「あなたのような人は2度と現れない」　モード界の帝王カール・ラガーフェルドが逝去、世界の一流モデルから追悼の声

　2月19日、ファッションデザイナーのカール・ラガーフェルドがフランスのパリで死去しました。85歳でした。長らくファッション界のアイコンとして不動の存在であった彼に、各界から追悼の声があがっています。

　自身の名を冠したブランドの他、シャネル、フェンディでもクリエイティブディレクターとして、最期まで自身の美意識を貫いたラガーフェルド。シャネルは彼の訃報と哀悼の意を伝え、「私の仕事は彼女がしたことではなく、彼女がするはずだったことをすること。シャネルのよいところは、たくさんのことに適応できるところです」とラガーフェルドの言葉を引用し、ガブリエル・シャネルの没後業績不振だったシャネルを救い唯一無二のメゾンにした彼の仕事に大きな感謝を述べています。

　また、US版『VOGUE』の編集長アナ・ウィンターとラガーフェルドはファッション界の女王と帝王として並び称されることの多い仲でした。VOGUE誌のInstagramは2018年9月にラガーフェルドがサングラスを外しデスクで仕事をするショットを投稿。2019年1月のシャネル春夏コレクションでは初めてショーを欠席し周囲を心配させましたが、最後まで仕事に没頭しようとしていた様子がうかがえます。

　あらゆる面で現状に満足することなく前進し続けたラガーフェルドは、コカ・コーラのボトルデザインや、2004年にはシャネルとファストファッションのH＆Mとのコラボレーションなども実現させてきました。H＆Mのクリエイティブアドバイザーであるマルガレータ・バン・デン・ボッシュは当時、自宅へ人を招くことを好まなかったラガーフェルドからパリ左岸の自宅へランチに招待されたそう。

　90年代にモデルブームによって一世を風靡（ふうび）した「スーパーモデル」たちは皆、ラガーフェルドに対する思いは並々ならない様子。英モデルのナオミ・キャンベルは「カール…書きたい思い出がありすぎて…、ありがとう、ありがとう、ありがとう!!!　南ロンドンから出てきた16歳の女の子にチャンスをくれて、目を開かせてくれた。安らかに」とあふれる気持ちをつづっています。

　同じく90年代から今もなお人気を維持する英モデルのケイト・モスのエージェンシーは、2人の有名な2ショットを投稿し、割れたハートの絵文字で思いを表現しています。

　ラガーフェルドに「完璧に美しい」と言わしめた米モデルのクリスティー・ターリントンは、「カールは写真を撮るのが好きだった」と、ラガーフェルドによるものと推測される自身の写真を投稿。「彼はいつも私を“ミス・ターリントン”と呼び、私は尊重されていると感じたし安らぎを覚えた」と思い出を共有してくれました。

　さらに米モデルのシンディ・クロフォードは「あなたは信じられないほどの才能と生きる喜びにあふれた人。ファッションとあなたを愛した私たちみんな、あなたが恋しくなるでしょう」と2ショット写真を投稿。カナダのモデルリンダ・エヴァンジェリスタは「カール…私の人生の偉大な愛でした」とジャン・ポール・ゴルチエの広告で共演したショットを投稿。シャネルの顔にも選ばれたことのあるドイツのモデル、クラウディア・シファーは「彼はシャイなドイツ少女をスーパーモデルに変えた。私にファッションを教え、スタイルを教え、どうやってファッション業界を生き延びるかを教えてくれた」とラガーフェルドへの恩義をつづっています。

　また、多くの女優たちも追悼を意を表明。オーストラリアの女優ニコール・キッドマンは、「今日世界は本物の革新的なデザイナーであるアイコンを失った」とラガーフェルドの死を惜しみ、サングラスを少し上げてみせるおちゃめな様子と、彼女とのショットを公開。

　米女優グウィネス・パルトローは、「あなたのような人は2度と現れない」と彼女らしくナチュラルな様子の2ショットを披露。

　米女優エヴァ・ロンゴリアは映画のワンシーンのような2人の写真を投稿、2枚目には親しさをうかがわせる向かい合った写真を選択。コメントの代わりにつけられた黒いハートが彼女の気持ちを表しています。

　フランスの女優マリオン・コティヤールは、ラガーフェルドがこの世に残したものを「天才的な言葉と完璧な装い。美とユーモア、詩情と本物、秀逸さ、情熱と愛をありがとう。フランスにたくさんのものをありがとう」とコメント。ドイツ出身でありながらフランスのアイドルともいえる存在だったラガーフェルドは、2017年にパリ市長からパリ市名誉勲章を贈られていました。

　その他、「いつも素晴らしくて、優しくて寛大だった」と英歌手で女優、ファッションデザイナーのヴィクトリア・ベッカム。夫の元サッカーイングランド代表デヴィッド・ベッカムも「革命は次のステップへ進む秘訣（ひけつ）だ」とラガーフェルドの言葉を紹介しています。

　個人的に親しかった様子を見せていた米女優で歌手のリンジー・ローハンは、「胸が張り裂けそう。いろいろありがとう」と自らの悲しみをシンプルな言葉に込めました。そして米歌手のファーギーも、「カールはいつも私をお姫様のような気持ちにさせてくれた。シャネルのパリオートクチュールコレクションで前列に招待してくれたときのこと、覚えています。彼といると、全てがエキサイティングだった」と個人的な思い出を披露しました。

　ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの娘で女優、モデルのリリー・ローズ・デップは、シャネルのモデルとしてデビューし、2016年には香水「N°5 ロー」の顔として起用されました。これまでラガーフェルドとは親しい姿を何度もSNSに投稿しており、「あなたがいなくてどれほど寂しくなるか、言葉にできない。世界はあなたのようなパワーを2度と手に入れられない」「どれだけありがとうって言っても足りない、私の夢をかなえてくれた」と悲しみを包み隠すことなく伝えています。

　日本のモデル冨永愛も、「ミラノへの飛行機の中で訃報を聞き」と、ステージでラガーフェルドと並ぶ写真を投稿。「きっと今私はカールの近くにいるのかもしれない」「極上の夢を見させてくれてありがとう」と、哀悼の意と感謝をつづっています。この他、大政絢さんやローラさんもラガーフェルドの逝去にメッセージを投稿しました。

　また、仏版『VOGUE』はユーモアと鋭い舌鋒（ぜっぽう）で数々の名言を残した彼の言葉から「他人にとっての現実でなんてありたくない。現れては消える幻でありたい」を引用。ラガーフェルドは、ポニーテールにサングラス、グローブとハイカラー、クロムハーツという象徴的な外見だけではなく、ユーモアと鋭い舌鋒を備え、世界に印象を与え続けた存在であったことをあらためて伝えました。