8月16日に放送された「凪のお暇」(TBS系)の第5話。相関図が目まぐるしすぎて、だんだん先が読めなくなってきた。何しろ、原作で描かれたエピソードはもうほとんど消化されたのだから。そして、三角関係は四角関係に移行しつつある。
海に旅立ち、合鍵を返す凪
安良城ゴン(中村倫也)に恋をし闇堕ちしてしまった大島凪(黒木華)。心配した我聞慎二(高橋一生)は凪に会いに行くが、素直な気持ちを伝えられないまま、またしても凪を過呼吸に追い込みそうになった。凪はたまたま通りかかった白石みすず(吉田羊)とうらら(白鳥玉季)の親子に助けられ、そのまま2人の家に行った。久々にうららの顔を見た凪は、自分がいつから自炊をせず、自堕落な生活を送っていたか考えた。
翌日、凪は買い物の帰り道にママ友3人とランチしているみずずを発見。みすずはママ友から嫌味を言われ、耐えていた。そこにみすずの会社の同僚・中村君が現れ、颯爽(さっそう)とみすずを連れ去っていく。その帰り、うららはママ友たちと遭遇。うららがママ友たちを工事現場へ連れて行くと、職長としてクレーン車を操縦するみすずがいた。うつむくママ友たちを前に誇らしげな表情のうらら。母娘のたくましさを見た凪は「旅に行ってくる」と、突然走り出した。
自転車に乗った凪は海に向かって出発したが、道に迷い、スナック「バブル」にたどり着く。ママ(武田真治)に怪我の手当と食事を与えてもらった凪は海に到着し、すがすがしい気持ちで帰宅。そして、ゴンに合鍵を返して「これからはまた一隣人としてよろしくお願いします」と宣言した。
一方、タクシーで仕事に向かおうとしていた慎二に市川円(唐田えりか)が指を絡ませ、好意を示してきた。2人は手をつないでバブルに向かう。実は、凪はバブルに採用され、ボーイとして勤務中だった。
断舎離したのに人生リセットできていない慎二
雨の中で慎二と口論中の凪はみすずとうららに助けられ、白石家を訪問した。そして、酒を酌み交わしながらみすずと語らう凪。
「私でよければお話聞きます。何なら……お酒の力を借りても」(みすず)
みすずが「ドン!」と持ち出したのは「放浪記」なる焼酎である。「ぴったんこカン・カン(TBS系)で吉田羊と安住紳一郎が飲み歩く人気企画「酒場放浪記」を意識したネーミングだろう。凪は慎二について、こう言った。
「あの人、血とか涙とかそういう人間的な液体が流れてるようなタイプじゃないので」
凪にあまりにも理解されていない慎二が不憫(ふびん)になる。いや、慎二が抜き身の自分を凪に見せてこなかったのが悪いのだが。
凪に思いが伝えられなかった慎二は、凪の思い出を捨て去るがごとく断捨離を始めた。凪の歯ブラシ、カップ、豆苗、そして凪が脱退したSNSの「メンバーがいません」と表示されたメッセージも。こんな画面さえ、慎二は何度も見返していたのだ。さらに、彼は大量の本を処分した。以下に本のタイトルを列挙したい。
- 「信頼しあえる恋人関係を作る」
- 「じぶんの思いを相手に伝える方法 ラブ・バイブル」
- 「やさしさ×思いやり=復縁 愛の方程式」
- 「ベテランカウンセラーが送る絶対復縁7カ条」
- 「えがおで復縁したい貴方に贈る」
復縁するための本ばかりである。読んだことが全く生かせてなくて泣ける。あと、本のタイトルの頭文字を順番につなげ、ちょっと読み上げてみてほしい。……「信じやべえ」。まさにだ。
全てを捨て去った後、「これが人生リセットってやつか。うん、尊いわ」と晴れやかな言葉を吐いた慎二なのに、表情がビタイチ吹っ切れてない。初回、凪に向けて慎二本人が発した「物捨てたくらいで人生リセットできてたまるかよ」の言葉を思い出す。
今回、慎二は珍しくエンディングで泣かなかった。彼の前に新たに現れたのは円という後輩だ。彼女は足立心(瀧内公美)ら女性社員に疎まれたが、その陰口を慎二は「生産性のない悪口」と一蹴した。その場面を目撃していた円は、慎二に質問する。
円「八方美人って言われる人のことって、どう思われますか?」
慎二「八方ブスより良くねえ?」
八方ブスとは、手当たりしだいにマウントを取り、陰口を叩く足立のような存在を指しているのだろう。一方、八方美人とは誰か? 円と、そして慎二だ。家族環境も相まって、八方美人として生きることを慎二は自分に課してきた。そんな彼の生き方からして、このアンサーは至極当然である。でも、そんな慎二に円は惹かれた。タクシー内でこっそり慎二に指を絡ませる円。偶然かもしれないと慎二は手を引っ込めるが、円はさらに指を絡ませてくる。
「お〜っ。なるほど。なるほど!」(慎二)
リセットの機会、到来! その後、慎二と円は手をつないで歩いた。思い出すのは、バスで凪に告白した直後の様子。あのときも、慎二は凪と手をつないでいた。しかも、満面の笑みで。そして今、慎二は無表情で円と手をつないでいる。無意識に温度差が出ている気がしないでもない。
クレーン車を操る吉田羊にママ友が黙る
凪が会社を去った後、足立の次なるターゲットは円になった。一方、みすずはママ友から集中砲火を浴びていた。もしも足立が主婦になったら……と、そのままトレースしたような光景である。途中でいなくなったみすずにママ友たちは言いたい放題だ。「亡くなった旦那の勤め先で、おこぼれの仕事もらってるんでしょ? 男に頼ってしか生きられない人って、本当イヤよね」。
そんなオバさん連中を、自然な流れでみすずの職場に連れて行くうららが素敵である。工事現場でのみすずは、男に頼るどころか男に指示を出す立場にいた。
ママ友たちは、自分の娘に「あの子(うらら)と仲良くするな」とママ友たちは命じていた。しかし、一瞬の隙を突き、親に見えないようにバイバイするうららと友だち。本人のいないところで噂話をする母親より、よっぽど本音と建前がうまい。
「私たち、親が思ってるほど子どもじゃないから。一緒にいて楽しい子は自分で考えて選べるし」(うらら)
逆に言えば、嫌な人とは話も顔も合わせないということ。無理して空気を読む必要もない。みすずとうららに感化された凪は、思い立って自転車の一人旅に出発した。
海に向かう途中、転んで負傷した凪はスナック「バブル」に立ち寄った。このスナックのママが登場した瞬間の安心感たるや! 人の顔色を伺う大人を何人も見てきただけに、スタイルを貫くママを見て安心するのだ。何しろ、この人はスタイルが進化し続けている。初回登場時のファッションは、こんな尖ってなかったはずだ。
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実は結構重い話なんです。