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結局“絶滅危惧種”ウナギは食べていいのか 水産庁と日本自然保護協会に聞いてみた(2/2 ページ)

予想外の回答でした。

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―― 消費者が購入を控えることに意味はありますか、それとも気にせず購入した方が良いですか。

水産庁:あまり意味はないと思います。ニホンウナギの個体数が減少してきているのは間違いありませんが、現時点ではその要因が特定されていません。減少の原因の可能性としてあげられているものに、海洋環境の変動、生息環境の悪化、過剰な漁獲の3つがありますが、原因が過剰な漁獲以外であった場合、仮に禁漁にしても個体数は増えません。

 また、禁漁にすれば養殖業者の多くは事業を続けられなくなるため、ウナギの食文化自体が消えてしまいます。水産物は持続的に利用してくことが重要なため、原因が特定できていない状態で消費者が購入を控える必要はないでしょう。

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日本自然保護協会:意味があると思います。個体数減少の要因が所説あり現状でははっきりしていません。複合的にいくつもの要因がからんでいると思います。NACS-Jでは、個体数減少の原因の1つと考えられる、生息環境である日本の河川の状況を調査する「自然しらべ」を実施しました。結果は多くの堰(せき:水をせき止める目的で河川や湖沼などに設けられる構造物)が、ウナギの遡上阻害となる高さ40センチ以上あり、ウナギ目線でみるととても良いとはいえない現状が見えてきました。

 はっきりとした原因が分からない今は、予防原則にたって、ウナギの保全を最優先で考える必要があります。ウナギにかかわる業者の皆さんにはきついかもしれませんが土用の丑だから食べるという程度なら、わざわざ食べるということはしない方がよいとは思います。

日本自然保護協会が実施した自然しらべ

―― 2018年は特に不漁とのことですが、この状態が続いた場合食卓から消える可能性もありえますか。

水産庁:ありえます。ただ、2018年は、例年になく際立った不漁というわけではありません。まず、ウナギは年によって漁獲量に大きな差があり、安定しない水産物です。また、前年同期比1%という数字についてですが、これは2017年が非常に特殊だったことを考慮する必要があります。

 通常ニホンウナギの漁獲のピークは1月~2月にかけてですが、2017年は12月~1月がピークで、2月ごろにはもうあまり捕れなくなっていました。つまり、例年になく早い時期に捕れた2017年の1月と通常の不漁の範囲内の2018年の1月、両極端に振れた時期同士を比べているため、前年同期比1%という数字が出ています。また、2018年はこれから多く捕れる可能性もあります。資源自体が減っているとと今年1年間の不漁は、切り分けて考える必要があるでしょう。

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日本自然保護協会:ありえます。日本の食卓にのぼるウナギは、シラスウナギを獲って生簀で養殖したものがほとんどです。今後シラスウナギが黄ウナギとなっていく年数、さらには産卵できる銀ウナギになるまでの年数、この状況が続けばそうなる可能性が高いと思います。

食べられなくなる可能性は否定できないようです

―― ニホンウナギは絶滅危惧種に指定されていますが、そもそも絶滅危惧種は食べてもいいものなのでしょうか。

水産庁:大丈夫です。「絶滅危惧種」はIUCN(国際自然保護連合)が定めているものであり、特に法的な拘束力はありません。

日本自然保護協会:「絶滅危惧種」として評価されただけでは法的な拘束力はありませんが、絶滅危惧種のレベルによります。個体群が消滅する危険が高いとされている絶滅危惧種は当然食べてはいけませんし、科学的な検討の上で「種の保存法」という別の国内法や、「ワシントン条約」という国際法で規制されることがあります。ウナギは個体群の減少率から絶滅危惧種にしていされていますが、現時点では直ちに絶滅するものとは考えられていません。きちんとした、個体数の把握と持続可能なシステムが構築されているのなら食べてもいいと思います。

 ただ、残念ながら、資源管理も個体数の把握もきちんとされているとはいえないのが実態なので、早急にシステムを確立するべきです。絶滅危惧種のランクについてはIUCNのサイトをご覧ください。

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IUCNのレッドリストについて

―― 禁漁措置を取るような動きはありますか。また、禁漁にしても数が増えるとは限りませんか。

水産庁:原因がはっきりとしないことには禁漁措置は取れません。また、原因が漁獲によるものでなければ、禁漁としても数が増えるとは限りません。もしも個体数の減少の原因が過剰な漁獲によるものであれば禁漁となる可能性もありえますが、食卓に並ぶような水産物が禁漁になることは極めて珍しいことです。

日本自然保護協会:今のところ禁漁という動きはないと思います。はっきりとした減少要因が分からない以上、禁漁しても他の減少要因が解決されない限り数が増えるとは言い切れないのが現状です。

 ただし、今後さらに数が減り個体群を維持することが困難な数となれば、あくまでも科学的なデータに基づいての判断ですが、禁漁ではなく「種の保存法」による保護増殖の対象になり、捕ることや流通させることが法的に禁止になります。

―― ウナギは海外でも普通に食されているのでしょうか。

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水産庁:水産庁では詳しいデータを持ち合わせていません。日本食ブームにより需要が増えているとは聞きます。

日本自然保護協会:中国やヨーロッパなどでウナギを食べる文化がありますが、日本の丑の日ほど一般的なものではないようです。また、北スペインではシラスウナギを食べ、ポーランドでは親ウナギを利用するなど、ウナギの食べ方などの文化の多様性もあるようです。ウナギの捕獲数の減少から年々消費量は減り続けています。

―― 「絶滅しそうなのだから各団体はもっと厳しく声を上げるべき」といったような声をネットで見かけますが、水産庁(日本自然保護協会)として何かコメントはありますか。

水産庁:池入れ量の管理や密漁の取り締まりなど、やるべきことはやっていきます。2018年の不漁については、専門家の間では潮の流れが原因と推察されているので仕方のないところがあります。1年の不漁だけを見て慌ててどうにかというのは、勇み足になりかねません。

日本自然保護協会:今回の当協会の調査結果を公表した際に、政策提言をしようと考えています。少なくともきちんとした個体数把握のための調査や、資源管理の仕組みが不可欠です。また、これまでニホンウナギについて記事を掲載しています。こちらもご参照ください(ウナギの稚魚、半分近くが違法取引によるものウナギ、今年は豊漁? 食べていいの?)。

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 また、参考資料として、ウナギについて考える「うなぎ未来会議2016」というものが2016年に開催され、そのレポートがまとまっています。ニホンウナギをIUCNレッドリストで評価したときの専門家らが開催し、まとめたものです。


 予想外に意見が分かれてしまいましたが、「直ちに絶滅するというものではない」「ただし不漁が続けば食卓から消える可能性はある」という点で水産庁と日本自然保護協会の意見は一致していました。購入を控えるかどうか個々人の判断によりますが、土用丑の日だからとこだわる時代ではないのかもしれません。

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