レビュー

黒木華「凪のお暇」凪の勝利を信じたゴン(中村倫也)、凪の敗北を見抜いていた慎二(高橋一生) ゴンの苛立ちにグッときた(1/2 ページ)

かつて好きだったストレートヘアの凪を見て「負け」を確信した慎二。

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 9月7日に「凪のお暇」(TBS系)の第8話が放送された。ゴン(中村倫也)にグッと胸をつかまれた回だった。

「私は絶対変われないんだ」と落ち込む凪の前に、慎二が現れた イラスト/まつもとりえこ

「でも、今はモジャモジャのほうがいい」(慎二)

 大島凪(黒木華)に素直な気持ちを話した我聞慎二(高橋一生)。一夜明けても、市川円(唐田えりか)からの連絡はなかった。すると、出勤しようとする慎二のもとに、円ではなく、安良城ゴン(中村倫也)から朝ご飯のお誘いが入る。迷った慎二だったが、生まれて初めて会社をサボることに。

 一方、凪はスナック「バブル」のママ・中禅寺森蔵(武田真治)、杏(中田クルミ)、吉永緑(三田佳子)、白石みすず(吉田羊)、うらら(白鳥玉季)、エリィ(水谷果穂)と一緒に自宅で餃子パーティの仕込みをしていた。慎二の泣き顔を初めて見た凪は「処理しきれない」と、昨晩の出来事を皆に聞いてもらうことに。

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 すると、皆が慎二の号泣を目撃したことがあると証言。「慎二は凪が大好き」ということに自分だけが気付いていなかったのだと凪は知った。困惑する凪が「風にあたってきます」とベランダに出ると、ゴンの部屋から慎二が出てくる。夏休みをとった慎二は、ゲームをやるためゴンの家に泊まりに来ていた。

 ある日、母の夕(片平なぎさ)から凪に電話が。台風が直撃して実家に被害が出たというのだ。凪は髪をストレートに伸ばし、身なりを整えて北海道に帰省する。到着すると家に大した被害はなかったものの、夕はリフォームのため必要なお金を遠回しに要求してくる。凪は夕の圧に屈し、コインランドリー経営に必要なお金を母に振り込んでしまった。

 「私は絶対変われないんだ」と落ち込む凪の前に、慎二が現れた。「俺が好きだったのは、サラサラのストレートと、貧乏臭いけど染みるメシと、俺の顔色ばっかり窺ってる控えめな性格。でも、今はモジャモジャのほうがいい」と慎二は凪の髪を撫で、凪は慎二の言葉に救われた――。

嫉妬の感情を初めて知るゴン

 今までで一番心を鷲掴みにされた。ゴンに対してだ。序盤、ゴンとママの会話には気が抜けた。慎二と朝食を共にし、元気がないと察したゴンはアパートに慎二を連れて帰った。

 「凪ちゃんの顔見たら元気出るかな~って」(慎二)

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 さらに、ゴンは言葉を続けた。

 ゴン「俺の相談も我聞君に聞いてもらいたかったし。俺、凪ちゃんのこと好きになっちゃって」

 ママ「ちょっと待って。その2つ、両立しないでしょ! まさか、凪ボーイのこと2人でシェアでもするつもり?」

 ゴン「あ~、シェア。なるほど」

 ママ「なるほどじゃないわよ!」

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 常人ではありえない発想だが、ゴンの中で矛盾はない。彼は今まで女性にシェアされ続け、分け隔てなく女性に優しさを振り撒いてきた。嫉妬の感情そのものを知らない。凪とゴンの接触を気に掛ける慎二と違って、慎二に凪のことを相談しようと思っていたほどだ。

 北海道の実家に凪を迎えに行った際、ゴンは凪に声を掛ける役目を慎二に譲った。凪と慎二は、親のために空気を読む癖を覚えた似た者同士。その上、2人には積み重ねてきた時間がある。凪と自分では作れないだろう空気を目の当たりにするゴン。慎二に花を持たせたゴンに初めて芽生えた嫉妬の感情。イラつき、クラクションを叩き鳴らすシーンはグッと来た。メンヘラ製造機も、嫉妬に狂う気持ちがやっとわかったか。

 女性に対して全勝だったゴンに慎二へのライバル心が芽生える。以前、緑が言った「ままならぬ愛と欲望の世界へようこそ」が一気に押し寄せてきた。

まさかの「お暇」反転。恋を知ったゴンはどうなるんだ イラスト/まつもとりえこ

コインランドリーは誰が買った?

 精神的小3の慎二がうららにアドバイスされるシーンは出色だった。

 うらら「また凪ちゃんのこといじめにきたの?」

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 慎二「いじめない。……から、どうしていいのか困ってる」

 うらら「そんなの簡単じゃん。友だちになればいいんだよ」

 夜、薄壁1枚を挟みベランダで凪と慎二が会話した場面は印象的だった。凪は慎二の顔色を窺ってないし、慎二は凪をいじめていない。お互い変わったのではなく、お互いが初めて“本当の顔”を見せ合っている。

 急遽、凪は実家に帰ることになった。母・夕との対戦が繰り上がった形だ。ゴンも坂本龍子(市川実日子)も「今の凪ちゃんなら大丈夫」と凪を励ました。

 「行くな」(慎二)

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 慎二は2人とは異なる反応を見せるのだ。

 「慎二にはわからないでしょ、うちのことなんて」

 慎二「わかる」

 かつて、慎二は「サラサラのストレートと、俺の顔色ばっかり窺ってる控えめな性格」の凪が好きだった。でも、そんな凪は慎二から逃げた。その後、慎二は改めてモジャモジャの凪に惚れ直した。なのに、眼前には髪をストレートにし、身なりを整えた凪の姿がある。

 「そんなんで勝てんの、タイトルマッチ。その格好してる時点で負けてね?」(慎二)

 慎二でしか言えない言葉だ。凪と慎二は同じ苦しみを抱えている。このままでは、凪は母親に負けてしまう。結局、凪と龍子はコインランドリーを買うことができなかった。

 「でも別の買い手が見つかったみたいで、あのコインランドリー自体は残す方針だそうです」(龍子)

 あまりにもタイミングが良すぎないだろうか。もしかして、凪がタイトルマッチに挑むことを知る誰かが代わりに買ったのでは?

 慎二は凪が夕の圧に屈することを予想していた。事業計画書を読み「割と手堅いじゃん」と納得もしていた。慎二が買ったという可能性が1つある。

 もう1つの可能性は、旅館の跡取りという過去が明らかになった緑。前回、コインランドリー店主に「若い娘さんに夢の1つも見せてあげられないなんて」と言っていたし、本当はこの人はお金持ちだ。それら全て、伏線な気もする。親と決別した緑が親の圧に怯える凪を応援する構図もしっくり来る。

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