「この詐欺野郎」――身に覚えのないメールが数百件 Amazon「マーケットプレイス詐欺」問題、今も続く“乗っ取られた側”の苦しみ
気付いたら自分のショップアカウントで、3万点もの身に覚えのない商品が出品されていたそうです。
Amazon.co.jp上で現在横行している「マーケットプレイス詐欺」問題(関連記事)。今もマーケットプレイスで大量に出品されている、これらの不正な商品は誰がどのようにして出品しているのか。編集部では「実際にショップアカウントを乗っ取られ、不正な商品を出品されてしまった人」に話をうかがうことができました。
今回取材したBさん(仮名)によれば、乗っ取られたアカウントは6~7年前に使っていたもので、26日夜になって突然、知らない電話番号から問い合わせが殺到するようになり、乗っ取りに気づいたとのこと。慌てて確認したところ、何者かが自分のアカウントを使って、3万件超もの商品を出品していたそうです。ネット上では今回の手口について、「使われていないアカウントを乗っ取って出品しているのでは」と推測する声が多くあがっていましたが、これが裏付けられた形となります。
Bさんは取材に対し、「電話が特につらかったです。事情を説明すると同情してくれる方も多かったのですが、こちらの状況を問わずかかってくるので、ほとんど仕事にならない状態でした」と語りました。また、Amazonにも対応を依頼しているもののいまだ返信がなく、今も大量の問い合わせメールに悩んでいるそうです。
―― Bさんがマーケットプレイスを利用していたのはいつごろでしたか。
Bさん:6~7年ほど前に商品をいくつか出品したことがありました。大々的に販売していたわけではなく、ヤフオクで中古商品を販売するような感覚で使っていました。
―― 最近は使っていなかった?
Bさん:はい、ここ数年はまったく使っていませんでした。
―― 乗っ取りに気づいたのはいつごろでしたか。
Bさん:昨日(26日)の19時すぎくらいに、Amazonから英文で「登録していたメールアドレスを変更しました」というメールが届いたんです。その時はよくある迷惑メールの類だと思って放置していたんですが、22時くらいになって、急に知らない番号から問い合わせの電話がかかってきて。
―― それで気が付いたと。
Bさん:私も最初は意味が分かりませんでした。「安すぎるけど大丈夫か」とか「本当に届くのか」などと聞かれて、調べてみたら自分のアカウントで3万点くらい、まったく見に覚えのない商品が出品されていて。
―― 3万点……! 出品されていたのはどんな商品でしたか。
Bさん:日用品や家電製品などさまざまです。シーツやプロジェクター、スマートウォッチとか。専門的な大工道具のようなものまでありました。
―― 乗っ取りに気付いた後はどうされましたか。
Bさん:何かしようとしても、パスワードが変更されてしまっているので、自分では触れないんです。でも、販売者情報のページには自分の名前や住所、電話番号がそのまま載ってしまっていて、問い合わせは自分のところに来てしまう。自分の個人情報が晒されてしまっているような状態です。
―― 問い合わせは現在までにどれくらい?
Bさん:26日の夜だけで電話が7~8件、夜中の1時くらいまでかかってきていました。翌朝になると今度は、Amazonに出品されているお店の方から「うちのオリジナル商品が勝手に出品されているがどういうことか」といった電話もあったり。問い合わせのメールもこれまでに600件以上来ています。
―― メールはどういった内容でしたか。
Bさん:ステータスが発送済みなのに返金中になっているのはなぜかとか、一言「この詐欺野郎」とだけ書いてあるようなものもありました。
―― 乗っ取りについて、Amazonには報告しましたか。
Bさん:昨日(26日)の深夜に2回、今日(27日)の午前中と昼過ぎにも2回ずつサポートセンターに電話したのですが、電話口では対応できないそうで、「メールでしか受け付けられない」「担当部署から後ほど連絡させます」と繰り返すばかりでした。今日(27日)のお昼ごろに見たところ、商品ページが一斉に削除されていたのは確認したのですが、Amazon側からはいまだに連絡がないため、Amazonが削除したのか、乗っ取り犯が削除したのかは分からない状態です。
―― なるほど、今はもう出品は取り下げられているんですね。
Bさん:それ以降電話がかかってくることはなくなりました。ただ、メールでは今も「商品ページが消えてるんだけど」といった問い合わせが届いていますし、自分の住所や電話番号が載っているページもそのままです。せめてここが編集できれば、購入してしまった人に対して注意喚起などもできるのですが……。
―― 個人情報が残ってしまっているのはつらいですね。
Bさん:あとは警察にも相談してきたのですが、実質的な金銭被害がないため被害届は出せないと。
―― 確かに。
Bさん:あとは精神的被害を受けたとか、民事で訴えるしかないと言われました。でも相手が分からないと裁判にはならないと思うよ、と。実際、電話やメール対応などに追われて、今日は仕事にならない状態だったのですが……。
―― 自分がこんな形で被害に遭うとは思っていましたか。
Bさん:まったく思っていませんでした。昔のアカウントをちゃんと凍結しておけば……と思ってももう遅いですが、気づいたら自分が詐欺の犯人に仕立て上げられていたような感覚です。
―― どこからメールアドレスやパスワードが流出したか心当たりはありますか。
Bさん:まったくないです。Twitterなどが乗っ取られたこともないですし、怪しいメールを開いたこともありませんでした。
―― 乗っ取りに気づいてから1日、どんなことがつらかったですか。
Bさん: 電話が特につらかったです。事情を説明すると同情してくれる方も多かったのですが、こちらの状況を問わずかかってくるので、ほとんど仕事にならない状態でした。メールは件名を見れば大体分かるので無視すればいいのですが、それでも「詐欺師」とか「だましてどうするつもりだ」とか書かれているのを見ると、どうやって返信すればいいのか考えてしまいます。
Bさんに話をうかがったのが27日の夜。あれから1日がたちましたが、いまだAmazonからBさんのもとに連絡はなく、今もBさんの住所や電話番号はストアページ上に掲載され続けています。Bさんからはその後、LINEに不審なアクセスの通知があったとの報告も。「携帯番号がAmazonのページ上に公表されたままなので、第三者がこれを使って不正アクセスを試みたのでは」(Bさん)
現在も猛威を振るっている「マーケットプレイス詐欺」問題。商品が届かなかった場合、Amazon側で代金を補償してくれる制度(Amazonマーケットプレイス保証)もありますが、氏名や住所といった個人情報の収集が目的ではないかと推測する声もあります。相場より不自然に安い出品を見かけても、うかつに注文しないよう注意が必要です。
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