クロネコヤマトのヤマトグループがベーカリーとカフェをやってるって知ってた? 猫の肉球型クリスマスケーキで話題のスワンを取材
アレルギー対応のクリスマスケーキやオリジナルパンなどで人気。
東京・銀座や赤坂で人気のパン屋さん「スワンベーカリー」。その運営を行っているのは「クロネコヤマトの宅急便」で知られるヤマトグループの会社なんです。なぜヤマトグループが宅急便以外の事業を展開しているのか、担当者にお話を聞きました。
なぜヤマトグループがベーカリーを経営しているの?
イタリア栗のマロンパイにチリソースが決め手のパニーニ、オリジナル商品のHappyイチゴアンパンO.T.など、多くの種類のパンが並ぶスワンベーカリー。香ばしい匂いが漂う店内は、オフィス街で働く人たちで賑わっています。また最近はネット注文できるクリスマスケーキがネコの肉球を模しているということでも話題になっています。
このお店を運営しているのは、ヤマトホールディングスの特例子会社「スワン」。ヤマト運輸(現:ヤマトホールディングス)の社長であった小倉昌男氏が心身に障がいのある人の「自立」と「社会参加」を支援することを目的として1993年に設立した「ヤマト福祉財団」の事業の一環で設立された会社です。スワンでマネージャーを務める藤野広一さんにお話をうかがいました。
――スワンベーカリーが誕生したきっかけを教えてください。
藤野:小倉昌男がヤマト運輸(現:ヤマトホールディングス)での役職を退いたのち、個人資産を寄付して作ったヤマト福祉財団では当初、障がい者に対しての助成活動などを行っていました。そして財団設立2年目の1995年に阪神淡路大震災が発生。ヤマト運輸の事業所の被害状況を確認する現地視察を行った際、障がい者が働く「作業所」を視察できる機会があり、そこで働く方のお給料が月1万円にも満たないという現状を知りました。
――月給が1万円だったのですか!?
藤野:当時はそうだったようです。お給料があまりにも安い背景には作業所の経営力の低さがあるということで、まずは経営者向けの「パワーアップセミナー」を1996年から全国で開催しました。そしてこの活動の中で自社としても「月給10万円以上を支払うことを実践する焼き立てのおいしいパンのお店」を開こうということになり、1998年に1号店となる銀座店をオープンしました。
――なぜあえて“パン屋さん”を開くことにしたのでしょうか。
藤野:「アンデルセン」「リトルマーメイド」を全国展開しているベーカリーチェーン大手・タカキベーカリーアンデルセングループの高木誠一さん(現・アンデルセン・パン生活文化研究所取締役社主。これまで同社では社長などを歴任)と社内報で対談する機会があり、その際に、「障がい者でも活躍できる仕事を探している」と相談したことがきっかけです。アンデルセングループはパン生地の冷凍技術を開発し、1972年に特許を取得した会社なのですが、創業者の高木俊介さんが「いつでも必要なときに焼き立てのパンを提供できるようにすることで、パン文化を根付かせたい」とすぐに特許技術を公開したことでも知られていて、「この冷凍生地を使えば障がい者でもおいしいパンが焼けるのでは」とご協力をいただくことになりました。
――スワン、という名称の由来を教えてください。
藤野:アンデルセン童話の「みにくいアヒルの子」から来ているようです。他者と違う姿のヒナが実は美しい白鳥だったというお話に由来していると思われます。
――勤務している人はどういった方が多いのでしょうか。
藤野:スワンでは知的障がい者の方をメインに雇用しています。身体障がい者の方と比べ、知的障がい者の場合、働く能力があっても働ける場所が少ないということがありますので。基本的にはハローワークなどから一般募集し、面接を経て採用を検討しています。直営店の場合は19歳から50歳ぐらいまでの人が働いていて加盟店を含めて350人以上います。直営店では、年に一度は従業員みんなでバーベキューなどに出かけたりして従業員同士も仲が良いです。
――採用の面接ではどういうところを見ているのでしょうか。
藤野:障がい者の場合は、「本人に働く気があるか」「1人で通勤できるか」「1人で身の回りの世話ができるか」「人の悪口を言ったりしないか」「あいさつができるか」など基本的なことを重視しています。そのうえで本人の特性を見て配属先を決めています。また障がいのない方も雇用しています。その方については障がい者に関わる仕事ということで、自分だけではなく人のことも考えられる人かどうかを重要視しています。
――また離職率などはどうなのでしょうか。
藤野:勤続20年という人もいてくれるなど、離職率は低いですね。
――ベーカリーに関しては「月給10万円以上支払うことを実践する焼き立てのおいしいパンのお店」を目指しているとのことですが、これはクリアできていますか。
藤野:直営店(銀座・赤坂・羽田)の場合はもちろん、労働時間にもよりますが多くの方が達成できていると思います。
――スワンはヤマトホールディングスの特例子会社です。特例子会社というと経営が難しい、赤字を出してしまうというお話も聞いたことがあるのですが。
藤野:パンの事業だけでは厳しい時代に入ってきていますが、クリスマスケーキなどの売り上げで何とか黒字化しています。また、ベーカリー以外にもカフェなどの事業も行っていて、こちらも好評です。
――ベーカリーとカフェにはどんな層のお客さんが多いですか。
藤野:銀座店の場合、オフィス街にあるので固定客が多いですね。ヤマト運輸本社の近くに位置していることもあり、社員が出社時にパンを買っていってくれることもあります。このあたりはもともとパン屋さんが少ないですし、パン自体のお値段がリーズナブルになっているのも愛されているポイントではないかと思います。カフェではアルコールや手作りのケーキを出していますので、幅広くいろいろなお客さまが来てくださっています。
――銀座でパン屋さんは確かにあまり見ませんね。
藤野:ここは元々ヤマト運輸の事業所だったところなんですよ。その場所を活用することで銀座という場所でもパン屋さんを続けることができています。
――クリスマスケーキのカタログを拝見したのですが、猫の肉球をモチーフにしたデザインなどとってもかわいいですね。
藤野:ありがとうございます。例年「クロネコヤマト」のロゴチョコプレートを付けていたのですが、今年はそれを止めて、猫のデザインで押してみました。SNSでも話題になっていると聞いてうれしいとともに驚いています。オンラインショップで12月5日まで予約を受け付けていますので、多くの方に召し上がっていただきたいです。
――アレルゲン対応のクリスマスケーキも販売されているのですね。
藤野:障がい者の方の中にはアレルギーを持っているという人が少なくありません。そこで専用工場で製造したアレルゲン対応のケーキを作りました。スポンジには米粉を使っていてコンタミの心配は一切ありません。購入者の方からは「家族で同じホールのケーキを食べられるというのはうれしい」という声をいただいています。
――今後はスワンとしてどんなことに取り組みたいですか。
藤野:スワンベーカリーのオープンから現在までに直営店が4店舗、フランチャイズの店舗は全国で23店舗まで拡大することができました。今後は野菜の販売などについても検討していきたいと考えています。
取材を終えてベーカリーに立ち寄ってみると、そこにはいきいきとした笑顔で「いらっしゃませ!」と声をかけてくれる青年が働いていました。また女性の店員さんはオススメの商品や焼き立ての商品を教えてくれるなど非常に丁寧な接客で、店内にはひっきりなしにお客さんが訪れていました。
クリスマスケーキフォトギャラリー
XB ハッピー STAR 3860円
XC ハッピー ア・ラ・カルト 4398円
XD ハッピーショート 4160円
XA ハッピーサンタクロース 3360円
XG ハッピーHAPPY 3600円
XE ハッピーモンブラン 3980円
XF ハッピークリスマス 4080円(特定アレルゲン不使用ケーキ)
XH ハッピーシュトレン 2980円
※価格は全て送料・税込み。冷凍でのお届けです。
取材協力:ヤマトホールディングス、スワン
(Kikka)
関連記事
宅配便ロッカー「PUDOステーション」、世田谷区が公共施設に設置 区役所や駐車場で荷物を受け取れる
公共施設への設置は東京都23区初。ヤマト運輸、荷物を宅急便センターで受け取ると割引する新サービス 再配達を抑制する狙い
依頼主が受取場所を宅急便センターに指定すると54円安くなる。広島県が「がん検診啓発キャンペーン」にデーモン閣下を起用しているのはなぜ? 悪魔が健康を気遣う奇策の理由を聞いてみた
悪魔が健康に気をつかう時代。アニメ「ジョーカー・ゲーム」関東再放送のメインスポンサーが新潟市!? ガチオタ副市長とProduction I.Gが史上初の取り組み
「この番組は新潟市とご覧のスポンサーでお送りします」佐賀県、ロケット団傘下になる 知事もサカキならぬ“サガ”キに変身 ニャースが県庁で団員募集の詳細発表
佐賀からホワイトホールは始まるのだニャ!
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.