コラム

日本海軍軍艦「最上」発見 航空艤装だけじゃない“もがみんスゲー!”に迫る(1/2 ページ)

もがみん、実は“射撃”もすごかった。【画像12枚】

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 故ポール・アレン氏が設立した沈船捜索チーム(関連記事)が、沈んでいる日本海軍軍艦「最上」の姿を公開しました。


1944年10月24日10時、米海軍機の攻撃を受ける扶桑型戦艦(写真下)と最上。この24時間後に最上は沈没する(出典:Naval History and Heritage Command

海底に沈む最上の姿を公開したRV PetrelのFacebookページ

 これらは、2019年5月8日にフィリピンにあるレイテ島とパオナン島、ディナガット島などに挟まれたスリガオ海峡の南出口から南西にある水深1450メートルの海底で発見したときの状況を撮影したものです。

 最上は、1935年7月28日に就役した日本海軍の重巡洋艦です。太平洋戦争では、バタビア沖海戦、ベンガル湾通商破壊作戦、ミッドウェー海戦、マリアナ沖海戦、スリガオ海峡夜戦などに参加しました。ミッドウェー海戦で大きな損害を受けた後、後甲板にある主砲2基を取り外して飛行作業甲板を設置、水上偵察機11機(現実的には7機程度。実戦の運用実績は5機)を搭載できる航空巡洋艦となります。スリガオ海峡夜戦では戦艦「山城」「扶桑」など全7隻でレイテ湾に突入しますが、米海軍戦艦6隻、巡洋艦4隻、駆逐艦26隻、魚雷艇39隻の攻撃を受けて、駆逐艦1隻(時雨)を除いて全滅。最上もこのときの戦いで沈みます。

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(参考)航空巡洋艦へ改装された「最上」の模型(出典:TAMIYA SHOP ONLINE

最上は画面左下からレイテ湾に突入し、魚雷艇や駆逐艦と交戦しながらレイテ湾奥まで北上進撃。待ち構えていた米艦隊の攻撃を受けて南下退却中追撃を受けて画面左下まで帰ってきたところで機関停止。駆逐艦「曙」の雷撃で処分された。時に1944年10月25日10時30分(出典:アジア歴史資料センター

 今回公開された最上の画像には、前部主砲塔、前部錨甲板、方位盤照準装置、九〇式3連装魚雷発射管、九六式25ミリ3連装機銃、そして、海底探査ソナーがとらえた船体のスキャン画像があります。スキャン画像によると、最上は船体を上にして、右舷側に少し傾いた状態で海底に沈んでいるようです。


海底探査ソナーがとらえた最上の船体。画面下が船首方向になる

別な方向からの船体画像。こちらは画面上が船首方向

 最上は、スリガオ海峡夜戦で敵艦隊の集中砲火によって三番主砲、艦橋、魚雷発射管、高角砲など多数の命中弾を受けています(公式戦闘詳報でも「発見不能の被弾多数」との記述あり)。他にも搭載する魚雷や高角砲弾が誘爆したこともあって、ほぼ全滅といっていいほどに破壊されてしまいました。航空巡洋艦としての最上にとって最大の特徴である船体後部の飛行作業甲板も魚雷の誘爆で前方が垂直にめくれてしまったと戦闘詳報には記録されています。

 今回公開された画像には、1番主砲、2番主砲、3番主砲があります。記録では3番主砲のみが大破したとありますが、沈んでいる最上の1番主砲は船首部分の錨甲板に埋もれるような状況であるのが確認できます。この状況からは、艦首から着底して艦首部分が押しつぶされ、そこに1番主砲がめり込んでしまったのではないかと推測されます。

 2番主砲とある画像では、先日発見された「摩耶」(関連記事)の主砲と同様に、防暑のために設けられた遮熱版と冷却穴が確認できます。また、被弾して大破したと記録がある3番主砲は、砲塔の状況までは分かりませんが、砲身と前部シールドは健在であるように見えます。


船首部分の錨甲板が覆いかぶさって砲身だけが確認できる1番主砲

船体最前部になる錨甲板。画面右が船首方向になる。センターラインボラート(2つ並んだ円柱)や左舷側ホースパイプ(錨鎖用トンネル)、錨鎖の構造が明瞭に分かる

2番主砲。天蓋に錨鎖が載っている。冷却用の穴が確認できる

記録では被弾して大破したとされている3番主砲
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