インタビュー

ゲイだからこそ“飲み会の男同士のキスコール”で傷つくことも エッセイ漫画「あさな君はノンケじゃない!」インタビュー

「こういうときにふと、世間の前提条件というものを実感してしまいますね」。

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 アパレル企業で働きながら、ゲイである自身の体験を描いたエッセイ漫画「あさな君はノンケじゃない!(※)」(著者:あさなさくまさん)。ほっこりエピソードを通じてゲイの日常を描き、Twitterやピクシブ上でも反響を呼んでいる同作の誕生秘話や見どころについてあさなさんにインタビューしました。漫画本編もあわせて掲載します。(聞き手:佐藤星生

※ノンケ:異性愛者のこと。同性愛者、特にゲイの立場から用いられる語として知られる

漫画「あさな君はノンケじゃない!」とは?

 あさな君は、アパレル会社に勤めるごく普通のアラサー男子。ひとつだけ違うのは、ゲイであること――。2017年に開催された第2回ピクシブエッセイ新人賞受賞作品。あたたかく、少し切ない。今どきアラサーゲイの日常を描くコミックエッセイ。

 自分の性のあり方の、母へのカミングアウト、初恋の男の子の想い出、そして運命の人との出会い。ノンケ(異性愛者)では味わえない日常や過去の思い出を優しいタッチと言葉で描写しており、これまでセンセーショナルに描かれがちだったゲイ関連作品とは一線を画した内容に仕上げています。

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著者プロフィール:あさなさくま(Twitter:@sakuma_asanapixiv:あさな さくま

漫画家・イラストレーター。アパレル企業でデザイナーとして働く傍ら、Webメディアを中心に創作活動を行う。「あるある!」と共感を呼ぶ作風だけでなく、そのファッション描写にも注目が集まっている。

その他の一部エピソード、購入先などはWebマンガ誌「コミックエッセイ劇場」に掲載されています

―― あさなさんの描く絵はオシャレでどことなく懐かしさを感じるレトロポップな印象を受けます

 もともとデジタル感のある画風よりも、レトロな画風が好みなんです。80年代後半、90年代の作品が好きで、昔から『人魚シリーズ』『犬夜叉』などを描かれた高橋留美子さんに憧れていました。

 自分で描くならその方向で行きたいなと思って、デジタルで描いていますが、あえてアナログ感を出しています。グラデがキレイになりすぎないようにドットに置き換えたり、温かみを意識しています。

―― 本職であるアパレルのお仕事も影響しているのですか?

 そうですね。レディースファッションがそもそも好きで今も仕事で携わっているので、作中に出てくる女の子の服はかなり意識して描いています。漫画ではキャラクターを立たせるために「THEマンガキャラの服装」というものがあると思いますが、エッセイなので意識的にリアルなファッションを描いています。

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―― 一方のあさなくんはシンプルなファッションばかりですね(笑)

 そうですね(笑)。自分が着るものとしては、とにかく白いTシャツが好きなんですよね。女の子のコーデは仕事柄、いろいろ浮かぶんですが……。

―― 異性のお友達が登場していますが、あさなさんにとって二人はどんな存在ですか?

 二人とも10年以上の長い付き合いで、一緒にいて安心できる友達なんです。オタク気質で、お互い一人でいる時間も大事にしたいタイプ。距離感がいい感じというか、すごく気が合っていますね。

 女の子と一緒にいるからこそ起きること、できることってやっぱりあって、第2話ではそれを思い返してエピソードにまとめました。

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―― 人力車のマッチョな車夫さんに思わずキュンキュンしてしまったという(笑)

 はい(笑)。ただここも描くときに、一度立ち止まりました。「公共の場で他人に個人的な感情を向けるのってどうなの?」という問題です。でもやっぱり、そんな感情を抱いてしまうのが人間で、男性がステキな女性に見とれたり、イケメンの店員さんを見た女の子がキュンキュンしたりするような感覚って珍しくないと思うんです。

 ゲイの場合はその組み合わせがただ違うということで。男が車夫さんにときめいているなんて、なかなか思わないですよね。

―― 会社の飲み会で体験したキスコールのエピソードも、あさなさんがゲイだと知らないから起こったことなんでしょうか

 ゲイであることを全員にカミングアウトしているわけではないので、このときは偶然こういうことになってしまって……。知っていたらたぶんこんなコールはできないですよね。

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 もし男性と女性が強制的にキスしろと言われたら、誰もがとっさにセクハラだと思うはず。でも男性同士だと、笑いや盛り上がりが先に立つ。こういうときにふと、世間の前提条件というものを実感してしまいますね。

―― ゲイだからこその複雑な心境を周りは分からないということですね

 僕は「男性とのキスに生理的な拒否感がない」という意味で精神的ダメージは少ないわけですが、だからといってやっぱり「ラッキー!」とはならないし、「男性に嫌がられる」ということについては、逆にショックが大きいんですよね。

(続く)

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本企画は全6本の連載記事となっています

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