う、うん億円~!? ぶっ飛ぶ豪華っぷり、ちょっとのぞいてみましょう「超高級ヨット」の世界(1/3 ページ)
「ヨットって何千万円もするんでしょ。俺らには関係ないねー」。いえいえ、ちょっと誤解があります。知られざる高級ヨット「億り船」の世界の一片を紹介します。(詳細写真159枚)
ヨットというと「いやー、何千万もするんでしょー。ゲイツさんとかならば分かるけれど、とてもじゃないが買えないよねー」というのが大方の皆さんの認識かもしれません。
実はこれ、誤解です。例えば、「20年、30年落ちの全長8メートルぐらいの中古艇」ならば100万円もしない価格で買えたりもします。クルマで30年落ちだともうクラシックカーの域で、動かすのも維持するのもひと苦労かもしれませんが、頑丈な、そしてある意味大ざっぱでシンプルな作りの船ならば十分現役で使えます。ごく普通の勤め人でも軽自動車1台分程度の購入費と維持費で関東近辺でも船が持てます。「俺は船長に、いや艦長になる!」という野望をお持ちの方はぜひ挑戦していただきたいと思うのであります。
しかし、上を見ると果てがない世界でもあります。ここからが「何千万もするんでしょー」という世界ですね。何千万円なんてかわいいもので、ウン億円以上の雲上世界もごく普通に広がっています。こんな世界をのぞけるレジャー用船舶に関する大型展示会「ジャパンインターナショナルボートショー2018」に、庶民船長のこのワタクシも参戦してきました。
ジャパンインターナショナルボートショー2018は、2018年3月8日から11日まで、横浜の「パシフィコ横浜」と「横浜ベイサイドマリーナ」で行われました。このうち横浜ベイサイドマリーナ会場では、マリーナの桟橋に係留した「展示艇」に実際に乗り込んで船の操舵室や船室を間近に見ることができました。その展示艇というのが、もうぶっ飛びの「ちょー!豪華!!」な顔ぶれなのであります。
では、ひとときの「億り船」な気分を味わっていきましょう。
※「ヨット」というと、一般的に日本では“セールで走る船”を想像すると思います。しかし海外でいうところの「ヨット」は、セールで走るか、エンジンで走るかには関係なく「個人用の豪華船」という意味で使われます。そのため本稿もまとめて「ヨット」と呼ぶことにします。ちなみに“セールで走る船”については、海外では「セールボート」や「セーリングクルーザー」と呼ばれます。
約3億円のフルカスタムオーダーメイド艇「JACK 72 Dea del mare」
「JACK 72 Dea del mare」は、船型から艤装、船室のレイアウトから内装まで購入者ごとにデザインして、世界でただ1つの船を建造する“ワンオフ艇”を提供する「JACK」シリーズの1艇。2018年2月に完成した、できたてホヤホヤな新艇です。
JACKシリーズはイチからのカスタムメイドものなので、それはお金に糸目を付けず、でもこだわりの人が買うのだと思います。しかし、メーカーは「建造する造船所と簡易型作成技術を持っているおかげで製造コストを抑えることに成功した」とアピールしています。製造コストを抑えて価格は約3億円だそうです。
JACK 72 Dea del mareは、全長21.97メートルで、船幅は5.3メートル。船内に収蔵されていた食器は、全てが割れやすくて高価そうな薄いガラスや磁器製ですが、船の揺れに耐えられるように支え枠が食器棚に設けてあります。さらにこの船は、揺れを大きく抑える「ジャイロスタビライザー」を機関室に備えています。
ジャイロスタビライザーとは、コマを高速で回転させると軸が一定方向を向いて安定するジャイロ効果の仕組みを利用した制揺装置です。機器に組み込んだ円盤を高速で回転させ、波が船を揺らす力に抵抗して作用し、船を水平に保つようにします。軍艦ファン的には、帝国海軍の航空母艦「鳳翔」や「龍驤」などにも搭載していたアレか! なんていうところも興味深かったりするのではないでしょうか。
エンジンは、スウェーデンの自動車メーカーとして日本でもなじみのあるボルボ製です。実はボルボはマリンエンジン最大手の1つといえるほどに船の世界でも普及しているメーカーです。JACK 72 Dea del mareはこのボルボ製の「VOLVO PENTA」を2基搭載し、左右1つずつのスクリューを回します。
このスクリューも独特です。スクリューは大抵の場合、後方に向けて取り付けます。しかしVOLVO PENTAでは、前向きに2枚のスクリューが取り付けられています。これによって、約700馬力のエンジンで1200馬力相当のパワーを発揮する効率向上とタグボートに相当する操船性能を可能するそうです。
もちろん操船席も豪華です。まず、シートはレザー張りのレカロ製。高速航行時の揺れも、同じく激しいカーレースで使われるレカロシートならば体をしっかり支え、また疲労も軽減してくれそうです。コンソールにはレイマリン(Raymarine)製のマルチファンクションディスプレイ「AXIOM」シリーズを2つ組み込んで、航海用電子参考図にソナー、船外監視カメラに機関室監視カメラなどを同時に表示できます。「豪華ヨット」というと、まずきらびやかでぜいたくな内装のキャビンをまず想像すると思いますが、こういった航海設備にも高性能で多機能な機器を備えているおかげで、船そのものの性能や乗り心地が優れていたりするのです。
イタリアの高級ヨットメーカーによるフツーの家よりも広くて高い豪華ヨット「FERRETTI 450」
イタリアの高級ヨットメーカーであるフェレッティ(Ferretti)が建造した「FERRETTI 450」は、全長14.2メートル、船幅が4.3メートルと、1フロアだけで私たちが住む一般マンションの床面積を超えそうな規模の豪華ヨットです。
船室はみんな集まるギャレー(台所)併設型リビングルームのほかに、ダブルベッドを備えた寝室が2つ(オーナー用とゲスト用)、2段ベッドレイアウトの寝室(クルー用)が1つあります。シャワー室付きのトイレも2カ所設けており、ダブルベッド寝室のそれぞれからアクセスできるようになっています。
シャワー室が2カ所あるだけでもすごいのですが、さらに便座はどちらも温水洗浄機付きです。あ、勘違いしそうですがこれは家の紹介ではなく、船の設備のことですよ。さておき、清水の消費量はすごいことになりそうと勝手に心配してしまいますが、このヨットには海水から清水を生成する機器を備え、また清水タンクの容量も600リットルと大容量。清水の消費を気にすることはないそうです。
最新機器を装備したハイテク艇「Sunseeker Manhattan 52」
全長17.21メートル、船幅4.87メートルの「Sunseeker Manhattan 52」は、英国のボートビルダーであるサンシーカー(Sunseeker)が建造したヨットです。
船の上構に設けたアンテナブリッジにインマルサット衛星通信用のアンテナドームを2基備え、このほかにレーダー、GPSから航海計器や船内監視センサーまで、最新の機器を装備したハイテク艇です。操舵室のシートは、停泊してリビングルームを広く使いたいときのために倒しておけます。出港するときには「電動」で起きてきます。すごい。
操舵席コンソールにはSIMRAD製のマルチファンクションディスプレイをサイズ違いに3台組み込み、航海用電子参考図やレーダー、ソナー、航海計器、航路計画などを随時切り替えて利用できます。また、燃料計や電圧計、清水系、照明空調制御なども専用のマルチファンクションディスプレイで機能を呼び出して操作します。
走行性能においても、前述したJACK 72 Dea del mareと同様にジャイロスタビライザーを備え、安定した姿勢で運航できます。その操作画面も操船コンソールに備えています。
続いて、帆で走るセーリングクルーザーもチェックしていきましょう。
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