケを殴って殺すのに使うからだ――というローカルネタが、Twitterで道外の人々をざわつかせています。さすがは北の大地、釣り道具も何だかスケールが違う……!
話題のきっかけとなったのはTwitterユーザー・なおみちさん(@_nao_michi_)の投稿。釣具店で金属バットを売っている理由を店員に尋ねたところ「釣ったシャケをこれで殴って殺す」と返ってきたそうで、バットの写真とともに報告するや、2万回以上リツイートされるなど反響を呼びました。
本州勢からは「マジか」「チョコバットならぬ鮭バットの実在に震える」と、バットのシビアな使用法に驚きの声が。道民からは「え、道外に売ってないんですか?」「当たり前だと思ってた」と、実はローカルネタだったことにびっくりする反応があがっています。
商品名は「サーモンメタルバット」。これまた力のある言葉です。製造している大阪の釣具メーカー・ナカジマに取材したところ、確かに釣ったサケを殴り殺すための道具だそう。よく釣りでは魚の鮮度を保つため、釣った直後に延髄をナイフで切断して即死させる「締め」を行います。しかしサケは仕掛けで2、3匹同時で釣れるほか、針を引っ掛けたまま暴れたりするため、バットで頭をたたくほうが安全に効率よく殺せるとのことです。
ナカジマ以外に、北海道の問屋もオリジナルのサケたたき用の木製バットを作り、道内の釣具屋で販売しています。ナカジマも20年前から木製バットを製造していましたが、金属バットの業者とコネクションができたため、変わったものを作ってみようと今年初めて「サーモンメタルバット」を生産しました。珍しいのが功を奏し、1000本あった在庫も完売に近いといいます……ちゃんと需要があるのがすごい。
なおアイヌ文化にも、サケ・マスを獲った際に頭を「魚たたき棒」でたたく「イサパキクニ」という風習があります。石狩市公式サイトの「いしかり博物誌」によると、殺すだけでなく「サケ・マスの霊を彼らの世界に送り、再びこの世に再生し豊漁をもたらすことを願う」儀礼的な意味も持っているのだそう。明治時代の北海道を舞台にした漫画「ゴールデンカムイ」に、アザラシをたたき殺すシーンがあったな……!
ちなみに世界最古の魚たたき棒は石狩紅葉山49号遺跡から発見され、約4000年前のものとされています。北海道の地でサケをたたく姿が今も、木の棒を金属バットに変え続いていると思うと味わい深いものがあります。
(黒木貴啓)
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