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“AI市長候補”が市長選に出馬して分かったこと 「握手ができないAIは選挙活動が苦手」(2/2 ページ)

突如現れた奇抜な候補者はいったい何を目指していたのか。

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松田:市役所内に保存してあるデータのうち、個人情報などを除いて全て公開することを予定していました。また、それらのデータをAIに読み込ませて分析を開始する予定でした。

 また、AIとは直接関係がないかもしれませんが、多摩市ではここ数年で7件の職員による内部通報があり、市は調査中であることを理由にそれらを議会にも市民にも報告していませんでした。通報案件の大部分に副市長が関与しているとされていることから、公約の通り副市長にお辞めいただくことを考えていました。通報内容そのものよりも、それを公開しない体質が問題だと考えています。

「顔」ではなく「政策」で選んでもらえるような仕掛けを

―― 選挙期間中ネットユーザーからはどのような反応がありましたか?

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松田:「流行のAIと言えば当選できると思っているようだ」「AIでは政治ができるはずがない、インチキだ」「AIと言いながら人間が介在するなら今までと何ら変わりない」「AIなら忖度(そんたく)しないというが、AIなら学習して忖度をするようになるだろう」「AI推しということ以外何も分からない選挙ポスター 」「隠しごとはしないと言いながら、顔を隠している」というようなネガティブな意見から、「面白い」「AIならいまの政治家よりは高いレベルの仕事をやってくれそう」「いずれこのような時代がくる」「手塚治虫『火の鳥』の未来編を思い出しますね 」などポジティブな意見もいただきました。

 山本一郎さんがYahooニュースに投稿した「多摩市長選、『AI市長候補』を標榜する松田道人氏の『ファイルローグ問題』でやらかした過去を振り返る」という記事は最初は「やめてー」と思いましたが、特に隠している内容ではなかったので、過去を有権者の方に説明をするきっかけとなり結果的には良かったです。

―― 今後理解を得ていくために、どのようなアプローチが考えられますか?

松田:少しずつでも信頼を獲得していくしか方法はないと思います。一方で、有権者全員が満足するようなやり方は存在しないので、AI市長に懐疑的ではない層、不信感を持たない層を中心に政策を訴えていくような活動をしていきたいと考えます。

 さらに、「声をかけてもらったことがある」「握手したことがある」「お祭りやイベントに来てくれた」「自分が作った陶芸を褒めてくれた」「息子の卒業式で訓示をしてくれた」という理由で現職に投票した層に対しては、顔ではなく政策で候補者を選らばざるを得なくなるような選挙の仕掛けを考えていきます。

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 いまの多摩市政は、「お年寄り世代」と「子育て世代」などにグループを分け、特定の世代が抱える問題を解決する政策を立てていますが、新しいカテゴリー分類を見つけるのが得意なAIであれば、世代を問わない共通課題(例えば「貧困」など)を抱える新しいグループやカテゴリーを見つけ、そこに対して最適な政策を提言することができます。

「握手したもの勝ち」ではない方法を考案していくとのこと

―― このほか、AI市長を生み出すために予定している具体的な行動はありますか?

松田:大部分の有権者が、「会ったことがある人」「握手をしたことがある人」に投票する傾向がある中で、どのような選挙活動をするかについては大きな課題だと考えています。地方選挙への出馬を準備している方々から、AIを使いたいとの相談を受けており、年内に少なくとも2~3件、選挙協力をする予定です。早ければ6月の選挙を予定しております。


 以上、AI市長誕生を目指す松田みちひとさんへのインタビューでした。「政治は人間が行うもの」といった前提が根強いため、AIの導入は決して簡単なものではありませんが、適切な予算配分による減税効果や直接民主制への移行といった内容は興味を引かれました。

 組織票を多く持つ方が有利とされている日本の選挙システムへの対抗策として「顔ではなく政策で候補者を選ばざるを得なくなるような仕掛け」の考案を行うというのもかなり気になるところです。ひょっとするとそう遠くない未来、どこかの市町村にてAI市長が誕生するかもしれませんね。

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