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「孔明の罠」のようなドア、押すのが怖いエレベーターのボタン…… デザイナーが選んだ「バッドデザイン賞」候補が衝撃すぎる

かっこ悪いという意味でなく、誤認や危険を招くデザイン。

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 ブログ「酔いどれデザイン日誌」管理人で、デザイナーのおりさん(@ori_io)が公開した「バッドデザイン賞を勝手にノミネートしてみた-2017年度版-」というエントリが衝撃的すぎると話題になっています。あくまで個人が選んだものであり、「ジョークコンテンツとしてお楽しみください」との断り書きはありますが、公開されている写真はどれもまさに「バッドデザイン」としか言いようのない、すさまじいものでした。

 ここでいう「バッドデザイン」とは、「かっこ悪い」「ダサい」などの主観的な評価ではありません。「誤操作や誤認を誘発する」「精神的な不快感を誘発する」といった基準で、使い方を理解しにくく、ときには危険を招きそうな6つの公共物が選ばれています。

 「(グッドデザイン賞のように)良いものを良いと評価することも大切ですが、良くないものを無視するのは人類の進歩に大きな影響を落とす」との考えから「勝手にアワード化してしまいました」とおりさん。これらは全て、2017年中におりさん自身が街中で見つけて撮影したもの。職業柄、日常生活で見かけた良いデザイン事例と悪い事例をストックしているのだそうです。

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選考基準となった「バッドデザイン」の定義

・誤操作や誤認を誘発する意匠
・身体的な危険が伴う意匠
・精神的な不快感を誘発する意匠
・情報がまったく伝わらない意匠
・課題とソリューションが大きく乖離した意匠

No.1 危険そうで押しがたいエレベーターの呼び出しボタン

 筐体の赤系色が警告感をかもし出すボタンが、「誤認デザイン部門」としてノミネート。単なるエレベーターの呼び出しボタンなのに、警報が鳴りそうで押すのがためらわれます。その下には注意書きまでダメ押しのように貼られていますが、その内容は「戸に触れないこと。けがをする恐れがあります」。……だったら戸に貼ればいいのに。

金沢の地下通路で発見したそうです

No.2 ボタンに見えないせいで「ボタン」と書かれたボタン

 この世になかなかないであろう、「ボタン」と書かれたボタンが「誤操作デザイン部門」に。どうやらこの操作盤、上にある階層表示部分のほうがボタンに見えてしまうので、そう追記せざるを得なかったようです。おりさんは「シグニファイア(可能性を示唆する意匠)が完全に逆に作用した錯視効果の極致」とコメント。ボタンと階数表記を並べたり、ボタン自体を光らせたり、もう少し分かりやすいやり方があったように思えます。

「人間は本能的に一番出っ張っているところを押したくなるものなのだという事を再確認させてくれる」

No.3 簡素化しすぎて「授乳室」「哺乳瓶」と二重の補足が必要になったアイコン

 「意味が伝わらない部門」では、とある授乳室のアイコンがノミネート。注射器のように見えてしまうせいか「授乳室」「哺乳瓶」と、念を押すようにテプラが貼られていて、デザイナーの敗北を感じさせます。「授乳室」だけあれば「哺乳瓶」はいらないのでは……? おりさんは「おそらくスタイリッシュにしようと曲線を極力排除した結果」と分析。救護室と間違えて入ってくる人が多かったのではないかと推測しています。

母親が赤ちゃんを抱っこしているようなデザインはよく見かけますが、これでは……

No.4 路線の改正前・改正後が二重に写るバス乗り場案内

 おりさんが「乱視案内板」と呼んだ、見にくい都バスの案内板も「意味が伝わらない部門」の1つ。路線が古い案内板を廃棄しないまま、その上に新しいものを貼ってしまったため、新旧の表示が二重に写っているのだそうです。昼間は普通に読めるものの、夜間はバックライトが点いて古い表示が透けて出てくるのだとか。「仕様の確認とチェックフローは怠らないようにしようという戒めを我々に教えてくれる」として、「イージーミス特別賞」にもノミネートされています。

「ある意味公共工事の怠慢が生んだ奇跡の産物」

No.5 ふれあえない「ふれあい灯」

 「ふれあい灯」と名付けられたこの装置は、身体の不自由な人やお年寄りなどが困っているときのために設けられたもの。ボタンを押すと大きな音が鳴りランプが点滅、気付いた周囲の人が店員を呼び止めて助けるよううながす仕組みです。

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 しかし、対象に外国人も含まれるのに日本語表記のみといったミスをはじめに、不可解な点が多すぎます。店員を呼ぶのを他の客に任せずに、ボタンを押すと店員の端末に通知が飛ぶ仕組みではダメなのか? そもそも困っている人はボタンのところまで行かず、その場で近くの人に助けを求めるのでは? 数々の疑問を呼んだことで、「ソリューション乖離(かいり)部門」に選ばれました。

ブログのコメント欄には、「いつも子どもがボタンを押してしまい、親御さんが謝っている」との報告が寄せられています

No.6 1枚目が自動で2枚目は手動!? 「孔明の罠」のような危ないドア

 ビルのエントランスに、まったく同じデザインのドアが2枚連続。実はこれ、手前は自動で、奥は観音開きの手動ドアなのだそうです。つまり、1枚目を通るときに自動ドアと認識して先へ進むと、2枚目に激突してしまうという「孔明の罠」さながらの状態。実際、撮影中に何人かが罠にハマって激突していたそうです。「設計者はカッコよくて美しいエントランスの設計図を引くより先に、人間工学と認知心理学の基本をきっちり勉強すべき」との手厳しいコメントとともに、「身体危険部門」にノミネートされました。

せめて手動と自動が逆の順番ならここまで危なくないだろうに……

 「人様のつくったものを気安くバッド呼ばわりするのは正直気がひける」としつつも、「誤操作や誤認は時に身体や資産に大きな損害を与える危険をもはらんでいる」と述べるおりさん。編集部が取材したところ、総評として下記のコメントをいただきました。

総評
 予想以上の反響に正直びっくりしていますが、これまで首を傾げるようなデザインについて疑問を持ちつつも、意見のぶつけどころが無かったサイレントマジョリティが可視化した結果かなと思います。 コメント等で「素人なのでプロが作ったデザインにケチを付けるのは恥ずかしいと思っていた」という意見がいくつもありましたが、そもそもすべてのデザインは「素人である生活者」の皆さんのために作られているはずですので、生活者側が変だと思った時点でそれはいくらスタイリッシュで先進的であろうと、バッドデザインです。 私はデザインの批評はプロのデザイナーが行うものではなく、生活者が行うべきものだと考えています。ブログの最後にも書きましたが、生活者側から正しくフィードバックを行う習慣を根付かせ、世の中をちょっとずつ暮らしやすくしていきましょう。

 「大賞」は決めないのかと聞くと、「みなさんで議論して決めるべき」との回答。総評にあるように、「デザインは本来生活者側が批評を行うべきもの」という考えで、今後も生活者側がネットを通して勝手にフィードバックを送り、共感を集めていくスタイルが良いと述べています。

 なお、今回公開されたのは、おりさんが持つストックのほんの一部。デザイン事例の収集はこれからも続けていくので、気が向いたら2018年版も公開するかもしれないとのことです。

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画像提供:おりさん

(沓澤真二)

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