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通勤ラッシュに“子育て応援車両”を―― 「満員電車にベビーカーで乗車」問題で市民団体が小池都知事に要望

子どもにとって安全とは言いがたい満員電車。どう変えていくべきなのか?

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 「電車・地下鉄での『子育て応援車両設置』を求めます」――。市民団体「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」は2月25日、小池百合子 東京都知事に面会し、子どもの移動に関するアンケート調査の結果報告と要望書を提出しました。

子育て応援車両設置要望
市民団体「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」が小池都知事と面会、要望を提出

 小池都知事に提出された要望は、以下の2点。

 「通勤ラッシュに重なる時間帯で、電車・地下鉄での『子育て応援車両設置』を求めます(障がいを持つ方も含む)」

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 「同時に、社会全体で『子どもたちを安全に移動させる』という啓発活動も行うことを求めます」

 「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」は、平本沙織さん(wip取締役)、神薗まちこさん、藤代聡(ママスクエア代表取締役)を発起人とする市民団体。会を発足したきっかけは、2018年12月に平本さんが「満員電車にベビーカーで乗らざるを得なかった」経験をTwitterに投稿したこと。ツイートは1万以上リツイートされ、リプライ欄に賛否両論の議論が寄せられ、「子どもの安全な移動について考えるべき」と団体を立ち上げました。

賛否両論の反響となった平本さんのツイート

 同団体は、「女性専用車両を『女性専用&子育て応援車両』に変更できないか」と考え、私鉄に提案を持ち込み。しかし返答は「他社がやればやる」でした。逆に、一社がやれば他社も追随するのではないか、「子どもを安心安全に移動させる」という意識を大人側に醸成できないか――という考えから、小池都知事に要望を提出する運びになったといいます。

「子どもの電車・地下鉄移動」の実態とは?

 子連れ&子どもの電車・地下鉄移動の実態はどのようなものなのでしょうか。

 同団体が2月9日~23日に0~15歳までの子どもをもつ保護者を対象に実施したアンケートでは、1057人の声が寄せられました。回答者の約9割が女性で、およそ5割が30~40代でした。

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 調査によると、多くの親が、電車・地下鉄に子連れで乗ることを断念した経験があるといいます。主な理由は「車内が子どもにとって安全でないから」「子どもが騒ぐから(迷惑に思われるから)」といったもの。混雑している車内では、抱っこひもで抱いても押しつぶされそうになり、ベビーカーは「邪魔」という扱いを受けやすいという声が。小学生になっても身長が低いことなどから、子どもが押しつぶされることがあるのだそうです。

 そもそもエレベーターなどの設備が充実していないことで電車での移動を断念したケースや、車内での嫌がらせの標的にされたというケースも挙がりました。特に満員電車ではストレスを抱いている人が多いため、子連れに対して舌打ち、怒鳴る、押すなどの行為に出る人もいるのだといいます。

 8割以上の人が「電車や地下鉄に『子ども優先スペース』や『子ども車両』のような取り組みが必要だと思う」と回答(「必要」「どちらかといえば必要」の合計)。「ラッシュ時にベビーカーや車いすのためのスペースを設けた方がいい。通勤者は『迷惑』というが、通勤者が通園や障がいのある人より優先される理由はない」「施策の実現によって一般からの理解度は上がる」といった声が寄せられました。


寄せられたコメント(一部)

小池都知事「子育てしやすくなる社会は全体で考えていかなければ」

 平本さんに面会した小池都知事は、かつて女性専用車両の推進に取り組んだことがあると語り、「当時はSNSなどはなかったが、それでも『(女性専用車両について)何を言っているんだ』と反発する声は大きかった。そもそも日本の満員電車は男性であれ女性であれ大変なものです」と、今回の要望が女性専用車両などの施策から連なるものであるとコメント。

 「企業内保育所設置に取り組んでいる企業は丸の内などに増えているが、まずそこ(会社)に行くまでは大変。子育てのしやすくなる社会は全体で考えていかなければいけない」と進みつつある取り組みとその限界に触れるとともに、「2019年度には、都営地下鉄の一部車両に子育て支援スペースを設置する予定。まだ路線も限られているが、実施してみて、どういったことが起こるか、使いやすさや他利用者への影響などを見ていく。こうした取り組みを第一歩として前進していきたい」と語りました。

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要望は「子育てしやすい社会」へのステップ

 ちなみに、「子連れ出勤推進」というトピックが盛り上がったとき、最も世間の声として大きかったのは「子連れ出勤をさせる前に、保育園の増加や保育士の待遇を改善して、待機児童問題を解消すべきだ」というものでした。面会を終えた平本さんに、そうした意見について聞きました。

 「私自身、待機児童を経験し、1年後に第5希望の保育園に入園できました。その保育園は4駅先で、通園するためには電車に乗らなければいけません。根本は、必要十分な保育施設の確保と拡充をお願いし、電車に乗らずに保育園に入ることができればいいと思っています」(平本さん)

 ただし、待機児童問題の全面的な解決は簡単ではありません。今回の要望は、「子育てしやすい社会」へと向かうステップであるといいます。小池都知事と面会しての感触は、

 「小池都知事と話していて、(今回の子育て応援車両の要望が)女性専用車両から連なるものだという見方があると気づきました。困っている人に向けた取り組みとして、子育て応援車両が実現していけば、女性専用車両のように、ひとつひとつ世の中の関心を変えていけるのかなと感じました」(平本さん)

 要望は「女性専用車両を女性専用車両&子育て応援車両へ」というものでしたが、都が進めている案は「個々の車両に子育て応援スペースを作る」というものでした。要望案は比較的実現しやすそうではありますが、記者からは「女性専用車両内に子育て応援車両を作ることは、子育て=女性のものという空気を醸成しかねない」といった声も上がっていました。

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 「取り組みが既に進んでいることは非常に手応えを感じます。私鉄に提案したときは『他社がやれば検討する』というものでしたから、まずは1つの路線の取り組みでも、モデルになれば『他社のケースを下敷きにして自社でも検討しよう』という流れになるのではないでしょうか。また、話題になれば沿線のユーザーからも『うちにも子育て応援車両を』と声が上がり、鉄道会社との対話が進むことを期待します」(平本さん)

 同団体は今後、Web署名活動サービス「Change.org」で制度改革を求める署名活動を実施を予定しています。

 「ツイートが“炎上”したときは、『そもそも満員電車になんで子連れで乗る必要があるの?』といった反響がありました。子連れ登園だけではなく、さまざまな人がさまざまな事情で満員電車に子どもと一緒に乗ることがある。『こういうことがあるんだ』とみなさんが話すきっかけになってくれればと思います」(平本さん)

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