コラム

急な大雨「ゲリラ豪雨」の予測はできる? 災害や事故に遭わないために知っておきたいこと

専門家の方に聞いてみました。

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 突然の雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」という言葉がここ数年で一般的になりました。急な雨といえば「にわか雨」や夏の風情を感じる「夕立」といった言葉もありますが、それらと大きく違うのは、大きな人的被害を引き起こすレベルの雨量という点です。

 気象庁では局地的大雨や集中豪雨といった言葉で表されるように、短時間(時には数時間)で狭い範囲に数十ミリ~百ミリ前後と強く降るのが特徴で、河川や水路が増水することによる事故や土砂災害、さらに激しい雷にも注意が必要になります。

 そんな厄介というだけではすまないゲリラ豪雨について、降りやすい季節や天候、さらに前兆があるのかなど、気象情報を専門に扱うウェザーニューズ広報の須田浩子さんに気になるところを聞いてみました。

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今回お話を聞いた人

ウェザーニューズ広報

須田 浩子(すだ ひろこ)さん

ゲリラ豪雨が発生してしまうのはなぜ?

――ゲリラ豪雨はなぜ起きるのでしょうか。

須田さん:雨雲を作るもとのエネルギーというのが熱(暑さ)湿度です。簡単にいえば、暑くて湿度が高いほど雨雲が発達しやすく、特に夏季の高気圧は、暑さとたっぷりの湿度をもたらすため、基本的に夏はゲリラ豪雨が起きやすい条件になります。

 ゲリラ豪雨という言い方をしなくても、「夕立」という言葉は昔からありますよね。午後や夕方になると急にモクモクと雲が駆け上がって雨が降るといった現象は、こうした原因で発生します。

――なるほど、夏の午後は要注意なのですね。

須田さん:そしてそれにプラスして酷くなる、災害をもたらすレベルになるときというのは、例えば上空に寒気が来ているとき。地上は暑いのに上空は冷たいといったときはお互いの空気が混ざろうとし、それによって(大気が)不安定になり激しい現象になる――というのが主にゲリラ豪雨をもたらしています。

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昔から発生していたのか?

――ゲリラ豪雨というのは昔はなかったのでしょうか。

須田さん:そんなこともなくて、昔からあったと思います。ただ、現代はヒートアイランドといわれるように、昔であれば土が熱を吸収していてくれていたところが、コンクリートになることによって都市が熱を持ったままになってしまっています。

 これによって、「昼は熱くても夜は冷めてくる」だったはずのものが、「夜になっても冷めない」ということも起きるわけで、さらに夜に冷めないと翌日の朝もベースが高いところから始まってしまうのでまた高くなり……というようなことが起こり得ます。するとその都市熱が、先ほど話したように雨雲を作る、積乱雲を強化してしまうことにつながります。

 そういったことが何十年という長い周期であって、さらに気象的なところでいうと海面温度が上がってきているというのも、長いスパンで見られます。こうした変化もあり、現在は「ゲリラ豪雨」という言葉が生まれてしまうくらい、より人的被害をもたらすような激しい現象が起こりやすくなっているといえるでしょう。

「非常に激しい雨」とされる1時間に50ミリ~80ミリ未満の雨の発生回数は年々増加しています(気象庁より)

ゲリラ豪雨はいつ起こりやすいのか?

――発生しやすい天候、または季節によって違いはあるのでしょうか。

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須田さん:先ほどお話ししたように暑い時期に発生しやすいので、季節としては夏が多くなります。一番多いのは7月、8月。また初夏は意外と気温が高く、冬春の名残で上空の寒気も強いようなときがあるので、5月でも激しい現象が発生することもあります。

 状態としては、地上と上空の気温の差が大きいときが起こりやすく、そのようなときには夏以外でも激しい雨となることがあります。ほかにも、人間には感じ取ることができませんが、上空、すごく空の高いところに冷たい空気が流れ込んでいるときというのは起こりやすいです。

突発的な雨を予測できるのか?

――発生前の予兆などはあるのでしょうか。

須田さん:これはウェザーニュースが得意としているところで、一般の方と一緒に空を見守ってゲリラ豪雨を予測しようという取り組みを10年くらいやっています。

 よく「雨雲レーダー」を使われる方もいらっしゃると思うんですけど、あれは実際に起きてしまったものを実況で映しているんですね。上空2000メールの高さの状態なので、そこに映っているということはすでに起こってしまっているわけですから、前兆ではない。

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――確認しているだけ?

須田さん:そうなんです。でも例えば自分のいる場所の隣に雨雲があったら、雨雲レーダーを見てこの後「こっちにくるかもな」といった使い方はもちろんできます。

 では、それが起きる前にどういう兆候があるかというと、まず空を見たときに入道雲ってありますよね。青空をバックに白いモクモクした雲っていう。

――夏の風物詩ですね。

大空に広がって夏を感じさせる入道雲

須田さん:あれって実は、あのモクモクした白い雲が高ければ高いほど雲が発達しているということなので、その下では雷雨になっている状態なんです。

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 雲ってよく見ると白かったり黒かったりして、グレーの雲や黒い雲になればなるほど直感的に怪しいな、怖いなという気がすると思うんですが、やはり黒い雲が近づいてきたらそれはゲリラ豪雨のサインになります。

 遠くから見ると白いのですが、真下からだと黒く見えるので、黒い雲が近づいて見えたら気をつけた方が良いです。

須田さん:ゲリラ豪雨のサインとしてもう1つあるのが、夏で暑いはずなのになぜかヒンヤリした空気を感じるとき。雷雲が近づいてきているとそういった空気を感じることがあります。

 なぜかというと、雲は上昇気流でどんどん発達するんですが、上に昇ったらどこかに降りてこないといけないんです。そしてそこから吹き降りてくる空気というのが冷たいんですね。

 だから、「暑いはずなのにちょっとヒンヤリしてきたな」「空が黒いな」と思ったら雨雲レーダーで確認してもらうと、そういうときは近くの雲が大体真っ赤や黄色(降水量が多め)だったりします。

――なるほど。予測のための前兆としてはそのときの温度の体感と、雲の見た目があるんですね。

須田さん:はい。五感をフル活用していただきたいです。またそうなってくると今度は雷鳴が聞こえてくるので、聴覚でも感じ取ることができます。

 ちなみに雷は、音が聞こえたらもう次は自分のところに落ちてくる可能性があって、10~15キロくらい離れたところで落ちていたら今度は自分に落ちてもおかしくないそうです。例えば県が違っていても、千葉で落ちたものが次は東京で発生してもおかしくないので、やっぱり雷鳴が聞こえたら注意しましょう。

それでも予測が難しいゲリラ雷雨。どうしても遭ってしまったときは?

――実際にゲリラ豪雨に遭ってしまったときの対策はあるのでしょうか。

須田さん:なんとかして屋内に避難するしかないです。あとは、もし海や草原みたいなところで雷鳴が聞こえたら、人間が避雷針になってしまうので「すぐに逃げろ」ですね。木の近くも避けましょう。

 雨による災害ももちろん怖いです。たまに冠水した道路を走る車がいますが、車のタイヤが半分くらい水につかるとエンジンに水が入って車が止まってしまいます。

 そうならないためにも、アンダーパス部の道路(路面の高さが前後と比べて低くなっている)を知っておいて、その辺りは通らないで帰る。あるいは、どうしても通らないと帰れない場合、そこが冠水していないかゲリラ豪雨発生時に事前に確認するとか、どちらにしても大雨時に水没するような身の回りの場所を知っておくことも重要だと思います。

道路冠水注意箇所マップ(国土交通省より)

 7月や8月の暑い時期に発生しやすいゲリラ豪雨。それは多くの人にとって夏休み時期であり、子どもでも大人でも外で遊んだり、外出しているときに起きる可能性が高いということでもあります。

 また気象庁の情報で分かるように、徐々に大雨の年間発生回数が増えていることからも、「ゲリラ豪雨」に関する知識やいざというときの対応策など、考えておく必要性が今後さらに高まっていきそうです。

 災害を回避するために重要となる予測に関しては、須田さんに伺った五感を使った方法のほか、ウェザーニュースが行っている人間の目を活用した予測のためのコミュニティ「ゲリラ雷雨防衛隊」に参加することでもゲリラ豪雨の予報を受け取れます。

 こちらはレーダーに映る前の雲を一般ユーザーみんなでキャッチして、それを予測に活用してアラートという形で登録者に警戒を促すもの。こちらはスマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」(iOS/Android)の「ゲリラ雷雨 Ch.」から確認できます。

(宮原れい)

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