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「牛乳は超危険!」って本当? Google検索最上位に出てくる記事を検証してみた

「牛乳」と検索してびっくり。

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 「牛乳」とGoogle検索すると、「牛乳は超危険!」と主張する記事が一番上にヒットすると話題です。この内容は本当なのか、ひとつひとつ検証してみました。

9月13日11時時点での検索結果

 牛乳といえば健康に良いというイメージが強いですが、しばしば「むしろ体に悪い」という意見も耳にします。体に悪いとする意見(「牛乳有害説」「アンチミルク」と言ったりします)には一見信憑性がありそうなものから、陰謀論じみた眉唾なものまでいろいろです。この一番上にヒットする記事はどうなのでしょうか。

 検索で最上位に表示されていたのは、サイゾーが運営するネット媒体「ビジネスジャーナル」の記事。当該記事の主張は、記事のタイトルにもある牛乳が「がん」「糖尿病」「脳梗塞」「心筋梗塞」を引き起こす可能性が高いというものです。これらの主張の妥当性について、個別に見ていきましょう。

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牛乳を飲むとがんになる?

 ビジネスジャーナルによると牛乳ががんを引き起こすのは、効率の良い搾乳のため常に妊娠状態にあるのが最大の要因。妊娠中の哺乳類は胎児を守るためエストロゲンなどの女性ホルモンの値が高くなり、これが牛乳の中に混じり、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなどを引き起こす可能性が高くなると主張しています。これは本当なのでしょうか。

 食品安全委員会の調査によると、確かに市販の牛乳から微量のエストロン(エストロゲンの一種)が計測されています。ではこれはガンを引き起こすほどの数値なのでしょうか。

食品安全委員会の調査によると、確かに牛乳にエストロンが含まれている

 この数値に対し、業界団体の「Jミルク」が参考になるデータを公開しています。Jミルクによると、牛乳500mlに含まれるエストロンをエストラジオール(これもエストロゲンの一種)に換算すると、血中濃度の上昇量は11.9pg/mL。男性の正常範囲が20~60pg/ml、女性の基準値の範囲が10~366pg/mlであることを考慮すると、女性ホルモンは「まったく心配するレベルの量ではありません」と結論づけています。

エストラジオールの正常値・基準値(Jミルク公式サイトより

 ただし近年の「世界がん研究基金(WCRF)」による研究では、牛乳が前立腺がんのリスクを上昇させる可能性があるとの報告もされています。またその一方で、牛乳には大腸がんのリスクを低減する可能性が高いことも分かってきており、国立がん研究センターはメリットとデメリットを考慮して「総合的な判断が必要」であると呼びかけています。

牛乳は「糖尿病」「脳梗塞」「心筋梗塞」を引き起こす?

 牛乳が「糖尿病」「脳梗塞」「心筋梗塞」を引き起こすという主張についてはどうでしょうか。ビジネスジャーナルの記事では牛乳の問題点として、牛乳に含まれる脂肪の主体が飽和脂肪酸である点を上げています。飽和脂肪酸を過剰に摂取すると、血液の粘度が上がり、血液循環が悪くなる。これにより、脳梗塞や心筋梗塞が引き起こされ、さらに血中コレステロールや中性脂肪酸が増えて糖尿病や肥満といった生活習慣病につながるリスクを指摘しています。事実なら飲むのを躊躇してしまうところですが、これは本当なのでしょうか。

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 Jミルクは牛乳の脂肪の働きについて、「一見、飽和脂肪酸が多い」としつつも、炭素数が12以下の短・中鎖の脂肪酸が多い点を指摘しています。短・中鎖の脂肪酸は体に吸収されやすく、燃焼もされやすいのが特徴で、これは「血液循環を悪化させる」というビジネスジャーナル記事の前提を揺るがすものです。

 さらに複数のコホート研究で牛乳・乳製品摂取と循環器疾患死亡と糖尿病リスクについて統計的な有意差は無い、あるいはリスクを低下させる傾向があるとの結果が出ています。

コホート研究はエビデンス(証拠性)が高いとされている(Jミルク メディアミルクセミナーニュースレターより

見比べて、科学的な裏付けのある情報を

 ねとらぼ編集部では、日本大学ミルク科学研究室の教員にも話を聞きました。教員は牛乳の脂肪が血液循環に悪影響を与えるという意見に対し「それを言い出すと牛乳脂肪以外も含め、脂肪が全て危ないことになってしまいます。多くの食品を否定することになるのではないでしょうか」と指摘。また牛乳に含まれる女性ホルモンががんを引き起こすかもしれない点については「証明するためには50年スパンの疫学的調査や、大人数を動員した上で食事制限を行い、統計学的な集計が不可欠ですが、とても難しいでしょう」と、慎重に考えていく必要性を強調しました。

 またJミルクに対しても「牛乳有害説」について、これまでどのような対応をしてきたのか聞きました。Jミルクの広報担当者は「そうした(牛乳有害説的な)意見が目立つようになってきたのは10年ほど前から。ある外科医の先生が牛乳は体に悪いとするベストセラー本を出して、その際は公開質問状という形でやりとりをしたこともありました。ただし基本的には発信者に対して直接反論をするというよりも、『こういうウワサがあるけど、実際の所どうなの?』という形で、サイト上で情報発信を続けています。大学の先生にも監修いただきながら、科学的なエビデンスに基いたコンテンツとして出しているので、そういう裏付けのある情報を元に判断してもらいたいです」と話していました。


 Googleなどの検索エンジンでは、必ずしも正確な情報を最初に提示してくれるとは限りません。「エストロゲン」「飽和脂肪酸」といった聞き慣れない専門用語が並ぶといかにもそれっぽく思えて納得してしまいそうになります。しかしそんなときこそ本当に信用できる内容なのか、複数の情報源を参考にしながら判断していくことが必要になります。

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