コラム

なんて答えるのが正解なの? 「自分の好みのタイプがわからない」問題

解像度が低いと言語化ができないんですよね……。

advertisement

 自分の好みのタイプがわからない。正直な話、これを書いている今もよくわかっていない。比較的ベタな質問であろう「どんな人が好きなんですか~?」「芸能人でいうとどんな人が好みなんですか~?」というアレに、いまだかつてシャッキリとした答えを返せたことがない。

 特に困るのが、オタクでもなんでもない普通の人と話していてそういう質問をされた時である。相手がオタクだったら、そもそもそういう話になること自体があまりない(戦車やオモチャの話をするので忙しいため)のだが、そうじゃない人が相手だと「しげるも彼女とか作ったらいいじゃん」みたいな、なんかそういう話題になったりするのである。そして、「エヘヘそうですね……」とか言って適当にはぐらかそうとしたその時、「じゃあどんな子が好みなんだよ~!?」と元気よく聞かれてしまうのだ。その場でパッと明確な答えを求められる。これが困る。


「好みのタイプは?」って難しい質問ですよね……

自分の好みのタイプ、わかんなくないですか?

 世の中の人にわかってほしいのだが、全ての人間が全員異性の見た目をずっと気にしていると思ってほしくないのである。そもそも、おれは「見た目(など)で飯を食っている人」以外の見た目にものすごく関心が薄い。

advertisement

 俳優やアイドルや歌手やモデルや、その他何でもいいけど、個人の見た目が重要な要素を担っている仕事というのはあると思う。そういう仕事に就いている人は自分の見た目をある程度は仕事の道具にしているわけで、そういう道具として磨かれた外見というものには興味がある。でも、普通の人の見た目というものをそこまで気にして生活していて、面白いことってそんなにないと思うのだ。

 さらに言えば、おれはかっこいい男性を眺めるのが好きである。おれ自身は同性愛者ではないが、おれの中では「かっこいい男性」はすなわち「ガンダム」とか「トランスフォーマー」とかと同じ箱に入っている。「アナザー・カントリー」の時のルパート・エヴェレットにはうっとりするし、「仁義なき戦い 広島死闘編」の時の千葉真一を見れば「おれも人前で股間をボリボリかけるような男になりてえ……!」と思う。「HiGH&LOW(ハイロー)」を見ればよくもまあこんなにいろんなタイプの男を並べたものだと感心するし、「ボーダーライン」シリーズに登場する体が分厚く暴力の匂いがする髭面の男たちを見ると無性にうれしくなる。なんせおれはかっこいいものが好きなので、男についてはいろいろと好みもあるのだ。

 しかしこれが女子となると一気に解像度が落ちる。なんせおれは子どもの頃から「かわいいもの」に反応するレーダーが全然働かない。なので、アイドルの人たちは全員同じに見える。「この人たちはアイドルなんだろうな……」くらいの認識しかできず、本当に見分けがつかない。アイドルはアイドルでいろいろな文脈があるものだろうし、そこにコミットしてないなら見分けがつかないのも当たり前だろう。しかし、そもそも興味が薄いのでそういったやる気も出ない。これ、多分おれの母親が人型のロボットを全部「ガンダム」と形容していたのと同じ現象である。

 こういった人間が、最初の方に書いた「好きなタイプってどんな人?」という質問を投げられると、それはもう大変である。まず会話がスムーズなキャッチボールにならず、「好きなタイプ……好きなタイプねえ……」としばらく考え込んでフリーズしてしまい、最終的に「に、人間かな……?」みたいな規模の大きい答えを返してしまう。ちなみにおれの好みをもうちょっと詳細に書くと「何かしら趣味があり、好き嫌いなくしっかり食べ、精神的に健康で嘘をつかない人間」である。何も条件を絞れていない。でも多分、こういう感じで好みのタイプが存在しない人って、黙っているだけでけっこういるんじゃないかと思うのだ。

「だんだんかわいく見えてくる」現象、ありません?

 だがしかし、おれには明確な好みのタイプがない代わりに、「徐々に異性がかわいく見えてくる」という変な機能が搭載されている。これも割と異性に慣れていない人にはよくある話なのではないかと思うのだが、相手から感じ取れる面白ポイントが一定量以上溜まってくると、最初は普通だった人もマジでだんだんかわいく見えてくるのである。

advertisement

 具体的には、例えば同じ小説を読んでいる(それも特にベストセラーとかじゃないやつ)とか、おれが見たいと思っていた映画を先に見ているとか、嫌いなミュージシャンが一致しているとか、とにかくそういう「お前はおれか!?」というポイントがどさどさ出てくると簡単にピロピロとポイントが溜まっていき、一定の閾値を超えると俄然かわいく見えてくるのだ。イメージ的には「欽ちゃんの仮装大賞」で得点が表示されるあのピカピカ光るやつ、あの感じである。

 しかしこれ、人に言ってもあんまり信じてもらえないのだ。というか、なんかどうも格好をつけているように聞こえるらしいのである。いやしかしですよ、ちょっと冷静になって考えると、これって「あの子、おれと同じ本読んでる!!」つってのぼせ上がるオタクそのものである。自分で書いててつらくなってきたが、要はそのくらいのメンタルで、あとは「かっこいいもの」ばっかり掘ってずっとやってきたというだけであり、別に格好のいい話ではなさそうだ。

 つまり、「こういうタイプの人が好き」というわけではなく「好きになった人が好みのタイプ」という話であり、これをもうちょっと突き詰めると単に自己愛が強いだけなんじゃないのという話になってきそうである。でも多分、繰り返しになるけどおれ以外にもけっこうこういう人っているんじゃなかろうか。というか、他人に興味が薄い人間というのは、往往にしてこういう結論にたどり着きがちなのではないかという気がする。他人に興味ない勢ならきっとわかってくれるはず……!

 というわけで、現在おれが欲しているのは「どんな人が好み?」と言われた時に言い返せる、明確で嘘をついておらずわかりやすくてトラブルになりにくい回答のテンプレートである。「好みとかないんだよね~」って言っちゃうとマジで嘘くさいじゃん……。これはけっこう本気で求めているので、いい案があったら教えてください!


本日の結論

編集部からのひとこと

  • 好きな芸能人とかAV女優とかを言っておけば解決すると思う。俺はいつも「石原さとみ」って言ってます(男性編集I氏)
  • 合コンとかで「好みのタイプは石原さとみです」という人いたら「そりゃ石原さとみはタイプだよ!!!!!!そういうことじゃあないんだよ!!!!!」ってなりません?(女性編集A氏)
  • 俺は石原さとみが今ほど売れてなかった昔からずっと石原さとみが好きだから……(男性編集I氏)
  • そうか…………ならしょうがないな…………(女性編集A氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング