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貧困世帯の高校受験生に「塾代」を支援するプロジェクト登場 まずは渋谷区から

全国的な“塾代格差”からの“機会格差”を埋める足掛かりになるかも。

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 貧困世帯の中学3年生に学習塾で利用できるクーポンを無償提供するプロジェクト「スタディクーポン・イニシアティブ」を、10月12日に公共社団法人チャンス・フォー・チルドレンがNPO法人キズキと一緒に発足しました。第1弾として東京・渋谷区と協働し、2018年4月から同区内の高校受験生へ提供できるよう、クラウドファンディングサイト「GoodMorning」で寄付を募っています

スタディクーポン・イニシアティブ代表・今井悠介さん(左)と、一緒に立ち上げたNPO法人キズキの安田祐輔代表(右)(チャンス・フォー・チルドレン公式ブログより

 親の所得が低いため塾や家庭教師といった学校外教育が受けられず、子どもの将来に機会格差が生まれるのを減らすための取り組み。大阪・大阪市など自治体が塾代を支援する事業はいくつかありますが、全国にはまだほとんど広がっていません。一方で民間団体が支援をしようにも、所得など世帯の個人情報を自治体から受け取れないため、しかるべき受験生へリーチするのが困難な状況にありました。

所得に応じた学校外教育支出

 「スタディクーポン・イニシアティブ」では、クラウドファンディングで集まった寄付金から事業運営にかかる最低限の費用を除いた分を、「スタディクーポン」として貧困世帯の中学3年生に交付します。クーポンは賛同する教育事業者でお金の代わりに使用可能。すでに栄光(栄光ゼミナール)、Z会エデュース(Z会)、トライグループ(家庭教師のトライ)、ベネッセといった塾や家庭教師、通信教育業者が賛同しています。

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 寄付は5000円からで、目安として5000円で最低限1人1週間、30万円で1人1年間、300万円で10人が1年間塾に通える計算。目標金額の1000万円に達した場合、約33人が1年間スタディクーポンで塾に通えます。募集開始日となる12日時点で、すでに約5分の1となる170万円以上が集まっています。

 貧困世帯の基準は、第1弾では渋谷区の生活保護や就学援助を受ける所得基準額を参考にしつつ、集まった寄付額に応じて設定していくとのこと。特定の個人にひもづけるため、クーポンが違う子どもに渡ったり換金されたりするリスクはありません。

 渋谷区は資金面では援助しませんが、クーポンがしかるべき学生へ届くよう、学校や教育委員会、生活保護のワーカーなどを通してプロジェクトの存在を貧困世帯へ周知していきます。長谷部健区長は12日の記者会見で「単独の企業や行政ではなかなか手が届かない援助を、企業やNPOと協働でやっていけるのはとても良いこと」とコメントしました。

 プロジェクトでは今回の成果をもとに、2019年度以降はふるさと納税の仕組みを利用するなど渋谷区の教育政策として本格導入できないか検討を打診する予定。全国の自治体への展開、政策への反映も訴えていく一方、すでに関心のある他地域とは話し合いを進めているといいます。

 なお、大阪市では2013年12月から中学生約5割が対象になるよう所得制限を設け、学校外教育にかかる費用を月額1万円まで助成する事業を実施。千葉・南房総市では2016年4月から小学5・6年生の保護者へ、所得額に応じて年額8万4000円まで学校外教育費を助成しています。「スタディクーポン・イニシアティブ」はこうした自治体による学校外教育支援を、民間側から押し広げていく足掛かりにもなるかもしれません。

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黒木貴啓

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