「探偵の世界、完全実力主義ですよ」 探偵ってどんな仕事してるの? 調査料の相場から尾行の仕方まで、ホントのところを聞いてきた(前編)(2/2 ページ)
調査料、1週間で数百万……?
ウチは探偵学校を卒業していることが採用条件。1年間、週4日、土日もトレーニング……それを1年間続けて、なおかつ試験に合格しないとダメ。
――そこで初めてスタートラインに立てると。
入社後3カ月は試用期間です。適性がないと判断したら、他の仕事のほうがいいよって勧めます。「ここなら採用してくれるかも」と、レベルの低い探偵社を紹介することもあります。レベルが低いところは離職率も高いから、常に募集していますし。
――適性ってどんなところに現れます? 学歴で線引きはできなさそうなイメージですが。
学歴ではないですね。中卒でうまい子もいれば、有名私大卒でモノにならない子も。うまい人間に共通するのは、「要領のよさ」です。いわれたことを素早く理解して、さっと動けるか。じっくり考えてからでないと行動できない人は向いてない。
――頭の回転の速さが重要。
瞬時の判断ができるかどうか、判断力と決断力がないとダメ。数秒思考が遅れたら乗るべき電車を逃すこともあるので。
――なるほど。
完全な実力主義の世界
もう1つ。調査には責任者がいて、その人が調査員を選んでアサインするんですが、それに選ばれない子には戦力外通告が出ます。
――えっ。社員なのに?
社員ではあるけど、そういうシビアな契約になってます。1カ月稼働が低かったらクビ。基本、働いた分しか稼ぎにならないので、稼働日数が低すぎると食っていけなくなります。
――監督に使われないとプレイできないプロスポーツ選手のようなもんですかね。
そうですね。採用面接で若い子たちは「人の役に立ちたい」ってよく言うんですけど。
――よく聞くセリフだ。
でも実際は職責を果たさない若者が多い。えらそうなことを言っていても、結局中身が伴わない人間を責任者は選びません。責任者に嫌われたらアウトです。なので、人に好かれる性格、コミュニケーションスキルも必要。
――体力もないと務まりませんよね。
50歳をすぎるとハードな現場はきついかな。年齢のいった方は嘱託的な位置付けで、ヘルプでスポット依頼するとか。探偵の世界は完全な実力世界です。
探偵業にもIT化の波
――秘密の7つ道具とかあるんですか?
ないです。変装もほぼしない。せいぜい伊達(だて)メガネくらい。
――意外です……もっとこう、付け髭とかしてるのかと。
女性調査員はウィッグを使うこともありますね。ふだんは短髪にしておいて、長髪に変身するとか。あと、化粧で雰囲気を変える人もいます。男性は上着を替えたり、眼鏡の有無くらい。変身道具がいっぱいあるわけではないです。
――使用する機材などはどうですか。
昔はぼくらもたくさん機材を抱えていました。ビデオカメラも三脚もデカくって……。カバンにギュウギュウに詰め込むので、よくカバンが壊れました。探偵同士で「お前の荷物何キロ?」「オレ20キロ!(笑)」って重さを競うのは“あるある”です。
――最近は小型化が進んでいるので、助かっているのでは?
今のカメラは性能が高いし、写真も動画も1台で撮影できる。テクノロジーでかなりラクになりました。軽量化が進んだおかげで、ポケットにスマホ、カメラ、予備のメディアとバッテリーだけでカバンすら持たない調査員もいますから。あと、Suicaなどの交通系カードですね。
――もっとこう、われわれが知り得ない珍しいガジェットとかは……。
ないです(笑)。
尾行がバレたことはある?
――尾行の仕方を知りたいです。
標準的なのは「ゴム尾行」と呼ばれる方法。環境によって、対象者との距離感を1~100メートルの幅で伸び縮みさせるんです。例えば、人気のない夜道は100メートルはあけて、あまり近づかない。振り向かれてもこちらが認識されないレベルです。
――1メートルというのは?
渋谷のスクランブル交差点とかでは、対象者の真後ろまで寄ります。でないと、雑踏に紛れて見失ってしまうから。
――相手にバレることってあります? 「誰だ! 言え、誰の差し金だ!」とかいきなり胸ぐらをつかまれるとか。
尾行がバレたことは……15年で3~4回かな。めったにないです。それよりも、自然に人混みに紛れて見失うことを恐れます。
――対象者って、気付かないものなんですね……。
真横にピタッといても気付かれませんよ。もちろん、こちらも相手の視野に入らない、死角に立つなどして意識されない工夫はします。
――だとしても、何時間も追っかけたら、「あれ? この人、2時間前にも見たぞ……変だな……」って疑われません?
尾行すると言っても、その場を離れることもあります。建物の出入り口が1つしかなければ、そこを押さえておけば問題ない。隠しカメラを据えてその場を離れることもします。Wi-Fiで飛ばせば外に停めた車の中から観察できますし。
――探偵業の世界もIT化が進んでいる……なるほど、それならバレない。
知らない話が次々と出てくる「探偵のお仕事」。後編では、「浮気が絶対にバレる理由」から「いじめ調査だけは無料」にしている理由まで、引き続きお話を伺って行きます。
中山順司(なかやま・じゅんじ)
ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。freee株式会社勤務&経営ハッカー編集長。ブログ「サイクルガジェット」運営。
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