新プリキュア「キュアコスモ」に見る、追加プリキュアの“商業上の重要性”について:サラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)
ネコ耳、ネコシッポ、ネコポーズ、舌をペロっと出す変身。子どもにも大人にも人気出そう!
キュアコスモ、誕生
2019年6月23日。「スター☆トゥインクルプリキュア」に5人目のプリキュア「キュアコスモ」が誕生しました。令和初のプリキュアにして、「スター☆トゥインクルプリキュア」の5人目、そしてプリキュアオールスターズでは60人目のプリキュアとなります。
キュアコスモに変身するキャラは、「スター☆トゥインクルプリキュア」中盤のストーリーを大いににぎわせていた「怪盗ブルーキャット」。そうですよね。今思えばそれ以外考えられないというチョイスです。「怪盗」兼「宇宙アイドル」兼「敵組織の一員」からの華麗な変身となりました。「キュアコスモ」はネコ耳、ネコのしっぽなど、ネコの意匠をふんだんに取り入れたデザインかつ虹色のスカートが印象的な「かわいい」そして「カッコイイ」プリキュアとなっています。背中のマントがすごくカッコイイのです。
「スター☆トゥインクルプリキュア」のプロデューサー柳川あかりさんが「子どもたちが好きになってくれそうなグッとくる設定をみんなで盛り込んでいった」(徳間書店『アニメージュ』2019年7月号から)と言っているように、子どもにも人気が出そうな要素をたっぷりと詰めこんだ魅力的なプリキュアですよね。活躍が楽しみです。ネコ科のプリキュアの仲間が増えましたし、子どもだけでなく、大人にもものすごく人気が出そうな感じです。
kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
- これまでのプリキュア連載一覧
「虹色のスペクトル! キュアコスモ!」
さて、そんなキュアコスモ。「レインボーカラー」をスカートに大きく掲げるデザインはレインボーフラッグに代表される「多様性の象徴」をも意識させます。しかし、「多様性」を強調するのではなく「多様性が当たり前の世界」を描いていくとする「スター☆トゥインクルプリキュア」。5人目の新プリキュアが「レインボーカラー」になったことにも、多様性で恣意(しい)的な意味を見いだすのではなく、別の意味があるように個人的には感じます(虹のプリキュアは2017年「キラキラ☆プリキュアアラモード」のキュアパルフェ以来ですよね)。
キュアコスモの変身口上は「銀河に光る虹色のスペクトル! キュアコスモ!」。変身シーンにはプリズム模様が描かれます。
「虹のスペクトル」とは「光を分光した際の虹色に見える帯」のことです。太陽光(白色光)を三角プリズムに通すと虹色に分光にされます(正確には赤色から紫色まで「無限大」に分光されます)。
可視光線はプリズムを通すことにより分光され虹色のスペクトルとなるのです。それはすなわち、入口は同じ色でもプリズムを通せば無限大の色に広がることができる。全員が違う色になることができる、ということですよね。また、たった1つの色だって、たくさんの色から構成されているという意味にも取ることができます。
子どもたちの未来も、プリズムを通せば無限大の色になる可能性が秘められている。どんな色にだってなれる。どんな可能性だってある。それこそが「銀河に光る虹色のスペクトル、キュアコスモ」なのじゃないかと自分は勝手に思っています。
価値観のアップデート
また、『アニメージュ』2019年7月号(徳間書店)で、柳川プロデューサーはこんなことを言っています。
柳川:AからBに変化する成長の描き方をすると、「Aの価値観よりBの価値観のほうが優れている」という印象になってしまいそうなので、そこは避けたいと思っています。(P53)
キュアコスモの変身バンクでは、過去に化けていた「バケニャーン」「宇宙アイドルマオ」「宇宙怪盗ブルーキャット」と「本来の姿(獣人型)」が次々に現れ、それらを踏まえた上でキュアコスモへと変身していきます。これは、それまでの生き方を否定するのではなく、その「全ての価値観を受け入れた先」に「キュアコスモ」がある、ということの証でもあり、変身により価値観は「完全に変わる」のではなく、価値観は新しい思いがどんどん足され「アップデート」していくもの、という「スター☆トゥインクルプリキュア」の思いが詰まっている変身バンクのように感じました。
「あなたがフワを救いたいように……私もこの星のみんなを救いたいの!」
それぞれの人に違う価値観があり、守るものも違う。その2つが衝突したとき、どんな風にすれば良い? は、第8話「惑星ケンネル」での話でもありました。
キュアコスモ初変身が描かれた第20話でも、キュアスターたちの「フワを守りたい」という思いと、ブルーキャットの「石化された住人を助けたい」という2つの価値観が衝突します。そんなとき「スター☆トゥインクルプリキュア」の掲げる理念はただ1つ。主人公、星奈ひかるの言うように「知らないことを、知ろう」なのです。
人はみんな違うのだから、知らないのは当たり前。まずはお互いにお話をして相手の事情を知って、その価値観を否定するのではなく認め、自分が折れるだけでもなく、「お互いの価値観をアップデートしていこう」とプリキュアは子どもたちに伝えているのだと、自分は思っています。
「多様性が当たり前の世界を描いていく」。それはすなわち「みんな違うことが当たり前の世界」。人と違う能力があると、奇異な目で見られたり、迫害を受けたりすることもあります。しかし場所が変わり見る人が変われば、それは「個性」となり、その能力を発揮することができるのです。
その世界を描くため、今回、星奈ひかるは「相手を知りたいという気持ち」と「何にでもなれること」を肯定しました。
そしてその結果として、「どんな姿にも変身できる、虹色のプリキュア」が登場したことは、恐らく偶然ではありません。
「スター☆トゥインクルプリキュア」は、保護者も意識して作られていると各媒体でのインタビューなどで語られています。「価値観のアップデート」は、子ども同士のコミュニケーションだけではなく、親と子の間のコミュニケーションにも必要なものなのです。子どもだけではなく、親の価値観をもアップデートする必要がある。プリキュアというアニメーションを通して、親子間のコミュニケーションが深まり、子どもたちの未来が無限大に広がると良いですよね。
「倒れているんだ、目の前で、この子たちが!」
キュアコスモに変身する直前、傷つき倒れたプリキュアの前に立ちはだかりブルーキャットは言います。
「星のみんなは救いたい。でも、その前に……倒れているんだ、目の前で、この子たちが!」
「だから 私は救う。みんなを救いたいの!」
フワを助けたい、という思いからキュアスターたち4人はプリキュアになりました。今度はそのプリキュアたちを助けたい、という思いからブルーキャットはキュアコスモへと変身したのです。理想も大事だけど、まずは目の前の困っている人を助けること。そこから相互理解は始まるのです。
(「倒れているんだ」とか「この子たち」とかプリキュアにしては独特なセリフ回しですけど、熱くて良いですよね、このセリフ)。
この先「キュアコスモ」がどんな風に物語に絡んでいくのか、楽しみです。
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