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願いと祝福、新時代のプリキュア映画は子どもたちに何を伝えたのか? 「映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて」を見てサラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)

映画スタプリ、2日間で3回見に行くほどには最高の映画でした。心が温かくなります。

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ラスト10分の「願い」

 そこからの「ラスト10分」の展開は、プリキュア映画の歴史の中でも「こんなの、見たことない……すごい……」と言葉を失うものでした。ド派手なアクションではなく、「優しさ」がスクリーンからあふれてくるような音楽と光の演出。


主題歌「TwinkleStars」をバックに踊る5人のプリキュア。手にはミラクルライト

 それは「願い」でした。

 プリキュアの映画では子どもたちに「ミラクルライト」が配られます。ピンチになったプリキュアに子どもたちがライトを光らせて応援すると、その思いが伝わりプリキュアがピンチから脱出、大逆転への布石になる、という代物です。

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 今作では主に2回ミラクルライトを使う場面があるのですが、後半のミラクルライトの使い方が今までのプリキュア映画とは異なります。

 子どもたちはプリキュアを応援するためにライトを使うのではないのです。プリキュアと一緒に「ある物」を作り上げるためにミラクルライトを振るのです。スクリーンの前の子どもたちはプリキュアに「力を託す」のではなく、プリキュアと一緒になって、あることをするのです。

 子ども向け映画として、これほど幸せな展開はありませんよね。歌を歌いながら、踊りながら、みんながプリキュアになるのですもの。言葉はなくも思いは通じ合う。音楽の力って、すごい。

SFとしての完成度

 本作は、「SF作品」として見ても完成度が高いものと思われます。オープニングは「超新星爆発」(と思われる)シーンから始まるくらいのSF度です(子どもには分かりづらいと思ったのかパンフレットには「星の一生」が分かりやすく記載されています)。


SF映画としての完成度も高い

 異生物との言語を介さないコミュニケーションや、多様な宇宙人との共生、善意と悪意、星の一生、流れゆく時間。

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 この映画は「お星さま誕生を巡るSF物語」としても十分に楽しめると思います。

「キラやばー☆」に注目

 あと、個人的にはこの映画では星名ひかるの「キラやばー☆」に注目してほしいのです。彼女の口癖でもある「キラやばー☆」。すごいものを見たときにテンションを上げて発せられる星奈ひかるの「キラやばー☆」はテレビシリーズでもおなじみですよね。


テレビシリーズでもおなじみの星奈ひかるの「キラやばー☆」

 映画で、星奈ひかるは都合7回「キラやばー☆」を言っています(数えました!)。その中でも、終盤のあるシーンで発せられる「キラやばー☆」は「キラやばー☆」史上最高に「キラやばー☆」なのです。

 星奈ひかるの新しい一面が見られる希望と祝福にみちた「キラやばー☆」。個人的にはこの「キラやばー☆」がこの映画一番のおススメシーンなのですけど、ネタバレになるのであまり詳しくは言えないのが残念なのです(声優としての成瀬瑛美さんの演技が本当にグっとくるのです)。

 劇場でぜひこの「キラやばー☆」を聞いてほしい!

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新時代のプリキュア映画として

 本映画はプリキュア15周年を終えた後の、「新しい世代のプリキュア映画」としての試金石となった作品でした。

 そこに「お星さま誕生の物語」というモチーフを持ってきたことは象徴的なことであり、ラスト10分で紡がれる「願い」はこの先のプリキュアの一生を暗示するかのようでした。

 2018年「映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュアオールスターズメモリーズ」(・はハートマーク)は、「観客の思い出がプリキュアの世界を救う」というメタ構造を見せ、15年のプリキュアの歴史を再定義した作品となりましたが、今作では新しい時代のプリキュアを象徴するような「誕生」が描かれます。次の世代へ思いをつなぎ、その思いは重なり合いずっとつながっていくのです。

 もちろんこの映画には楽しいギャグシーンも多くあり、12星座ドレスのプリキュアの戦う姿も超カッコよくて(さそり座フォームのキュアソレイユの戦い方に2つ隣の席の子どもが大興奮していました)。子どもたちを飽きさせません。


咲き乱れるクワンソウの花

 また沖縄の海や街並み、さらには世界各地のミステリースポットが丁寧に描かれる美術背景にも注目してほしいのです。この美術背景の繊細な美しさもこの作品を名作にしている1つの点だと思います。黄色いクワンソウの咲き乱れる花畑は幻想的で本当にきれいなのですよ。いつの日か、クワンソウの花畑を見に沖縄に行きたいと思います(えれなさんの食べていたアイスも食べたいですしね)。

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 あと、何と言っても羽衣ララが超絶かわいいの! 今回の映画の主役は間違いなく彼女でした。本作は彼女の成長の物語でもあるのです。


羽衣ララが、とにかくかわいい

 星の一生から見れば、僕たちの一生なんて一瞬です。

 それでもスクリーンの前の子どもたちが一生懸命、一瞬に、一生にともしたミラクルライトの光は何を作り上げたのでしょうか? その結末はぜひ劇場で見てほしいのです。

 プリキュアが奏でる「ラスト10分の願い」は、きっと見ていた子どもたちの心に残り続けるのだと思います。大好きな人と一緒に見た光景は、ずっとその子の中にとどまり、将来を形作っていくのだから。

 もちろん子どもたちだけではなく、大人の心にも響いているのだと思います。それは映画終了後、隣の家族連れのお父さんの目がウルウルしていたことが証明しています。

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 「映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて」。

 見終わった後に優しさに包まれる、そんな映画なのです。

 僕もこの映画のラスト10分の「プリキュアの願い」を、きっと一生忘れない。

 たくさんの人に、あの変身シーンを見てもらいたい。

 たくさんの人に、あのラスト10分の願いを見てもらいたい。

 たくさんの人に、この映画を見てもらいたい。

 それが今の僕の願い。

 届くと良いな。

(C)2019 映画スター☆トゥインクルプリキュア製作委員会

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