漫画家・谷口ジローの魅力を総括した一冊が発売 死後発見された幻のデビュー作も初収録
『孤独のグルメ』などとは大きく異なる、『ガロ』を意識した作風の幻の作品とは。
2017年2月に急逝した漫画家・谷口ジローさんの魅力を総括する一冊『谷口ジロー 描くよろこび』が、10月26日に平凡社から刊行されます。原画や関係者の寄稿などさまざまな角度から谷口ジローという作家に迫るだけでなく、死後自宅から見つかった幻のデビュー作「声にならない鳥のうた」が初めて単行本に収録されます。
谷口さんは生前、『歩くひと』『遥かな町へ』『犬を飼う』や、『孤独のグルメ』(原作:久住昌之)『「坊っちゃん」の時代』(原作:関川夏央)の作画など、150作を超える漫画を生み出しました。作品は今なお世界約20カ国で翻訳され続け、フランスをはじめとする欧州全土で絶大なる人気を得ています。
『谷口ジロー 描くよろこび』では原画を「1970年~1985年」「1986年~1996年」「1997年~2017年」の3部構成で収録。またファンを自認する漫画家・松本大洋さん(『ピンポン』『鉄筋コンクリート』など)へのスペシャルインタビューや、風景描写のモチーフとなった武蔵野探訪、書斎&本棚の公開、全作品リスト、貴重なプライベートショットまで、あらゆる視点から谷口ジロー45年の画業と深層を解剖します。
寄稿文は、久住昌之さんや関川夏央さん、夢枕獏さん(『神々の山嶺』原作)といったタッグを組んだ原作者から、漫画家・萩尾望都さんや俳優・竹中直人さんによる「私と“谷口ジロー”」までさまざまです。夏目房之介さんによる「谷口ジローはもっと評価されねばならない」など、批評・専門家からの論考も収録。
白眉は、出版物への掲載が初めてとなる幻のデビュー作「声にならない鳥のうた」。小学館の担当編集・今本統人さんによると、谷口さんが亡くなってから約3カ月後、奥さんや事務所担当者と一緒に谷口さんの自宅を整理していたところ見つかったといいます。
「引き出しから受験用の問題集のような冊子が出てきて、中をパラパラとめくったところ、谷口先生の漫画作品が掲載されているのを発見しました。冊子は大学受験生向けの雑誌で、これまで『商業デビュー作』とされてきたのは1971年の作品だったのですが、その前年となる1970年の発行だったため、この作品が今のところ先生の最初の商業発表作品ということになりました」(今本さん)
「2017年末に開催された原画展で初公開されましたが、出版物に掲載されるのは今回が初めて。谷口先生は若いころ『ガロ』に持ち込みをされたこともあると伺ったことがありますが、本作は『ガロ』という雑誌や、同誌掲載の作品を強く意識したタッチで描かれており、後年の作風とは大きく異なります。しかし描き込みの密度やキャラクター造形など、後の谷口作品の片りんも多数みられ、非常に興味深い一作です」
書籍はB5判変型並製で144ページ、価格は1800円(税別)。
『谷口ジロー 描くよろこび』目次
◯原画ギャラリー
- chapter1:1970-1985
- chapter2:1986-1996
- chapter3:1997-2017
◯論考
- 「価値観の交差する作品 谷口ジローとフランス」 イラン・グェン
- 「マンガ家にしてバンド・デシネ作家-谷口ジロー」 原正人
- 「谷口さんのこと」 寺田克也
- 「谷口ジローはもっと評価されねばならない」 夏目房之介
◯原作者より
- 「エンジェル・エンジンを探すのはやめろ」 原田宗典
- 「谷口ジローさんのこと」 久住昌之
- 「唯一無二の漫画家」 夢枕獏
- 「輪郭線を描いてくださった」 川上弘美
◯私と“谷口ジロー”
- 「『遥かな町へ』映画化計画、再び」 竹中直人
- 「風景そのものが語りかけてくる」 萩尾望都
- 「高校生のときの出会い、そして今」 石川直樹
◯松本大洋インタビュー「谷口ジローさんは、絵も人柄もやさしい漫画家でした。」
◯谷口ジローの見た武蔵野――『歩くひと』を歩く
- [エッセイ]『歩くひと』谷口ジローとのニ、三の思い出 関川夏央
◯谷口ジローの本棚
◯谷口ジロー略年譜
◯谷口ジロー発表作品初出誌&単行本データ
◯[特別付録]幻のデビュー作・単行本未収録作品 「声にならない鳥のうた」
(黒木貴啓)
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