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落書きレコードばかりを集めた「あなたの知らない『汚レコード』の世界展」開催中 第一人者が語る“汚レコード”の魅力とは

買い取りも行い、「面白いレコード」は査定価格がアップ!

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 東京・東陽町(江東区)の中古レコード店「ダウンタウンレコード」で、落書きレコードばかりが並ぶ「あなたの知らない『汚レコードの世界展』」が6月18日まで開催中です。入場は無料。

川中美幸もご覧の有様。書いてある歌詞はなぜか神野美伽の「男船」

 主催はダウンタウンレコードと、元新聞記者であり、“汚(お)レコード”コレクターとしても一部で有名な小島泰生さん。店内では期間中、小島さんと仲間の松野肇さんが集めた「汚レコード」約70点を展示しています。

「汚レコード」の名付け親でもある小島泰生さん。元ピチカート・ファイヴ、小西康陽さんの立ち上げたレーベル「コロムビア*レディメイド」の公式サイト内で、2008年から「汚レコード」として紹介し始めたのが最初

 小島さんは落書きされたレコードを「汚レコード」と名付けた張本人。実生活で色々あった9年前に、その気晴らしへ出かけたリサイクルショップで1つのレコードを見かけたのが、汚レコード道にハマるきっかけでした。

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 「そのレコードがこれです。高級なはずのレコードを、チラシの裏扱いにしているのが素晴らしい」(小島さん)

「ごはんお たいておく事」それをなぜレコードジャケットに書いた?

 見せてくれたのは、無造作にペンで「ごはんお たいておく事 母より」と書かれたジャケット。なぜよりによってレコードジャケットに書いたのか。そこまでして伝えなければならないことだったのか。見れば見るほど不思議な1枚です。

「山口城司 すぐに返せ!」

 「だいたい100円か50円で買ったものです。汚レコードはレコードショップにはそもそもないことが多く、あるのはリサイクルショップや蚤の市。雑に並んでいるレコードたちを、手を真っ黒にしながら探しました。大手より、ガラクタが並ぶ個人リサイクルショップの方が汚レコードに出会えます。そういうところでしっかり探せば、なんとか見つかりますよ」(小島さん)

なぜか前川清の名前が。まず本人自筆では無いだろう

 実は小島さん、汚レコードを処分しようと思っていたとか。

 「レコードを置く場所がなくなったため、家にあった数十箱分のレコードと一緒に汚レコードも処分しようと、ダウンタウンレコードさんへ買い取りに出しました。それを『どうせなら展示しないともったいない』と、展示会の開催を勧められたのです」(小島さん)

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舟木一夫が好きなあまり、歌詞の「君」を全て「舟木さん」に変えた

 そもそも、当時から高級品であったレコードのジャケットに落書きをするという行為自体が、小島さんは信じられないそう。

 「たとえいらないレコードだったとしても、当時レコードは高級品だったはず。そこへ手書きで字や絵を書くという感覚がいまだに分からないです(笑)」(小島さん)

「心臓マヒの為 急死!」

 例えば、表になぜか「52.8.17 心臓マヒの為急死!」と書かれたエルヴィス・プレスリーのレコード。

 「ファンだからこそ、死んだことがものすごくショックで書き留めざるを得なかったのでしょうが、こともあろうに、ジャケットにそのまま書くかと。でもその衝撃がそのまま字体に表れています。まさに「レコード」の意味どおり「記録」しているところが面白いですね」(小島さん)

こちらも記録系。「千代(千代の富士)優勝」と80年代式の丸文字で書いてある

 実は汚レコードはプレゼント品だったものが多いそう。「結婚祝いに奥さんが夫へプレゼントした手紙つきのレコード」など、それを売るか? というものがリサイクルショップによく売られているそうです。

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結婚記念日に郁子が夫へ送ったレコードは、売り払われた
リボンつきの贈答レコードも、あえなく売り払われた

 ちなみにこのような落書きが「CD」にされていたことは、小島さんは見たことがないとか。

 「アナログレコードという、紙のジャケットだからこそ『書きたい』という自然の欲求が生まれるんだと思います。対してCDのブックレットはケースの中に入っていますからね」(小島さん)

お店で使ったのだろうが、色々書き過ぎの一枚

 誰かに見せるためではなく「無意識に、書きたい」という気持ちがこもった、作為性のない産物だからこそ小島さんは惹かれるといいます。

 「何気なく書いた落書きにこそ、人の背景が表れます。そこには人間の面白さ・馬鹿さ・物悲しさまで表れていますね。」(小島さん)

相合傘も頻出パターンの一つ。時代を感じる

 この汚レコードの活動については、展示会会場のダウンタウンレコード店主の土田さんも、「マイナスだとされていたものがプラスになる。価値観の転換をもたらせるのでは」と意義を語っています。

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左下に、力強く「私」と書かれている

 「あなたの知らない『汚レコードの世界展』」の見どころを、小島さんは飾らずにこう語ります。

 「面白いと思って、ただただ集めただけのもの。苦笑していただければと思います。バカっぽさがいっぱいにあふれているので。」(小島さん)

 なおダウンタウンレコードでは、普通はマイナス査定となる汚レコードを通常通りの査定額で買い取り中。面白ければさらにプラス査定となる場合もあるとか。

 6月10日には、元ピチカート・ファイヴの小西康陽さんと汚レコード仲間の松野肇さんをゲストに招き、小島さんが汚レコードの全てを語るトークショーも開催されます。先着20人までなので、興味のある方はお早めに。

辰井裕紀

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